自動車は、クラッシャブルゾーン、エアバッグやシートベルト等によって安全性をいっそう高めることができる。一方、二輪車のライダーは走行時により危険な状況に直面することも多く、自動車のドライバーよりも死亡事故のリスクが平均して約20倍高くなる。実際に2017年、ドイツにおける二輪車の死亡事故件数は9%増加した(出典:ドイツ連邦統計局)。そうしたことを背景に、ボッシュは道路交通におけるライダーの死亡事故を防ぐという明確な目標を掲げ、アダプティブ クルーズ コントロール、衝突予知警報、死角検知を含む、二輪車の安全性を向上するパッケージシステムを開発した。なお、このシステムは自動車の自動運転を実現させるための関連技術をベースに開発されている。
この新しいライダー アシスタンス システムは2020年から量産が開始し、Ducati、KTMなどの二輪車メーカーの車両に採用される予定。ただ、これはボッシュにとって、ライディングの楽しさを損ねることなく、ライダーの責任を奪いすぎない、Accident-free(交通事故のない)のライディングの実現に向けた次なるステップにすぎない。ボッシュ取締役会メンバーのディルク・ホーアイゼル氏 (Dirk HoheiseI) はこれについて、「ボッシュはライディングの安全性を新たな次元へ引き上げます」と述べている。
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安全性を向上することで、さらなる走る喜びを
調査報告書によると、二輪車事故の主な要因はふたつあり、ライダーが二輪車を制御できなくなってしまうことと、他の車両との衝突であるとされている(出典:ボッシュの事故調査報告)。しかし、ボッシュの技術があれば、こうした危険な交通状況がそもそも発生しない未来を作れるかもしれない。また、交通事故の10件中9件が人為的なミスに起因するため、よりインテリジェントな安全技術を車両に装備すべきという理由もある。
ボッシュは二輪車向け安全テクノロジーの世界的なリーディングサプライヤーとして、ABS(アンチロック ブレーキ システム)やMSC(モーターサイクル用スタビリティコントロール)などのアシスタンスシステムを提供し、二輪車の安全性の著しい向上にすでに貢献しているが、現在はさらにその先に進み始めている。ボッシュの事故調査報告によると、レーダーベースのアシスタンスシステムを装備すれば、二輪車事故の7件に1件を防ぐことができたとされている。これは、電子制御式ライダー アシスタンス システムが周囲を常にモニターし、危機的状況下において人間よりも迅速に対応できるためだ。
これらのシステムを支えているのは、レーダーセンサー、ブレーキシステム、エンジン制御システムとHMI(ヒューマン マシン インタフェース)を組み合わせた技術。レーダーが二輪車の感覚器官としての役割を担うことで、新しい二輪車向け安全支援機能は二輪車の周囲の状況を正確に把握することが可能となる。安全性だけでなく、ライダーの走行快適性も高めることで、ライディングの楽しさと利便性の向上にもつながる。「未来の二輪車は、見て感じ取る能力を備える必要があります」と、ボッシュのモーターサイクル&パワースポーツ事業部門を率いるジェフ・リアッシュ氏 (Geoff Liersch) は述べている。
ボッシュの新しい二輪車向けテクノロジーについて
■ ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)
交通量の多い道路を走行しながら前走車との距離を正確に保つのはかなりの集中力を要し、それが長時間にわたると疲労を招くもの。ACCは交通の流れに合わせて車速を調整し、前走車との安全な距離を維持できるため、前走車との距離が不十分だったために発生する追突を効果的に防ぐことができる。ACCを装備することで、ライダーは利便性の向上を感じるだけでなく、渋滞の中でも走行により集中できるようになる。
■ 衝突予知警報
道路交通では、集中力が一瞬でも途切れると、それが深刻な結果につながることもある。そこでボッシュは、追突事故のリスクを低減、または二次衝突の被害をできるだけ軽減する二輪車向けの衝突予知警報を開発した。このシステムは、車両が始動するとすぐに作動し、速度域全体でライダーをサポート。他の車両が危険なほど接近し、ライダーがその状況に何も対処しないことを検知すると、聴覚的、または視覚的な信号を通じてライダーに警告する。
■ 死角検知
死角検知は、車両の周囲をモニターし、ライダーが安全に車線を変更できるように支援する。その際に電子の目として機能するのがレーダーセンサー。ライダーから見えづらい位置にある対象物を確認し、ライダーの死角に車両が来た際には、ミラーに視覚信号などを表示し警告する。
こうした二輪車向けアシスタンスシステムは、Emission-free(排出ガスのない)、Accident-free(交通事故のない)、そしてStress-free(ストレスのない)のモビリティというビジョンの実現に向けたさらなる一歩になるとボッシュは考えている。
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