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聞き飽きないV型12気筒 フェラーリ250 GTE モータースポーツを支えた2+2 前編

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聞き飽きないV型12気筒 フェラーリ250 GTE モータースポーツを支えた2+2 前編

公道用モデルで得た利益が頼り

1950年代から1960年代にモータースポーツで大成功を勝ち取った、スクーデリア・フェラーリ。かといって、有り余る予算が手元にあったわけではなかった。

【画像】FRで2+2のフェラーリ 250 GTE GTC4ルッソと現行のローマも 全70枚

才能に長けたエンジニア、マウロ・フォルギエリ氏は、技術面だけでなく経営的にも革新的な取り組みに力を注いだ結果だったと、言葉を残している。華々しい活躍の陰に、沢山の見えない努力が存在したのだろう。

その頃にフェラーリで活躍したドライバーの1人が、フィル・ヒル氏。1961年のF1で総合優勝を果たしているが、チームから得た報酬は思い出すことができないと、後年に語っている。

実際、金額は大きなものではなかった。フェラーリのステアリングホイールを握る理由は、お金のためではなく、名誉のためだった。

現在は、トップレベルのモータースポーツにコマーシャル・スポンサーが付くのが当たり前になったが、当時は活動資金を自ら獲得する必要があった。トップレベルのチームであっても。

レーシング・コンストラクターだったBRM(ブリティッシュ・レーシング・モータース)の裏には、英国の大手機械メーカー、ルベリー・オーエン社が付いていた。フェラーリにそんなパトロンは存在せず、公道用モデルの販売で得た利益が頼りだった。

フロントにV12を搭載した2+2の原型

1960年代初頭、フェラーリのモータースポーツ活動に貢献したのが、グランドツアラーの250 GTEだ。1960年から1963年の間に5台のプロトタイプと、949台の市販モデルが生産されている。当時、同社が販売した公道用モデルの7割を占めていた。

また250 GTEには、シリーズ1からシリーズ3までが存在する。それ以外にも改良が細かく加えられており、明確なシリーズわけは少々難しいことも事実ではある。

1948年のトリノ・モーターショーでは、カロッツェリアのトゥーリング社がボディを手掛けた、166クーペが出展されている。これも2+2のフェラーリではあったが、ピニンファリーナ社による妖艶なボディを得た250 GTEのように、量産されたわけではない。

まだ誕生から日が浅かったフェラーリにとって、本格的な量産へ1歩を踏み出すことになったのが、この250 GTE。フロントにV型12気筒エンジンを搭載した2+2ベルリネッタ(クーペ)として、ブランドの原型にもなった。

いわば、フェラーリ・フォーフォーやGTC4ルッソの祖先といえる。新しいローマも2+2レイアウトではあるが、こちらはダウンサイジングし、V8ツインターボ・エンジンを載せている。

エンツォ・フェラーリ氏自身も、自らの移動手段として250 GTEに乗っていた。メキシコのレーシングドライバー、ペドロ・ロドリゲス氏とリカルド・ロドリゲス氏の兄弟もオーナーだった。ミニで有名な技術者、アレックス・モールトン氏も。

フェラーリ・レプリカを作るベース車両に

当時の自動車雑誌は、「素晴らしく輝かしいツーリングカー」だと250 GTEを評価した。ところが生産終了からしばらく経つと、取り引き価格は急落してしまう。

よりエキゾチックなフェラーリ・レプリカを作るベースとして、刻まれる例も少なくなかった。約2割は、その素材になったようだ。

一方で、熱心なフェラーリ・ファンの心を掴んでいたことも事実。近年は価値も充分以上に見直され、もはやレプリカのベース車両になる心配はないだろう。

英国でフェラーリの第一人者として知られるのが、ボブ・ホートン氏。取材へお邪魔した日、彼の自宅があるコッツウォルズには、2日間のクラブ・ツアーイベントに15台のクラシック・フェラーリが集っていた。

250 GTEは、シリーズ1が8台で、シリーズ2が2台、シリーズ3が3台揃った。さらに、エンジン違いでシャシーを共有した、250 GTEのアップデート版といえる330 アメリカも2台が来ていた。すべて、今でも威勢よく公道を走れる状態が保たれている。

1983年に、英国編集部が1度取材したクルマも含まれていた。右ハンドルのシリーズ1、3 DPXのナンバーを付けた250 GTEだ。記事では、グッドウッド・サーキットでアストン マーティンDB4と比較され、実用的で扱いやすいとまとめられている。

その当時は、新車のフォード・シエラと同等の価格で購入できたとも書かれている。驚くことに。

コレクションのきっかけとなった250 GTE

今回のホスト役となったのは、幼い頃からフェラーリに囲まれて育ってきた、スージー・ピルキントン氏。彼女の父親、スティーブン・ピルキントン氏は英国きってのコレクターで、これまで100台以上のフェラーリを所有してきた。

1962年のツール・ド・フランスで優勝を逃した、250 GTOも過去には手元にあった。レーシングドライバーのルシアン・ビアンキ氏が、ゴール手前で牛乳を運搬するトラックに衝突し、惜しくもリタイアしたクルマだ。

スティーブンは、そのフェラーリを21年間所有した後、手放している。それ以前には、250 LMもコレクションしていた。

長男のリチャード・ピルキントン氏が誕生した1971年には、250 GT SWBを購入。赤ちゃんを運ぶかごをシートの後ろに載せて、運転していたという。

スージーも、生まれた頃からフェラーリと一緒だった。1991年の大学入学前には、250 GT SWB カリフォルニア・スパイダーの古い塗装を剥がす作業を手伝い、お小遣い稼ぎをしたらしい。

スティーブンにとって、フェラーリのコレクションを始めるきっかけとなったのが、250 GTE。1970年に8年落ちのクルマを購入したことだった。シャシー番号は3883GTで、V12エンジンは白煙をあげ、フロアは思い切り錆びていたという。

しかし、レストアを経て現在はすっかり快調。スージーとリチャードが乗り継いでいる。

この続きは後編にて。

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