引き締まったボディだが後席は大人が足が組めるほどゆったり
スバル・レヴォーグが2代目の新型になった。先代に対して走りの進化は著しく、12.3インチのフル液晶メーターと11.6インチの縦型ディスプレーが基本のデジタルコクピットを採用。ついにハンズオフドライブを可能にした、3D高精度地図を用いたアイサイトXの搭載、またSTIスポーツのドライブモードセレクト、それをエアコン調整などとセットで顔認証システムを実現するなど、まさに先進のスポーツワゴンとしてデビューしたのである。
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もちろん、初代=先代レヴォーグとの比較も大切だが、ここではレヴォーグが日本市場においてレガシィツーリングワゴンの実質的な後継車であることに注目し、新型レヴォーグと、国内最終型の5代目レガシィツーリングワゴン(2009-2014)を比較してみた。
まずはボディサイズだ。北米市場を見据えて大型化された5代目レガシィツーリングワゴンは全長4775×全幅1780×全高1535mm、ホイールベース2750mmだった。新型レヴォーグが全長4755×全幅1795×全高1500mm、ホイールベース2670mmだから、レヴォーグのボディサイズは20mm短く、15mm幅広く、35mm低く、ホイールベースは80mm短い……ということになる。
パッケージングはどうか。身長172cmの筆者が5代目レガシィツーリングワゴンでドライビングポジションを決め、その背後に座ると、頭上に175mm、膝まわりに270mmものスペースがあった。一方、新型レヴォーグは同120mm、200mm(先代レヴォーグは同130mm、175mm)だから、さすがにクラス上のレガシィツーリングワゴンのほうが後席にゆとりがあったことがわかる。とはいえ、先代よりホイールベースを25mm伸ばし、そのすべてを後席居住スペースにあてた新型レヴォーグの後席でも、ボクの体形なら足が組めるほどゆったりできるのも事実。
では、ワゴンとして重要なラゲッジスペースはどうだろうか。5代目レガシィツーリングワゴンは開口部地上高565mm、フロア奥行き1125mm、最小幅1080mm、天井高1130mm、後席格納時のフロア長は1970mm。
新型レヴォーグは開口部地上高630mm、フロア奥行き1070mm、最小幅1065mm、天井高770mm、後席格納時のフロア長1640mm(すべて筆者の実測値)と、先代とほぼ同じスペースは、レガシィツーリングワゴンに敵わない。開口部の低さ=重い荷物の出し入れのしやすさでも、レガシィツーリングワゴンが上まわる。もっとも新型レヴォーグのラゲッジスペースは床下に機内持ち込みサイズのキャリーバッグがすっぽり入る収納を備え、最大561リットル(VDA)もの容量があり、アウトドアなどでの荷物の積載にも十分に対応してくれるはずである。
パワーユニットについては、5代目レガシィツーリングワゴンには2.5リッターと2リッターターボがあり、新型レヴォーグの1.8リッターターボに近い2リッターターボと比較すると、レヴォーグは177馬力/30.6kg-m。5代目レガシィツーリングワゴンの2.0GT DITアイサイトは280馬力/36.7kg-m。だが、大人しめの2.5リッターモデルは173馬力/24.0kg-mだったので、新型レヴォーグは5代目レガシィツーリングワゴンの2.5リッターモデルを遥かにしのぐスペックを、ほぼ同等の車重にして備えていることになる。
ファンによってはボクサーエンジンらしさが薄れたと感じるかも
さて、肝心の走りについてはどうだろう。年代が大きく異なるので直接比較はできないものの、5代目レガシィツーリングワゴンの乗り心地は当時としては素晴らしく、それでいてまるで路面がすぐ近くにあるような、歴代レガシィツーリングワゴンならではの低重心感覚、路面との確実なコンタクト感を持ちながら、しなやかで快適なタッチが基本だった。
エンジンはゆっくり走っている限り、じつに静か。それでもアクセルペダルを踏み込めば、かつての水平対向ユニットほどではないにしても、フラット4独特の鼓動をダイレクトに伝えつつ、滑らかに、パワフルに、ターボエンジンであればターボらしい盛り上がりを堪能できたものだ。その乗り味をひと言で言えば、しっかりしなやか。また、ステアリングフィールはグレードを問わず、切り始めからきっちりした手応え、ファンな操縦感覚を感じさせてくれた。
では、新型レヴォーグはどうだろう。エンジンは1.8リッターターボに統一されたが、その新ユニットはじつにスムースで、なおかつスバルのエンジン史上、もっとも静かと言っていい。アクセルを踏み込んでも、まるで電動車のように静かに、滑らかに回り、さすが30.6kg-mものトルクによって、2.5リッター級の胸のすく加速力を味わわせてくれる。だが、水平対向エンジンらしさはほぼない。どんなエンジン形式なのかわからないほど、黒子に徹したエンジンでもあるのだ。
そして乗り心地、静粛性の洗練度も時代の差を感じさせてくれる部分。とくにZF製電子制御可変サスを奢るSTIスポーツの乗り味は、よりスポーティでありながら、むしろ乗り心地に優れ、一段と静か。電子制御可変サスはステアリングの切り角、路面からの入力、Gに対して瞬時に反応し、制御してくれるため、操安性はもちろん、乗り心地面でも優位なのである。また、標準車のサスはゴムブッシュ、スチールハウジングを用いているのに対して、STIスポーツのサスは高周波ノイズをカットすべくウレタンブッシュ、アルミハウジングを奢っているため、ロードノイズが気にならない=あらゆる場面で静かなのである。
もちろん、新型レヴォーグの縦型ディスプレイで操作するドライブモードセレクトは、レガシィツーリングワゴン時代にはなかった神器であり(標準車はSIドライブ)、アイサイトの最新制御、3Dマップを使ったカーブ、料金所手前制御、50km/h以下での夢のハンズオフドライブ、アダプティブレーンチェンジアシストも、アイサイトVer.2時代の5代目レガシィツーリングワゴンには望めない最先端の先進機能。そうした自動運転に近い運転支援機能に関しては、もう隔世の感ありだ。
そんな劇的な動的質感の進化をも遂げた新型レヴォーグだが、WLTCモードで13.6km/L、JC08モードで16.5km/Lの燃費性能だけは、飛躍的に向上していなかったりするんですけどね……。ちなみに5代目レガシィツーリングワゴンの2.5iアイサイトはJC08モードで14.4km/Lでした。
結論として、無理矢理5代目レガシィツーリングワゴンと比較すれば、レガシィツーリングワゴンにいま乗っても、水平対向エンジンがもたらす走りの魅力、速さ、低重心&AWDならではの安定感、走りの楽しさは健在。一方、新型レヴォーグは走り、機能が全方向に大きく洗練、進化した反面、スバルファンがこだわる水平対向エンジンらしさは激減。
とはいえ、ステアリングを握れば、その静かで快適すぎる乗り味、十分すぎる動力性能、意のままのリニアな操縦性(STIスポーツ)、山道でのゴキゲンなフットワーク、そしてかつてのレガシィツーリングワゴンでは望めなかった高速道路でのアイサイトXの先進機能に、大いなる感動&満足感が得られることは間違いないと思える。いまでは“大人”になった、かつてのレガシィツーリングワゴン乗りも、一度、新型レヴォーグ STIスポーツEXに試乗してみてほしい。
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