この記事をまとめると
■「クロスオーバー」という言葉は、2つの異なるカテゴリーが混じることを指す
見た目は「なんちゃって」でも中身は「本格派」って最高! 悪路ドンと来いな「細マッチョ」的クロスオーバーSUV4選
■クロスオーバー自体にはSUVという意味合いはない
■今後もクルマの新しいスタイルのクルマが生まれるだろう
「クロスオーバー」と「SUV」は意味が異なる
衝撃的なフルモデルチェンジを発表した、トヨタ・クラウン。4つのバリエーションを展開するということだが、まずは「クラウン クロスオーバー」からローンチされた。しかし、残りのバリエーションには「クラウン エステート」という、典型的なSUVスタイルも用意されている。
クロスオーバーといえばSUVのことだと認識しているユーザーからすると、クロスオーバーとエステートの違いは? クロスオーバーとSUVって違うの? と頭のなかが疑問符だらけになってしまうだろう。
というわけで、結論からいうとクロスオーバーとSUVというのは異なる概念であり、クロスオーバー=SUVというのは間違った認識といえる。ここではクロスオーバー=SUVと認知されるようになった背景について整理してみよう。
そもそも「SUV」というのは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略称である。その元祖的モデルとして、国産車でいえばトヨタ・ハイラックスサーフが挙げられる。
ハイラックスというピックアップトラックの荷台にFRPの架装をつけるというカスタマイズに祖を持つハイラックスサーフは、ピックアップトラックの荷台をキャビンにした、乗用仕立てのモデルだ。これがSUVの始まりといえる。
ランドクルーザーのようなクロスカントリー4WDはハードコアな走破性を追求したモデルだが、それとは異なる流れから生まれたハイラックスサーフのようなレジャーメインのモデルをSUVと呼ぶようになった。それが1980年代だった。
それでも初期のハイラックスサーフはラダーフレーム構造であり、乗り心地などはトラック的な部分もあった。
※写真はイメージ
そこで、さらにライトな感覚で乗れるようにと生まれた、さらなる進化形が乗用車のプラットフォームをベースにしたモデルで、トヨタでいえばRAV4がルーツとなる。RAV4の登場時にはライトクロカンといった呼び方もされていたが、そのライバルとしてホンダCR-Vが登場、さらにトヨタからアーバンスタイルのハリアー(海外名:レクサスRX)が誕生したころには、そうしたモデルを「クロスオーバーSUV」と呼ぶようになっていった。
本来の意味でいえば、クロスオーバーというのは異なる要素が混じり合うことを意味している。この頃、使われていた「クロスオーバーSUV」というのは乗用車とSUVの要素が混じり合ったクルマという意味だった。つまり、クロスオーバー自体にはSUVという意味合いはなく、クロスオーバーSUVという言葉からSUVが省略されることで、クロスオーバー=SUVという風に広まっていったといえる。
たまたま、最初にクロスオーバーという言葉が広まったときに乗用車+SUVという組み合わせだっただけともいえる。クロスオーバーという言葉を、異なるジャンルを掛け合わせるという本来の意味で捉えれば、あらゆる組み合わせがあり得るのだ。
今後もクルマの新しいスタイルのクルマが生まれるだろう
実際、クラウン クロスオーバーのコンセプトはリフトアップセダンというものである。確かに、ボディ形状は4ドアクーペ的にも見える。SUVの要素も含まれているが、複数のカテゴリーの特徴が、複雑に絡みあっている。乗用車のアーキテクチャーを使ったSUVという従来のクロスオーバーという言葉が持つイメージを、完全に新しくしようというチャレンジングな一台といえる。
一方で、クラウン エステートは、トヨタでいえば北米市場向けモデルの「ハイランダー」にも似たシルエットの、クロスオーバーSUVとなっているように見える。
おそらくトヨタはクラウンに2種類のクロスオーバーSUVを用意するつもりはさらさらないだろう。クラウン クロスオーバーは新ジャンルの創出であり、クラウン エステートはクロスオーバーSUVのユーティリティ能力を高めたイメージのモデルと捉えるべきだ。
これはトヨタに限った話ではない。
間もなく電気自動車が主流の時代になると言われることも多いが、電気自動車というのは床下に巨大なバッテリーパックを搭載するレイアウトになりがちだ。床下スペースに余裕を持たせようと思うと、ボディスタイルにかかわらずリフトアップ気味なシルエットにした方が有利なのは言うまでもないだろう。
リフトアップしたスポーツカー、のような従来の常識では考えられなかったようなパッケージングの電気自動車も登場してくるだろう。そうした次世代の電動車両を理解する上でも、クロスオーバーという言葉の本来の意味を再確認しておくことは大切だ。
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