「進化」が基本のモデルチェンジで、あえて原点に回帰! 進化とともに変化したコンセプトをを踏襲せず、原点に立ち戻ったモデルとその背景とは?
何代にも渡ってモデルチェンジを重ねていく車は、時代の要請や“進化”が求められることからサイズやエンジンが大型化してゆくのが常。ふと立ち止まってみると、その車種が誕生した“あの頃”とは、ずいぶんと違ったクルマになっていることも多い。
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一方で、全体で見ると少数派ながら、デザイン的な方向性やダウンサイズなどで原点回帰し、モデルチェンジを果たすモデルもある。間もなく登場する新型フィットやヤリスも、そのひとつに数えられるかもしれない。
原点回帰した車と、その背景にはどのような「事情」があるのか?
文:松田秀士
写真:HONDA、編集部
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新型フィットは「外見より総合力で原点回帰!?」
2020年2月14日発売の新型フィット。現行型のスポーティなデザインから一転、初代・2代目に近いデザインとなったが、実は“中身”の充実ぶりこそ原点回帰といえるようだ
新型フィットは、見た瞬間に「あれっ? 可愛い」というエクステリアデザイン。それ自体を原点回帰というかは意見がわかれるところだろう。というのも、初代のエクステリアも発売された当時はなかなか斬新なデザインだったからだ。
今となっては現行モデルに比べて大人し目に映る。といってもフィットは室内パッケージを最大限維持し、走りとデザインはスポーティに進化してきた成長過程があり、結果、女性層に抵抗感が増えてきているというホンダの分析があったからだ。
使いやすく広い室内空間をデザインすればサスペンションレイアウトに縛りが及ぶ。サスペンションストロークにこだわらず、より固めてカッチリした足にすればスポーティな応答感があるという考え方もある。
すると、ドライバーは気持ち良いが同乗者には厳しい。一人乗りなら良いが、景気動向でミドルクラスからダウンサイジングした中高年層には耐えることを強いられていた。と、筆者は分析する。
しかし、次々とその傾向でライバルに脅かされ始めている。このままではいけないと気付いたのでは? 年齢を問わずユニセックスなデザイン、そして見合うような乗り心地の達成。それが新型の柴犬的デザインと「心地よさ」に繋がる乗り心地として具現化されたのだと思うのだ。
室内はこれまでと同じレベルの広さ。さらにストロークのあるサスペンションがもたらすゆとりの乗り心地。タイヤが路面の凸凹に追従するのでハンドリングも安定している。
室内静粛性の高さ。中低速で駆動のメインとなる電気モーターの力強さ。発電するエンジンはちょうど良い回転数を場面に応じてコントロール。
初代フィットのあの時代、やっぱりさまざまな部分でライバルを圧倒していたなぁと振り返ると、新型は確かに原点回帰しているように見える。
ロードスターは「原点回帰をテーマに開発された象徴的モデル」
2015年発売の現行型ロードスター。2Lを搭載した先代モデルに対して、歴代最小の1.5Lエンジンを搭載。ボディサイズも小型化し、原点回帰で開発された
ロードスターほど「原点回帰」というテーマに即し開発されたモデルもないだろう。
初代・ユーノスロードスター(NA型)のデビューは1989年。軽量コンパクトで身の丈サイズな2座席オープンスポーツカー。車重は960kg前後ととても軽量で、1600ccのエンジンは当時のファミリアに搭載されていたエンジンを縦置きに変更し、さらにチューンアップして搭載した。
2代目(NB型)の登場が1998年。さらに3代目(NC型)が2005年。時代を追うごとに1800cc、2000ccへと排気量とパワーを追いかけ、車重も1000kgを超え、NC型では3ナンバーサイズになっていた。
ただし、NC型では基本プラットフォームをRX-8と共通とし、パワーに対応する車体ベースの進化により1000kgを超える車重へとプチマッスル化していた。
ドライビングでも自転車のような身軽さから原動機を付けたスクーターに乗り換えるような、ちょっとしたプレッシャーを感じていたのだ。
そこで現行型(ND型)では原点回帰。1.5Lエンジンを搭載し、ボディは徹底的にダイエットを施し990kg。フロントオーバーハングを極端に詰めて全長は3915mmというコンパクト。
それでもフロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク、ステアリングラック前引き式と歴代のメカニズムを踏襲。その走りはまさに人馬一体。
いたずらにコーナリングスピードを追いかけず、まるで人がコーナリングしているかのような自然で一体感のあるハンドリングが楽しめる。そう、マツダも何か違うと感じていたのだ。
つまり、ロードスターはしっかりと足元を見つめて原点回帰していたのだ。
新型ヤリスは「原点回帰のなかに中身を充実」
2020年2月10日発売の新型ヤリス。日本での車名こそヴィッツから変更されるものの、初代モデルに通じる上質なコンパクトカーへと回帰を果たす
新型ヤリスも原点回帰した1台だ。
初代のデビューは1999年。当初は4気筒1.0L、全長3610×全幅1660全高1500mm。このようなコンパクトカーが“リッターカー”と呼ばれた時代。いわゆるひとつ上のファミリーカーを脅かし始めた頃。
スーパーへの買い物や子供の送り迎え、祖父母の病院通い。少人数でのしかも短距離での移動がほとんど。さらに燃費が良くリーズナブル。となると、こんなリッターカーで充分。
ということで他社も続々参入。すると、競争力をつけるために差別化が必要になり、エンジンを排気量アップやターボでパワーアップ。
もともと軽自動車に毛が生えたようなサイズだったから、モデルチェンジの度にそのラグジュアリー度はエスカレートしてゆく。
グローバルモデルでもあったことから現行モデルのヴィッツでは5ナンバーギリギリのサイズにまで成長していたのだ。
サスペンションフィールもプラットフォームの割に車重が増えたことでハード化。乗り心地もロードホールディング(=タイヤの路面追従性)もある程度捨てなければならなかった。
そこで新型はしっかりとそのことを反省。全長は3940mmと+10mmだが全幅は1695mmと踏襲。そのパッケージの中でスペースを含め前席の使い勝手をより向上。
乗り心地もサスペンションの動きを一から見直し、ストローク感のあるしなやかなフィールに進化。特に市街地実用速度域での乗り心地に焦点を絞っている。
また、ハイブリッドモデルをラインナップすることでエコ性能も強化。原点回帰の中にしっかりと中身を充実させている。
レヴォーグは「レガシィの原点回帰版として登場」
4代目レガシィツーリングワゴン(左)とレヴォーグ。レガシィが北米中心の商品企画になったことで原点回帰の意味で国内投入されたのがレヴォーグである
レガシィはインプレッサとともにスバルの基幹車種である。
特にレガシィツーリングワゴンでは、バックドアを持つクルマの車体剛性を徹底的に見直し進化してゆく。
例えば、段ボール箱。蓋を開けるとそれまでの支えを失って潰れてしまう。ワゴンはこの段ボールに似ていて、バックドア開口部が剛性面でのネックとなるのだ。その部分をしっかり強化して走りが楽しいツーリングワゴンとして名を馳せた。
しかし、北米での人気沸騰など、モデルチェンジの度に米国を見据えたサイズへと変化。走りの楽しさよりも大人5人がゆったりと快適に移動できるラグジュアリーなモデルへと進化。
気が付けば、スバリストを唸らせたコンパクトで本格的なハンドリングをも持ち合わせたツーリングワゴンとは程遠くなっていたのだ。
そこで原点回帰として登場したのがレヴォーグだ。
全長&ホイールベースともに5代目レガシィツーリングワゴンより100mmも短縮。ハードなサスペンションによってコンパクトでスポーティなハンドリングを達成。
初期モデルは乗り心地も硬かったが、マイナーチェンジごとに柔軟性の高い仕様へと進化。適度に柔らかくなったサスペンションがより奥の深いハンドリングを実現している。
また、「アイサイト」も当時のスバル最新レベルのツーリングアシストへと進化している。
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みんなのコメント
フイットは原点回帰の「これだよね」ということでいいと思ってます。