世界中で愛されている、トヨタのランドクルーザーシリーズのグローバル累計販売台数が、2019年8月末までに1001万5000台(トヨタ調べ)となり、1000万台を超えた。
1951年8月1日にトヨタ ジープ(BJ型)の発売以降、68年間で達成した記録だが、ここまでの超ロングセラー車になった理由はいったい何なのだろうか?
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今回は、ランドクルーザーの歴史を振り返りつつ、その人気の理由を探っていく。
文/片岡英明
写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】歴代ランドクルーザーをピックアップしてプレイバック!
■ヘビーデューティー系SUVとして生まれる
日本車のなかで、最も長い歴史を誇る隠れた名車が「ランクル」の愛称で愛されているプレミアムSUVの「ランドクルーザー」だ。
ランドクルーザーを名乗ったのは1954年からだが、それ以前は「トヨタ ジープ」の名で販売を続け、タフなことを知られていた。もちろん、クラウンより長い歴史を誇り、海外での知名度もクラウンを大きく上回る。
トヨタ ジープ(BJ型)。1950年に設立された警察予備隊(現自衛隊)から、ジープ型四輪駆動車の開発要請を受け、翌年の1951年8月に誕生。「ジープ」の名が商標権に引っかかるため、1954年6月に車名を「ランドクルーザー」に変更
累計生産台数は、トヨタ・ジープ時代の1951年から数えると1000万台を超えた。この数字は驚きだ。セダンではなく、クロスカントリー4WDというジャンルのクルマで1000万台の大台を超えたことにビックリ仰天なのである。
ランクルの多くは海外で販売され、長年にわたって活躍を続けてきた。CNNニュースなどを見ていると、必ずと言っていいほどランクルが出てくる。もてはやされ、愛されている理由は、走破性能が卓越しているからだ。乗用車をベースにしたクロスオーバーSUVでは大きなダメージを受けてしまう道なき道を、難なく走破できる実力を秘めている。
が、魅せられる理由は優れた走破性だけではない。泥濘地や砂地を苦にしない。タフなことに加え、メカニズムの信頼性も驚くほど高いのだ。このこともランクルを選ぶ理由のひとつになっている。極限の状況で脱出できなかったり、トラブってしまうことは生死に関わるからプロと呼ばれる人たちはランクルを選ぶのだ。
ランクルの優秀性を世界中に知らしめたのが、1960年に誕生した3代目の40(ヨンマル)系ランクルである。タフなラダーフレームや4輪リーフリジッドのサスペンション、副変速機付きの4WDシステムを受け継いでいる。
ランドクルーザー(40系)。1984年まで、24年にわたり販売される超ロングセラーモデルとなった
サイクルフェンダー(ボディ別体の自転車に付いている泥よけの形状に似たフェンダー)を採用するが、デザインは大きな進化を遂げた。ヨンマル系ランクルはホイールベースやボディタイプ、ドアの枚数の違いなど、多くのバリエーションを誇り、エンジンも多彩だ。2010年に日本市場にも投入された「FJクルーザー」は、このヨンマル系ランクルの味わいを今に蘇らせた作品である。
ロングボディに加え、スーパーロングまで用意し、ランクルとしては初めてディーゼルエンジンも設定した。ヨンマル系ランクルは、そのほとんどが海外に輸出され、多くのファンを獲得することに成功している。北米を中心に販売を伸ばし、南米やヨーロッパでも大ブレイクした。
60系ランクルが登場したあとも第一線で活躍を続け、後継の70(ナナマル)系ランクルにバトンを託したのは1984年だ。基本性能が素晴らしかったし、スタイリッシュだったから販売は落ちなかった。だから改良しながら生産を続け、何と25年も販売を続けたのである。
ランドクルーザーをプレミアムブランドに押し上げた功労者が、1980年に登場した60系だ。ファンから「ロクマル」の名で親しまれ、クロスカントリー4WDの新しい形を提案した。
ロングボディの大柄な4ドアモデルで、リアゲートは横開きのほか、上下開きゲートも設定している。サイクルフェンダーと決別し、近代的なステーションワゴン風のフォルムになったこともあり、ファン層は大きく広がった。
パワートレーンは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンともに直列6気筒が主役だ。マニュアル車に加え、待望の4速ATを誕生させたことも知名度アップに大きく貢献している。
■復刻もされた空前のヒット作
60系を凌ぐヒット作になり、今もランクルの代名詞となっているのが1984年にデビューした70系ランドクルーザーだ。仕向け地や生産年代によって5種類のホイールベースがあり、ショート系の2ドアのほか、セミロングとロングの4ドアモデルを設定した。
ランドクルーザー(70系)。スタイルは40系のイメージを継承しつつ、快適性、操作性などを向上させた
また、バンタイプのほか、ピックアップも用意するなど、バリエーションは多岐にわたる。もちろん、パワーユニットとミッションも数多く揃え、後期モデルではV型6気筒も登場した。
4輪駆動のメカニズムやサスペンションは変わっていないが、21世紀を前に、前輪にコイルスプリングを採用し、快適性を向上させている。
ナナマル系ランクルは世界中のオフロード派やヘビーデューティ派に愛され、日本にもファンが多い。名車中の名車なのだ。そこで発売30周年を迎えたのを機に、2014年夏にアニバーサリーモデルが復活し、販売された。
2014年8月25日から1年限定で国内販売された復活モデル、ランドクルーザー(70系)
このことからもナナマル系は実力が高いだけでなく、ルックスも魅力的であることが分かる。ちなみに、この70系ランクルにラグジュアリー装備を加え、乗り味もマイルドにするなど、ワゴン感覚を多く盛り込んだのが「プラド」だ。
■100系からはステーションワゴン系に変わる
今につながるランドクルーザーの道を敷いたのが、1998年にデビューした100系ランクルである。80(ハチマル)系ランクルはV型8気筒エンジンやフルタイム4WDを採用するなど、プレミアム路線に舵を切り、安全装備も充実させた。その集大成モデルとして送り出されたのが100系のランクルだ。
ランドクルーザー(100系)。80系の後継として誕生した100系は、高級車としての要素も取り入れプレミアム路線に舵を切った
海外市場を意識してV型8気筒DOHCエンジンを4.6Lまで拡大し、バンの直列6気筒ディーゼルも4バルブ化してドライバビリティを向上させている。
進化させたのはエンジンだけではない。サスペンションは卓越した走破性と快適な乗り心地を両立させるため、4輪独立懸架に進化させた。トラクションコントロールも装備する。また、気持ちよく操れるように、ステアリングギアもラック&ピニオン式だ。電子制御のメカニズムを積極的に採用し、世界のライバルを凌駕する上質な走りを手に入れた。
この100系ランクルを正常進化させたのが現行の200系ランクルである。プラドを含め、世界中のオフロードファン、クロスカントリー派の憧れの存在となっているのがランドクルーザーだ。日本が世界に誇るクロスカントリー4WDであり、ライバルからもキングとして崇められている。
※編集部注
65年以上も愛され続けるランクルだが、次期型も2020年には登場する見込み。日本車随一の歴史を誇るモデルは時代に合った進化を遂げ、また新たな歴史を歩み出す
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