トヨタ渾身の一作として1998年10月に発売されたFRスポーツセダン、アルテッツァ。その渾身の作を「一発屋」と言ってしまうと反発を覚える人も多かろうが、鳴り物入りで登場し、日本カー・オブ・イヤーを受賞した割りには、イマイチ売れないまま終わってしまった存在であることは確かだ。
まぁ鳴かず飛ばずで終わるクルマなどたくさんあるわけだが、「FRセダン!」としてかなりの期待をされながらも不発に終わってしまったレアな存在として、トヨタ アルテッツァは歴史に名を刻んだといっていいだろう。
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だが、新車時は同じFRセダンのBMW3シリーズに押されまくり、(FRじゃないけど)スバルレガシィB4にも押されまくった結果として今ひとつ売れなかったアルテッツァだが、中古車となった今ではその立場も逆転し、「けっこうな高値が付いてるトヨタアルテッツァvs.超激安中古車と化したBMW3シリーズ」みたいな図式になっている可能性もある。
実際のところはどうなのだろうか、中古車事情に詳しい伊達軍曹が解説する。
文/伊達軍曹
写真/トヨタ
【画像ギャラリー】1代限りのスポーツセダン トヨタアルテッツァをじっくり見る
■6気筒のAS200系の中古車相場は今どうなっているのか?
1998年10月に登場したFRのスポーツセダン、アルテッツァ。メディアから注目されたがいざ発売してみると、ネッツ店の値引なしのワンプライス販売が影響したのか、さほど人気は出ず、値引きの大きいターボ車のレガシィB4のほうが人気は高かった
全長4400×全幅1720×全高1410mm、ホイールベース2670mmというコンパクトなFRセダン。2L、直4の3S-GE型を積むRS200は210ps/22.0kgm(6速MT)、200ps/22.0kgm(ステアシフトマチック付き5速AT)。2L、直6の1G-FE型のAS200は160ps/20.4kgm(4速AT)
アルテッツァAT車の中古車情報はこちら!
まずはアルテッツァの全体的な中古車相場から見ていこう。
2021年7月上旬現在、アルテッツァの中古車流通量は約160台。同時期のBMW3シリーズ(E46型)が約90台であり、同じく同時期のスバルレガシィB4(初代)の流通量が約80台であることから考えると、アルテッツァは中古車になったことで勢いを増したというか、「逆転勝利への道」を突き進んでいるのでは? という予感もしてくる。
が、まだ断定するには早い。具体的な相場を見てみよう。まずはアルテッツァのAS200グレードについて。
AS200系は、最高出力160psというややおとなしめの1G-FE型直列6気筒2Lエンジンを搭載した、比較的ラグジュアリー志向なシリーズだ。「フォーマルな大人のセダン」という意味でBMW 3シリーズのライバルであり、トランスミッションは4速ATと6MTが設定されていた。
で、AS200系各モデルの流通量は、アルテッツァ全体の約2割に相当する34台で、そのうち8割近くが、6MTではなく4速AT。……さすがは「大人のセダン」である。
そしてAS200系全体の中古車相場は約20万~約120万円。微妙なコンディションのもの、あるいはまあまあぐらいのコンディションのものは20万~80万円ぐらいで叩き売られており、極端にコンディションの良い少数の個体だけが100万~120万円ほどの値付けになっている。
……一部の個体を除き、AS200系の場合は「中古車になって挽回した! 逆転した!」ということはなさそうな気配だが、ライバルだったE46型BMW320iの中古車相場も見てみよう。
こちらの流通量は約35台で、相場は20万~90万円といったところ。……アルテッツァAS200よりも相場は微妙に安い。まぁ誤算の範囲ともいえる数字だが、AS200系は「一応健闘している」とはいえる状況のようだ。
■4気筒のRS200系はどうか?
車重はRS200の6速MTが1340kg、RS200Zエディションの6速MTが1360kg
アルテッツァMT車の中古車情報はこちら!
アルテッツァのウリの1つでもあったクロノグラフ型スピードメーター。3S-GEエンジン搭載車は電圧計、水温計油圧計をスピードメーター内に配置
続いてはRS200系である。こちらは伝統のスポーツエンジンである3S-GE型2L、直4エンジンを搭載した人気グレードで、6MT仕様は最高出力210ps、最大トルク22.0kgm。5速AT仕様のほうでも200ps/22.0kgmという高出力をマークしていた。
アルテッツァRS200Zエディション。タイヤ&ホイールサイズはZエディションが215/45ZR17、7×17サイズ、RS200が195/65R15、6.5J×15サイズ
またそのほか、RS200系はブレーキや補器類も強化されており、MT車はチタン合金バルブを採用。5速AT車のほうもステアシフト機構が採用されたスポーティグレードである。
2021年7月上旬現在、中古車の流通量はAS200系の4倍近くとなる約110台で、その8割以上が5速ATではなく6MT。……うむ、さすがはスポーツセダン。
で、新車時価格は230万~330万円ほどだったRS200系の現在の中古車相場は……底値のほうはAS200系とほぼ同じく30万~90万円ぐらいで叩き売られているが、コンディションがまずまず良好と思しき個体は120万円前後で多数流通している。
さらにコンディションとスペック(走行距離など)が好ましい個体には150万~200万円ほどのプライスが付き、よりいっそう走行距離が短く、コンディション良好な6MT車には220万円前後の値が付く――というのが、現在のRS200系の相場である。
当然ながらR34型日産スカイラインGT-Rのようなバカ高い相場にはなっていないわけだが、生産終了から16年たっても150万~220万円ぐらいの値が付くということは、「まずまず挽回している! 新車時の汚名を返上している!」と見てもいいのかもしれない。
E46型BMW3シリーズ。320iとの比較では、アルテッツァRS200(210ps)のほうがパフォーマンス的には上
だが、まだ断定はできない。E46型BMW3シリーズのほうの相場も見てみよう。
160ps/20.4kgmの直6を搭載したAS200系のライバルは、170psの直6を搭載したE46型BMW320iでいいと思うが、210psの(ATは200psの)直4DOHCを搭載したRS200系の競合は何になるのだろうか? 一応6MTも用意し、最高出力231psの3L、直6を搭載した「330i」ということにしてみよう。ちょっと違うのだが、まぁよしとしよう。
で、そのE46型BMW330iの2021年7月上旬時点での状況は、流通台数が約12台で、相場は60万~260万円。いや、260万円の値を付けているのは1台だけで、大半の330iの中古車価格は150万円以下なので、ここはひとつ「60万~150万円」に訂正したいところだ。
■苦節23年、中古車となって挽回!
ということは、アルテッツァRS200系の相場がおおむね30万~230万円ほどなので苦節23年、アルテッツァはようやく宿敵BMW 3シリーズを打ち負かし、その立場を逆転させた!……ということもできる。
新車時は惨敗だったトヨタアルテッツァも、「MTで楽しめるFRセダン」という選択肢がきわめて少なくなったことで価値を高め、というかその価値が再発見され、ある種の「挽回」に成功したことは確かなのだろう。
それでもアルテッツァの相場は、ほかの平成名車のように相場がウルトラ高騰しているわけもない。それゆえ、「ほどよいサイズのFRセダン」を探している人はいま一度、トヨタアルテッツァに注目してみてもいいはずだ。
カタログにはヘルメットにレーシングスーツを着たドライバーが写っていてスポーツモデルであることをアピールしている。写真はアルテッツァRS200Zエディション
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