この記事をまとめると
■クルマでデートする経験の少ない人々が悩みがちな場面での対処法を指南
「プレリュード」の名称に心躍らせているのは昭和世代のオッサンばかり! かつて若者の憧れだった「デートカー」の代名詞もいまのZ世代には通じない
■沈黙を過剰なまでに恐れずに街の風景や喧騒を味方につけたい
■デートなので相手のことをどれだけ思いやれるのかが大事なポイント
好きな異性と念願のドライブデートだけどどうしたらいい?
「……ということで『クルマデートに不慣れな人』に向けて、さまざまな面から指南をするような原稿をお願いします」と言い残し、多摩川の河川敷に無許可で掘っ建てた拙宅にやってきたWEB CARTOP編集者のF氏が帰っていった。
それはさておき、「デート」というからにはお若い読者を想定しているのだろう。筆者ぐらいの年齢の男女がそれをやっても、デートではなく「不倫」にしか見えないからだ。しかし、筆者が新聞などを通じて見聞きしている当世の若い人らは、クルマデートうんぬんの前に「クルマを買うこと」自体がかなり困難で、さらには不純または純粋な異性交友の経験も極端に減少している──と聞いている。
だが、WEB CARTOPがそう言うからには、何か根拠あるいは兆候みたいなものがあるのかもしれない。JMS 2023で発表されたプレリュード コンセプトに続き、ホンダが「新型S-MX」を来春リリースするとのマル秘情報を得たとか(編集部注:得てないです)。
まぁいずれにせよ「クルマdeデート術、教えます!」的な1980年代っぽいアレを、少し真剣に考えてみることにしよう。
WEB CARTOPのF氏から聞いたところによれば、「まず第一にクルマデートで何すりゃいいの?」という疑問あるいは不安が、クルマデートに不慣れな人らにはあるらしい。
だが私に言わせれば、「何をすればいいのか?」と考えること自体がナンセンスである。クルマデートでは、別に何もしなくてもいいのだ。まぁそのへんを延々と走り続けるだけでは意味も発展性もないため、便宜上「ごはんを食べに行く」「買い物に行く」「海を見に行く」などのタスクを設定するわけだが、それらのタスクはどれも「便宜上のもの」に過ぎない。
クルマデートの真のobject(目的)は、「比較的狭い閉ざされた空間内で、比較的近接した位置にふたりで着座し、移動を伴いながらの心地よい時間を過ごすこと」なのだ。ごはんとか海とかは、ある意味オマケなのだ。
それゆえ筆者は「別に何もしなくてもいい」と申し上げたわけだが、より丁寧に指南するのであれば、前述した「心地よい時間」をお相手に過ごしてもらうため、以下のような準備と行動はしなければならないだろう。 ・ボロいクルマでもぜんぜん構わないので、とにかく車内外はキレイにしておく。そして車内は無臭であることが望ましい。
・道に迷ったりすると何かとアレであり、しかもちょっとダサいので、完全にナビまかせにはせず、ルートに関してある程度の予習をしておく。
・ほどよい塩梅の音楽を常に車内に流せるよう準備しておく。
・乗員の身体が過剰に揺れるような運転はしないよう心がける。
・「一に安全、二に安全。三、四がなくて、五に安全」というイメージで運転する。
・事故渋滞が発生したり前方に割り込まれたりしても、いちいち「ちっ、ざけんなよ」とかつぶやかない。イライラしない。
・ハイスピードコーナリング術ではなくスムース駐車術に命をかける。
・「このクルマのエンジンはRB26DETTっていってね」などのうんちくを熱く語らない。 ……ほかにもあるかもしれないが、まぁ基本となるのはこのあたりだろう。これらをしっかりと行いつつ、あとは便宜上の目的地である「ごはん」「買い物」「海」などに向かっていけばいいだけの話なのだ。
沈黙を恐れるよりも相手への気遣いを優先
だが、そういえばWEB CARTOPのF氏は打ち合わせ時、こんなことも言っていたような気がする。
「クルマデートに不慣れな人って『沈黙状態』が続いてしまうことを恐れてるんですよ。車内の沈黙って、どう解消すればいいんですかね?」。
なるほど。それを恐れる気持ちがわからないわけではないが、私からの指南はこうだ。
「沈黙を恐れるな。むしろ沈黙を友とせよ」。
これを書いている筆者が男性の異性愛者であるため、今回は便宜上「男が運転するクルマに女性を乗せる」という前提で進ませていただく。で、沈黙問題であるが、これはとくに恐れる必要はない。どうしても沈黙状態が続くようなら、もしくは貴殿がいわゆる口下手な男性であるならば、無理にその状態を打開しようなどと思わなくてもいいのだ。
いやもちろん、軽妙な語り口で何かしらの面白い話を連発させ、パッセンジャーに喜んでいただくのがベストではある。だが、苦手な人がそれを無理にやろうとしても痛々しくなるだけであり、さらには前方不注意などにより事故を発生させてしまうおそれすらあるため、無理は禁物なのだ。
「でも、さすがにずっと沈黙が続くのはちょっと……」と、口下手な貴殿は思うかもしれない。だが大丈夫だ。心配するな。もちろん、音楽もかかっていないコンクリート造りの密室で「…………」という沈黙が2時間続くのはお互いツラいが、幸いなことにクルマは、密室であって密室ではない。
ウインドウの外では「風景」が変転し続け、窓をちょっと開ければ外界の音が入ってくる。いや窓を開けずともロードノイズや踏切の音、近くで遊んでいる子どもらの嬌声なども聴こえてくる。それらすべてが素敵なBGMであり、BGVでもある。そしてさらには、FMラジオやほどよい音楽などを車内に流すことができるというのも、クルマという乗り物の特徴だ。
つまり、コンクリート造りの密室においては致命傷となる「沈黙」だが、クルマデートにおいては、さほどの致命傷たり得ないのだ。
とはいえ、仮に片道2時間のドライブデートでずっと「…………」というのはさすがにアレなので、たまには何かしらしゃべったほうがいい。そして「たまに」であれば、口下手な貴殿であっても何かしらの自然な言葉が、胸の奥底から湧いてくるのではないだろうか。
以上のとおり、クルマの車内外を清潔にしたうえで安全・快適な運転に務め、道に迷わず、イライラせず、スムースな駐車をキメ、さらには沈黙を過剰には恐れずにいれば、ドライブデートは7割方成功したも同然である。
そして、成功の割合を8割程度まで上げるための仕上げ作業が「同乗者への気遣い」である。過剰すぎる気遣いはウザく、なおかつ人から舐められる原因のひとつにもなり得るが、とはいえ「ある程度の気遣い」ができないことには、ドライブデートの成功はあり得ない。
同乗者にはさまざまな気遣いをするべきだが、大きなものとしては「トイレ問題」があるだろうか。
その男性が運転するクルマに初めて乗った女性は、高速道路などを走行中に「えっと、おしっこ漏れそうなので、次のPAで停まってくれます?」みたいなことはなかなか言いづらいものだ。そこは、こちら側が先まわりして気にしてあげなければならない。
その際に「おしっこ漏れそう? 大丈夫?」などという言い方をする者はさすがにいないと思うが、「トイレ休憩しようか?」というのも58点だ。ギリギリ不合格である。
正しくはこうだ。
「次、休憩しようか?」。
トイレ=おしっこまたはウンチを、「休憩」というスマートな単語に置き換えるのだ。これが、デキる男というものである。
そのほかでは「空腹」「のどの乾き」「腰痛」などに対しての先まわりしたスマートな気遣いも重要であり、前述した内容と重複するが「車内外をキレイにしておく」「乗員の身体が揺れるような運転はしない」というのも、非常に重要な“気遣い”だ。
ここまでをおおむね完璧にこなすことができたなら、ドライブデートは──仮に沈黙の時間が比較的長かったとしても──8割方は成功である。
そして残る2割については他人がちょっと指南してどうにかなるものではなく、「貴殿自身の魅力」に関わる部分であるため、筆者が言えることは何もない。各自が男として、あるいは漢として、自己研鑽を重ねる以外に道はないのだ。
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みんなのコメント
交通ルールと一緒に乗せる人くらい守れよと思う。