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「レヴエルトはロックだ!」私が描くデザインの根底には音楽が流れています【ランボルギーニHead of Designミティア・ボルケルト氏:TOP interview】

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「レヴエルトはロックだ!」私が描くデザインの根底には音楽が流れています【ランボルギーニHead of Designミティア・ボルケルト氏:TOP interview】

レヴエルトのデザインルーツを探る

ランボルギーニのフラッグシップといえば、「ミウラ」から「カウンタック」、「ディアブロ」、「ムルシエラゴ」、「アヴェンタドール」まで、常にその時代を象徴するスーパースポーツ、スーパーカーの代表という位置付けであった。そして、新たな「レヴエルト」が先ごろローンチされたばかり。このレヴエルトのデザインを統括したミティア・ボルケルト氏にAMWが単独インタビュー。新フラッグシップのデザインのルーツを探ります。

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ミティア・ボルケルト氏が影響を受けたもの

──幼少期に影響を受けたクルマはなんでしょう?   幼い頃は、クルマよりもバイクに影響を受けましたね。私は東ドイツ出身なので、当時ワクワクするクルマがなかったんです。走っているクルマはトラヴァント、マツダ、日産とか。ああ、ゴルフもありました。1988年から1989年ごろ、ハンガリーに出かけることがありました。というのも、その当時はまだ国外といえば、ハンガリーぐらいだったんです。そのハンガリーではスズキやカワサキ、ドゥカティ、ホンダなどのスタイルも最高にカッコいいバイクをたくさん見かけました。サウンドにも痺れましたね。そこからバイクが大好きになったんです。

──最初に所有したクルマは?

ファーストカーは、ホンダ「CR-X」でした。アイルトンセナがF1で乗っていたホンダです。Vテックエンジンでしたよ、当然。CR-Xの前に親からトラヴァントをもらったことはありますが、自分で購入したのはCR-Xが最初なので、ファーストカーがCR-Xでまちがいないですよね。

──いつ、カーデザイナーという職業を意識しましたか?

10歳~12歳ごろなんですけど、デザイナーがなんたるかわからない頃からスケッチが大好きでたくさん描いてました。友達から「何を描いてるんだ?」と尋ねられるので、デザイナーになりたいんだと答えていましたね。スケッチすることがすごく好きだったんです。

スケッチの対象は、バイク、トラック、ヘリコプター、飛行機……といった乗り物がメインでした。ただスケッチするだけでなくて、小さい頃は自分のブランドを思い描きながらスケッチしていました。このクルマは4気筒にしよう、こちらは6気筒、そして排気量は1.5Lだな、といった具合に。つまり、いま思い返すと、それってモデルのポートフォリオということなんですね。なのでティーンの頃からデザインだけではなくて、ブランドのポートフォリオまで頭に描きながらスケッチしていたことになりますね。

──いま、まさになさっていることですね?

イエス! 夢を体現しています。

──影響を受けたアーティストはいますか?

私は音楽に影響を受けました。特にデペッシュ・モードというアーティストです。アート関係ですと、アントニオ・コバインというデペッシュ・モードのMVも手掛けていた人物にすごくインスパイアされました。私が描くデザインには、音楽が根底にあるといっていいでしょう。建築家で言うと、フランクゲーリーやノーマン・フォスターだとか、そういった人も好きです。デザイナーとしてはジウジアーロですね。作品だけではなく、彼の性格にも感銘を受けましたし、アーティストとして尊敬しています。

デザイナーとして常に意識していたことは、どうしたらスケッチがもっと上手くできるんだろう、ということです。クルマのスケッチ、ホイールのスケッチ……、そうしたいろんなスケッチをどうしたら上手く描けるようになるんだろうか、と。本当はスケッチを描くこともスポーツと根本は同じで、日々、切磋琢磨、鍛錬しないと上手くならないものだと思います。

── ランボルギーニのデザインでいちばん大切なことは何でしょう?

一目でランボルギーニであることがわかるデザインです。あえてたとえるなら、スペースシップデザインのような……。たとえばある都市の一隅にランボルギーニが佇んでいるとします。それを見た誰しもが、一目でランボルギーニだと認知できることが大切です。スペースシップなら誰が見てもスペースシップ以外の何物でもないですよね。

デザインセンターは、いうなればキッチンです

──レヴエルトの好きな部分は?

すべてが好きです。そのなかでもとくに好きなところを挙げるなら、リアからの眺めに自信があります。エキゾーストの六角形のデザイン、少し上から見たときに垣間見えるエンジン、あと、リアウインドウ越しのコクピット……、そういったところが気に入ってます。

カウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールと、50年間、ミッドシップエンジンのV12であり続けたこと自体が、すでに大切なデザインのDNAです。レヴエルトはそこからさらに新しいアイコン、新しいレジェンドを強調しつつ、コンパクトに見せたいと考えました。そこで大切なのは、先に述べたようにランボルギーニとすぐに分かる特徴です。たとえば、フロントのY字型のシェイプ、エキゾーストの六角形、それにウイングが少し浮いて見えるようなデザイン。同じく室内にもYシェイプを取り入れています。こうしたアイコン的な特徴を取り入れることで、ランボルギーニであることを強調していきたいと思っています。

──サンタアガタのデザインセンターでは、どのようにして新しいデザインが生み出されているのでしょうか?

デザインセンターでは、10から15個のプロジェクトを同時に進めています。たとえるなら、私はキッチンのシェフみたいな存在でしょうか。次に何をサーブするか、それと同時にその次は何をサーブするのか、その次は……? と、常に先を読まなければなりません。つまり、今日(こんにち)のデザインだけでなく、5年後10年後のデザインとは何か、戦略的に絶えず考えなければなりません。これは非常に難しいことですが、同時に面白いところでもあります。

いま、デザインセンターをキッチンと表現しましたが、より正確にたとえるのなら、厨房だけではなくてレストランのようなものだと考えてください。フロアにはお客様もいるわけです。私はジェットセッターではありませんが、レヴエルトのプレミアのために世界各国を回っています。まず最初はサンタアガタで、そしてニューヨークやドバイ、ここ東京といった具合に。プレミアのために訪れた場所は、文化・風土がまったく異なります。しかし、訪れたすべての場所で、レヴエルトをご覧になった方たちが興奮というか、心躍るというか、ワクワクしてくれていることが伝わってきました。このときの気持ちは、食事を終えたあとの客の前に挨拶に行くシェフと同じなのかもしれません。こうした体験は、デザイナーとして、また、ブランドを表現するこちら側も本当にワクワクします。こうした体験が、情熱を持ってクルマを生み出していくエナジーになっています。

場所としてのデザインセンターは、スーパースポーツカーを作っている場所としては、とてもコンパクトですべてが詰まっているような、凝縮された場所ですよ。

MVアグスタにドゥカティ、影響を受けたバイクたち

──では最後に、ミティアさんにとって、もっとも美しいクルマは?

レースカーも好きで、機能をベースにした少し荒削りなデザインもいいなと思っています。しかし、デザイナーという観点からは、もう少しデザインに主張をおいたポルシェ917やフォードGT40なども美しいですね。市販モデルだとランボルギーニも含め美しいクルマは数多くあります。でもやはり個人的には、子供の頃に大好きだったバイクを挙げておきましょう。もはやデザインアイコンでもあるMVアグスタのF4、それにドゥカティのパニガーレ。もちろん、日本のスーパーバイクにも素晴らしいデザインのものはたくさんあって、個人的に大好きです。

日本を訪れるスケジュールが決まると、実は本当に心から喜んでいます。インタビューもとても楽しい内容のことを訊かれるので興味深いですしね。こうしたことが、私が次に仕事を進めるためのエネルギーの源になっているんですよ。

* * *

東ドイツ出身のミティア氏が、音楽、それもイングランドのロックバンドに影響を受けていたというのは、意外でもなく、なるほどと思わされるものがあった。ドイツが東西統一される前年、ベルリンの壁が崩壊している。その2年前の1987年、デヴィッド・ボウイの伝説となったコンサートが西ベルリンのライヒスターク(国会議事堂)前広場で開催されている。スピーカーの4分の1を、東側へ向けていたというコンサート。東ベルリンの若者たちがボウイに触発されたのは間違いのない史実である。そして、ロックが東西ドイツを統合したといわれる所以となった。ロックは、当時の東ドイツにとっては、自由なるものの象徴であったのかもしれない。

限られたインタビュー時間内で確認することはできなかったが、ミティア氏がデザインセンターをキッチン──レストランにたとえたのは、スペインのエル・ブリのフェラン・アドリアのことがイメージとしてあったのかもしれない。50席ほどしかない客席は常に予約で埋まり、世界一のレストランに5度も選ばれたエル・ブリ。それまでにない独創的で斬新な料理は、まさしくランボルギーニに通じるものがあった。

エル・ブリ──フェランの料理は、ガストロノミーの枠を超えて哲学やアートの領域にまで達したことは、美食家ならずともご存知の方は多いだろう。ミティア氏の描いたスケッチがランボルギーニで形となり、そして哲学やアートへとこれからどうやって昇華していくのか、見守っていこうではないか。

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