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SUBARU BRZ GT300インサイドレポート 判断ミスか?スーパーGT2019 第7戦スポーツランド菅生

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SUBARU BRZ GT300インサイドレポート 判断ミスか?スーパーGT2019 第7戦スポーツランド菅生

スーパーGT2019もいよいよ残り2戦の大詰めとなった。SUBARU BRZ GT300は予選でコースレコードを塗り替える速さを発揮し、決勝に臨んだ。がしかし、タイヤ選択とセンサー系と思われるトラブルにより、完走を果たせなかった。

レイン仕様にはしたが・・・

2019年10月 レベル4目前の大規模な自動運転実証実験

霧雨が判断を迷わせた。12時25分コースインのタイミングではもちろんドライだ。ウォームアップ走行を終え、一旦ピットに戻る。再びグリッドに整列するためにコースインするが、この時は各チームとも「決勝仕様」のスペックで走る。GT500もGT300もオールスリックタイヤだ。

BRZ GT300のセッティングは、レース途中からの雨を予測したウエットセッティングに変更している。ドライのセットからわずかに車高を上げ、リヤのウイングでダウンフォースが出るように変更している。

トライは成功していた

実は前戦のオートポリスでフロントスポイラーの形状を変更している。これはフロントのグリップを高くする狙いからの変更だったのだが、ミッショントラブルでリタイヤしており、明確な成果がつかめていない状況だった。その新デザインのフロントスポイラーを装着してSUGOラウンドに臨んでいた。

ドライバーの山内英輝選手は、「朝のウオームアップは2タイプのタイヤテストをしているのと、燃料を満タンにして本番想定でのセットアップなど、いろんなテストをしているので、正直マシンのグリップ感が変わった印象はなかったんですが、全体的に安定していて乗りやすかったです」とコメントしている。

この公式練習では1分18秒178で96号車のRC F GT3と1000分の1秒まで同タイムの2番手記録として残った。(先にタイムを出した方が1番のため)そして、迎えた予選だが、渋谷真総監督はマシンのセットを少し変更する指示をした。それは、山内選手の走行後のコメントとして、「前後のバランスでピッチングはもう少し抑えたい」という意見を反映しての変更だ。

渋谷総監督は「今、バランスは悪くないと思いますがドライバーが走りやすい方が、よりベストに近くなりますから、少し固める方向にしました。また、井口選手であれば、多少マシンセットを変えたとしても、Q1予選を通過できないという心配はありませんからね」

再びのセッティング変更

Q1予選はA、Bの二組に分かれ、A組で走行した井口選手のタイムは14台中4番手のタイムを記録。上位8台までがQ2に進出できるので、予定通り問題なくQ1を突破した。が、井口選手からは「ブレーキや中速コーナーは良いが、高速コーナーでアンダーが強くなったので、元のセットの方がトータル的にタイムを出しやすい」というコメント。

そこで、Q2に向けては朝の公式練習の時と同じセットに戻すことにした。公式練習ではトップタイムを記録しているし、Q2予選はニュータイヤであり、燃料も予選分しか搭載していないから、よりタイムを伸ばすことが期待された。

渋谷総監督は「1分17秒台には入ると予想していました。コースレコードにあと0.3、0.4秒といったあたりまでは行けるのではないかと思っていました」

山内選手「コースインして少し走っただけで、フロントのグリップ感がすごくしっかりあって、朝とはまるで違う手応えでした。だから2周使ってタイヤを温めてタイムアタックしたのですが、1分16秒台になるとは自分でもびっくりしました」

山内英輝選手はコースレコードを2シーズンぶりに塗り替える1分16秒847を叩き出した。

そうした流れの中、渋谷総監督は「16秒台は我々も想像してなくて、驚きました。フロントスポイラーの変更にともなう若干の仕様変更と課題だったタイヤのマッチングが決まった結果だと思います。それと、やはりドライバーが120%の力を出したというのが大きいでしょうね」

こうして土曜日の予選ではポールポジションを獲得でき、昨年の完全優勝がデジャブのように再現できるのではないかと期待が膨らんだ。

精密機械BRZ GT300

日曜の天気予報は雨だが、降り出し予測はどんどん午後の遅い時間へとずれていく。BRZ GT300はウェット仕様に変更してグリッドに並んだ。ただし路面はドライなのでスリックタイヤを装着している。もちろん、この時の状況は全車スリックを装着している。

ではウェット仕様とはどんな仕様なのだろうか。今回セットしたのは前述のように車高とリヤウングだけの変更だ。車高を上げるのはプッシュロッドにあるシャフトを回転させて調整するが、0.5mmずつ車高が上がる。1mm以下での車高の変化は肉眼では見分けられない。そしてウイングの角度も同様に0.5度の単位で少しずつ角度を変えている。このとき、何mm車高を上げたのかは極秘だ。だが最大でも5mmが上限だから、変化の度合いは想像できよう。

こうした数値の変化によりセットアップが変更されているが、わずか0.5mm車高が違うだけでマシンの挙動変化があるわけで、それを感じるドライバーも凄いが、それだけBRZ GT300は精密機械であるという証拠でもあるわけだ。

ドライのスピードを活かしたい

グリッドに整列した全車は多くのファンや関係者と記念写真を撮るなど、コース上は混雑しているが天候は徐々に悪くなっていく。ときどき降る霧雨が紛らわしく、レインタイヤへの決断を迷わせる。降ったり、晴れたり。だが、コース上は一貫してドライのままだ。

スタート5分前までに全ての作業は終了しないといけないが、そのとき、チームには雨の降り出しは「午後4時」という情報だ。決勝は午後2時スタート。予報どおりであれば、最初のスティントはドライのはずだ。ドライであれば昨日コースレコードを出している山内選手に可能な限り逃げてもらい、雨のタイミング、ないし、ルーティンのピットインのタイミングまでスリックタイヤで走りたいというのが本音だ。

この判断はGT500の17号車、BSユーザーのケイヒンNSXも同様だった。ポールポジションを捨ててまでレインタイヤにする判断が難しかった。ただ、GT500もGT300もウェットだとブリヂストンタイヤが優位という噂もある。確かに、判断を迷うようなこの状況下で、他のブリヂストン装着車は迷うことなくレインタイヤに変更していた。それはGT300もGT500も同様の判断をしている。つまり逆転するためのレイン選択という見方ができる。そして、結果から判断すればスリック選択を判断ミスとする意見もあるのは事実だ。

ヨコハマタイヤ勢は判断が分かれていたが、ヨコハマのエース4号車グッドスマイル初音ミクのメルセデスGT3 AMGはレインを選択していた。また、GT500で初優勝した3号車クラフトスポーツ モチュールGT-Rの平手晃平選手はスタート直前「僕はSUGOの天気はよくわかってます」とレインをアドバイスしたと語っているように、微妙な判断が要求されていたのは間違いない。

結局BRZ GT300は、スリックを選択したまま決勝レースがスタートするが、非情にもスタート5分前を過ぎた時点で、霧雨が濃くなっていった。それでもドライ路面ではあったが、次第に濡れていく。セーフティーカーの先導によるフォーメーションラップから、ローリングスタートになり、3ラップする頃には、完全なウエットコンディションへと変化してしまったのだ。

非常に難しい選択を迫られたわけだが、チームとしては山内選手のコースレコードというスピードを活かす戦略を取ったという見方で間違いないだろう。

度重なるトラブル

一方、ドライバー交代で井口選手に交代するが、今度はエンジンのレスポンスが悪いという無線が入る。しかも、単独スピンを喫するなど、マシンに異常が発生していることが伝わってくる。渋谷総監督は危険と判断し、井口選手をピットに入れ点検することを決断する。

がしかし、異常が特定できない。そのため、62周を走行していたこの時点で終了とした。このエンジンレスポンスが悪い件は、現状原因不明で、電制スロットルは問題なく反応しているという。そうなるとタービン系で過給に問題がある、あるいはインジェクターに問題がある、などハード部品に広げて調べることになった。

追記レポート:前戦のオートポリスでのミッショントラブルは、圧力センサーの不具合が原因と判明した。BRZ GT300はヒューランド製のシーケンシャル・ドグ・ミッションを搭載しているが、シフトチェンジの際エア圧力を利用してドグを噛ませている。その圧力が正常に働いていないという信号を受信したためフェールセーフ機能が働き、ミッションが4速でスティックしてしまったというのが原因だ。

チームは部品の不良だったとはいえ、同じトラブルを出さないためにも、このフェールセーフ機能をカットしたタイプをSUGOのレースに搭載している。万が一同様の不具合が発生した場合でも、クラッチペダルを踏めばシフトチェンジは可能となるため、戦闘力は落ちるが戦うことはできるという対処に変更していた。

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