音楽や音声データを聞く記録媒体がカセットテープやCDといった形のあるものから、USBメモリやスマホとの接続というデータに移行して久しい。そのため、最近の新車にはオプションでもCDすら付けられないということも珍しくない。しかし、そんな現代でも「クルマで思い出の詰まったカセットテープやMDを聴きたい」という人も少なからずいるだろう。ここではカーオーディオの移り変わりを振り返るとともに、今新品で変えるカセットテープやMDを聴けるカーオーディオはあるのか? も調べてみた。
文/永田恵一、写真/AdobeStoc(トビラ写真:leonardo2011@AdobeStoc)、日産、ホンダ、MAX WIN
令和の時代にカセットやCDにMDを車内で聞くことはできるのか?「カーオーディオ」千夜一夜物語
■カーオーディオの移り変わり~カセットテープから
かつてのカーオーディオのメイン媒体だったカセットテープ。まだまだ所持している人もいるのでは?(Oleksandr@AdobeStoc)
カセットテープは1962年にオランダのフィリップス社が開発したオーディオ用磁気記録テープ媒体である。カセットテープの登場は小型かつ再生は容易、録音も手軽と、当時としては画期的だった。
しかし、アナログなものだけに録音には音源そのものの時間がかかったり、1本のカセットテープではそのまま録音するか上書きするかしかできないので編集に時間がかかったり、選曲に時間がかかる。また、テープが絡んだり切れたりすることがあると、現代のデジタル記憶媒体に比べると非常に不便な面も否めなかった。
それでも、音質はレコードのような暖かみのあるもので、その点には捨てがたい魅力があるのも事実だ。
また、勘で巻き戻しや早送りをしたのも懐かしいカセットテープだが、カーオーディオを含めハードウェア側では不便を減らすため、曲と曲の間に数秒の無音部分を作ると曲の頭出しができる機能や、A面とB面を自動で入れ替えできるオートリバースといった機能も採用されていた。
1985年にFMCされて登場した7代目のR31スカイラインには5連カセットチェンジャーがセンターコンソール部分にオプション設定できるようになっていた
さらに、1985年登場の7代目スカイライン(R31型)には、当時はまだCDが普及しておらず、カセットテープに力が入っていた時代だったのもあってか、5連カセットチェンジャーというものも設定されていた。
■50連奏まで登場したCD(コンパクトディスク)
光ディスクとなるCD(コンパクトディスク)はソニーとフィリップスとの共同開発により、1982年に登場。車載用のCDプレーヤーを初めて装備したのは「いつかはクラウン」のキャッチコピーがいまだに記憶に残る、1983年登場の7代目クラウンだった。
CDはデジタル音源化による耐久性の劇的な向上やクリアな音質、ボタンひとつで一発選曲が可能な点など、自動車用に使うオーディオとしても多くのメリットを備えていた。
また、元号が平成に変わった1989年あたりになると6連奏、10連奏、さらには50連奏といったCDチェンジャー(トランクなどラゲッジスペースに置くことが多かった)や、トヨタのスーパーライブサウンドシステムやBOSEといったプレミアムオーディオも登場し始めた。
■コンパクトながらCD並みの音質だったMD(ミニディスク)
MDは2DIN規格のオーディオでCDと併設されている場合も多かった
MD(ミニディスク)は1992年に製品化された光ディスクとなる記憶媒体である。カセットテープの後継的存在だったMDはCDに近い音質に加え、文字入力や音源の分割といった多彩な編集機能も備える画期的なものだった。
なお、車載用MDを初めて搭載したのは1993年登場の9代目スカイライン(R33型)だった。
MDは1990年代中盤あたりから普及が始まり、カーオーディオでもアフターマーケット品から商品が増えはじめ、純正品でも2DINのCD+MDを目にするようになった。また、日産車やホンダ車では1DINのCD+MDというものもあり、高価ながらMDチェンジャーというものも登場した。
しかし、MDは2000年代に入ってパソコンからCDを編集できるCD-Rが登場したことより、MDにも捨てがたいところもあったものの、2000年代中盤あたりから衰退し始める。
そして2010年代に入ると、クルマで音楽を聴く際の記憶メディアはUSBメモリや携帯音楽プレーヤーとの接続という形が台頭。現在は車載モニターとスマホとの接続で音楽を聴くだけでなく、カーナビとしても使えるなど、スマホがあれば車内でさまざまなことができる時代となった。
■現在新品が買えるカセット、MDデッキはあるのか?
MAX WINの1DINSP005(実勢価格1万5000~1万7000円)。カセットテープの再生と録画可能だ
カーオーディオにおいてCDはCD-Rなどを使う人がそれなりにいるのもあり、標準装備される新車はまだあり、アフターマーケット品もそれなりにラインナップされている。
しかし、カセットテープとMDが聴けるアフターマーケット品はめっきり聞かなくなり、新品で買えるものがあるのかどうか調べてみた(その前にアフターマーケット品を付けるクルマのオーディオが最近減っているDIN規格なのかという前提もあるが)。
まず、カセットテープはMAX WINの1DINSP005(実勢価格1万5000~1万7000円)という商品がある。
この商品はカセットテープ+ラジオ(FMでAM放送を聴けるワイドFMにも対応!)に加え、スピーカーがないクルマでも使えるよう、本体にスピーカーも内蔵する。
さらにブルートゥースによるスマホとの接続、USBメモリやマイクロSDカードに対応するのに加え、カセットテープのデータをRECボタンひとつでUSBメモリやマイクロSDカードに変換して保存可能という、「アナログそうなのに現代的な機能も持つ」という二面性を備えている。
MDを聴ける新品カーオーディオは残念ながら見つからなかった。そのため、クルマでMDを聴きたい場合は手持ちのものを直しながら使うか、中古品を探すという手しかなさそうだ。
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みんなのコメント
頑張ってLDも買ったけど賞味期間短かったなぁ
旧車のりの人とかが使うのかな?