■なぜタイでは小型セダンが人気なのか?
東南アジア最大の自動車生産国で「アジアのデトロイト」を自称するタイ。2019年11月末には「タイモーターエクスポ」と呼ばれるモーターショーが開催されました。
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そこでホンダは、5代目となる新型「シティ」を世界初公開。新型シティは小型セダンで、タイでは小型セダンのニーズが高いようですが、どんな理由があるのでしょうか。
タイで販売されているシティは、日本で2代目が「フィットアリア」として登場、4代目は「グレイス」として発売しているモデルとなり、新型シティは2020年春に日本で発売する新型「フィット」と基本メカニズムを共用するモデルです。
また、ショー会場では、日産が新型「アルメーラ」のタイ仕様を発表。アルメーラとは先代モデルが日本で「ラティオ」として販売され、実質的には「マーチのセダン版」といわれています。
しかし、新型モデルは、ボディサイズ(全長4495mm×全幅1740mm)がひとまわり大きくなっただけでなく、プラットフォームはひとクラス上のCセグメントに属する新型「シルフィ」(日本未発売)と同じ新開発のCMF-Cを採用。
エンジンは1リッターガソリンターボを搭載し、新型シルフィのイメージを継承するデザインは、日本でラティオとして売っていた従来型と比べて大きく洗練されたと感じます。
また、マツダは「マツダ2」のビッグマイナーチェンジを実施しましたが、ステージ上に置かれたのは5ドアハッチバックではなく日本未導入のセダンボディ。ハッチバックよりもセダンに力を入れていることが伺えます。
そして三菱も、「ミラージュ」の派生セダンモデルである「アトラージュ」をビッグマイナーチェンジし、ショーで実車を初公開しました。
そんな各社の新車攻勢により、今年のタイモーターエクスポは「日系メーカーの小型セダン祭り」といった様相です。
欧米などの市場では、このクラスはハッチバックが基本ですが、なぜタイ市場では小型セダンが投入されているのでしょうか。
大きな理由は、はじめてクルマを買うミレニアル世代の若い消費者が都市部に急激に増加しているという、新興国ならではの事情が挙げられます。
これまでタイでは、クルマといえば税金の安いピックアップトラックが主流でした。しかし都市生活者はピックアップトラックを好まず、さらに現地ではクルマはかなりの高額品(物価は日本の1/3程度だが新車は税金の関係もあって日本よりも高い)なので、一般的な消費者は無理をして購入することになります。
そこで価格の安いコンパクトカーが好まれるという流れが生まれるのです。そのうえで、タイの人たちは国民性として見栄っ張りなところがあるといわれているので、同じコンパクトカーでもハッチバックよりもセダンのほうが大きな車体で見栄えがいいから人気が高いというわけです。
しかし、それだけではありません。せっかくクルマを買うのなら小型車でも荷室が広いほうが便利(荷室の広さを求めて大型車を買うほどの経済的なゆとりはない)だし、トランクが独立しているほうがドリアンなど匂いのきつい食べ物なども気兼ねなく積めます。
さらに交通事故の際には、クラッシャブルゾーンの広いセダンのほうが安全性を確保できる、などの実用性は安全面での理由もあるといいます。
昨今、先進国の自動車マーケットを見渡すと、もともとハッチバックが主流だった欧州だけでなく、トランク付きのモデルが好まれた北米や日本でもセダン離れが進みつつあります。
しかしタイでは、それらの地域とは逆にセダンの人気が高まっているという状況が起きているというわけです。
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