どんなクルマ?
ー 優れたシャシーに220mmの最低地上高
どんな感じ?
ー エクステリアとは対象的な室内
ー エンジンはスムーズでも力不足
ー ONもOFFも相性の高いシャシー
ー アピール力の高い安全性能
試乗、スバルXV 2018年型 進化感じるも動力性能「ふつう」 らしさ求む
「買い」か?
ー 輝きを増したクロスオーバー
スペック
ー スバルXV 2.0i SE プレミアム・リニアトロニックのスペック
どんなクルマ?
優れたシャシーに220mmの最低地上高
少し無骨なデザインをまとうスバルのクロスオーバー「XV」は、今回のモデルで大幅な変更を受けた。
そもそも、スバル・グローバル・プラットフォームをベースにしたクルマで、ふんだんな安全技術に加え、ボディではユーロNCAPによる衝突安全評価で5つ星を獲得。コンパクト・ファミリーカーのカテゴリーとして、トップクラスの乗員保護性能を誇っている。
さらにこのクルマの最大の特色は、パーマネント方式の4WDシステムに220mmの最低地上高を備えている点。セアト・アテカや日産キャシュカイなどのライバルと比べても、優位な存在だろう。
しかし、新型ではディーゼルエンジンが選択できなくなった。搭載されるのは、ガソリンエンジンにCVTの組合せで、日本ではこれが一般的なようだ。
ライバルがひしめくクロスオーバー・モデルにおいて、XVはどう評価されるのか、予想は難しい。
実際、スバルはここ英国でメインストリームは狙っておらず、スバル・ファンとも言える、しっかりとした顧客基盤の形成に意識が向いているようだ。2018年を通してのスバル車全体での販売計画は3500台となっており、XVはその1/3を占めると予想している。
新しいスバルユーザーを広げることができるのか、少数と言える現在のスバルユーザーの買い替えを見込んでいるのか、今後が興味深い。
まずはエクステリアから見ていこう。
どんな感じ?
エクステリアとは対象的な室内
XVの全体的なアピアランスは高められた車高により、他のコンパクトSUVよりもクロスオーバー然としている。18インチのホイールは、ギャップも明確な太いフェンダーアーチで覆われ、セアト・アテカよりも38mmも高い最低地上高を確保している。
一方でフロントノーズはライバルよりも長く低い。これは低位置にマウントされたボクサーエンジンに依るメリットで、見た目はすっきりしていると思う。
一方、エクステリアの少し無骨な印象とは対象的に、車内はもっと上質な雰囲気にまとめられている。XVのダッシュボードやセンターコンソールのデザインは、クリーンでモダンな印象。8インチモニターのインフォテインメント・システムが標準装備され、Apple CarplayとAndroid Autoとの接続が可能だ。
機能的な大きめのボタン類も残されているが、クルマ全体のデザインを統一感のあるものにしようとする努力が見られ、印象は良い。
今回のテスト車両は、2.0ℓの水平対向4気筒エンジンで、スバルは最も多く選ばれるパワートレインだと予想する。また、より小さな1.6ℓのボクサーも用意される。この1.6ℓのエンジンは新型だが、2.0ℓの方は、前モデルにも搭載されていたエンジンをバージョンアップしたものとなる。
クルマをスタートさせてみる。
エンジンはスムーズでも力不足
エンジンは明確にスムーズになり、静けさも増している一方、リニアトロニックCVTが上手く制御してはいるものの、中回転域では大きな唸り声が聞こえてくる。このCVTは4WDに対応した唯一のギアとなるが、比較的高めのエンジン回転数が必要となるようだ。
実際、156psと20.0kg-mでは、高速道路での合流加速や追い越しの際の力不足は否めず、回転数も自ずと高くなってしまう。
ターボエンジンを積むライバルも似たようなパワー感だが、中回転域の加速はもう少し良いはず。
リニアトロニックCVTは擬似的に7段の変速ステップを持っているが、依然として極めて連続的なトランスミッションであり、最良のシステムとして残されたようだ。ステアリングホイールのパドルシフトで操作するのは似合わない印象がある。
ONもOFFも相性の高いシャシー
車高が上げられたプロポーションにも関わらず、新しいプラットフォームによる適正化されたパッケージングと、低くマウントできるボクサーエンジンのお陰で、重心高は低い。
そのため、ツギハギの多い田舎道での乗り心地は良いにも関わらず、操舵感や重心移動の雰囲気は、舗装路中心に味付けされたクルマのよう。ステアリング・フィールは不足気味だが、重さは適正で、濡れた路面でも安全性と信頼感を高めてくれる。恐らくXVがホームとするような道だろう。
一方で、このモデルに標準でセットされる18インチホイールは、かなりの量のロードノイズを車内に響かせてしまう。全体的に良い印象のXVであはるが、優秀とまでは言えない。
そこで、思い切ってオフロードに飛び込んでみると、XVは突然印象を変化させる。
新設計のXドライブモードは、4輪すべてのトルク配分を独立してコントロールすることで、トラクションを最大限に活かす。これが極めて効果的で、雨で酷くぬかるんだ路面も余裕でこなした。ライバルモデルは、これほど複雑に各タイヤへのトルク配分を行うことはできない。大きな強みだと言える。
急斜面でアクセルとブレーキのコントロールをクルマが支援する、ヒルディセント・コントロールも搭載しており、ドライバーはステアリング操作に集中することも可能だ。
ちなみに、クルマのスタビリティコントロールをオフにすれば、スバルの4WDが持つイメージに近いオフロードでの走りを、クロスオーバーでも楽しむことができる。大きなセリングポイントのひとつだと思う。
アピール力の高い安全性能
そして、もうひとつの特徴は、多くの購入者層が共感するであろう、優れた安全性能。
スバルの広報担当者は、ボルボの安全性に対するイメージに影響を受けていると、明言していた。そしてXVは、ボルボにも劣らない、充実した内容の衝突回避軽減システムを搭載することとなった。
まず、フロントウインドウ上部に搭載されたカメラが支える、アイサイト技術を体験する。カメラは前方110mほどまでカバーしているが、48km/h程度の速度なら、追突事故を防ぐのに極めて効果的なことが良く理解できた。
さらに印象的だったのが、後側方警戒支援システムで、クルマの後方もしくは側方7m以内に接近する車両をセンサーによって検知し、大きな警告音で教えてくれるというもの。バックカメラも、ライバルモデルよりも広い画角を確保している。
「買い」か?
輝きを増したクロスオーバー
結論としては、パワートレインの物足りなさがクルマの足を引っ張っていることは明確。
来年にはハイブリッド車も登場する予定だが、ガソリンエンジンの力不足とディーゼルエンジンの欠如は、英国においてクルマの魅力を大きく目減りさせている。キャンピングトレーラーなどを牽引したいと思うドライバーは、特にそう思うだろう。
一方で、気象条件が厳しい地域のひとびとや、季節を問わずアウトドアを楽しみたいと思っているユーザーにとっては、大きな魅力を持っていることも確か。
スバルXVが持つ本物のオフロード性能、優れた安全性能と少し無骨なキャラクターは、コンパクト・クロスオーバーのセグメントにおいて、充分ユニークな存在だ。
今回さらに、その輝きが一層増したことになる。
スバルXV 2.0i SE プレミアム・リニアトロニックのスペック
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