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登場から10年、日産エルグランドの存在意義とは?

掲載 更新 30
登場から10年、日産エルグランドの存在意義とは?

現行、日産「エルグランド」に久しぶりに試乗した。登場から大分経っているのは知っていたが、調べると、なんと2010年の登場だった。“10年選手”である。

振り返ると、1997年に登場した初代エルグランドは、高い快適性と走行性能を有し、大きな人気を集めた。

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【主要諸元(350ハイウェイスター プレミアム アーバン クローム)】全長×全幅×全高:4975×1850×1815mm、ホイールベース3000mm、車両重量2040kg、乗車定員7名、エンジン3498ccV型6気筒DOHC(280ps/6400rpm、344Nm/4400rpm)、トランスミッションCVT、駆動方式FWD、タイヤサイズ225/55R18、価格575万5200円(OP含まず)。とくにエクステリア・デザインは特徴的だった。パーソナル性を強調するため、前席の存在感を強くしたのだ。Bピラーを太くすると同時に前傾させた。かつ、リアクオーターウィンドウ面積をうんと大きくした。

このスタイリング手法は(ミニバンながら)、1950年代のポンティアック「スターチーフ」や、フォード「カントリースクワイヤ」など、アメリカのスタイリッシュなワゴンを連想させて好ましかった。

タイヤサイズは225/55R18。初代と、2002年に登場した2代目は後輪駆動である。足まわりなどに粗っぽいところもあったけれど、「ミニバンだって運転は楽しいほうがいいでしょう?」という開発陣の考えが明白にあらわれているようなキャラクターに好感がもてた。

2010年登場の現行モデルより駆動方式は前輪駆動になった。ただし、エンジンを低くし、かつ燃料タンクを薄型化して床下へレイアウトした結果、低重心とロー&ワイドなプロポーションを実現したという。公式ウェブサイトには「重心の低さと迫力のある低く構えたスタイルで、空力特性も向上。横風を受けてもふらつきにくく、気持ちいいほどに力強くまっ直ぐとした、優雅で安定感のあるクルージングを楽しめる」と、記されている。

はたして、その言葉の真相はいかに? 今回、東京~福島間の高速道路、ワインディング・ロードなどをドライブしたのでリポートする。

カーブを曲がるのはそれなりに楽しい試乗したグレードは「350ハイウェイスター プレミアムアーバン クローム」。3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載する、トップグレードである。豊富な装備が特徴だ。

エンジンは3.5リッターV型6気筒のほか、2.5リッター直列4気筒も選べる。搭載するエンジンは3498ccV型6気筒DOHC(280ps/6400rpm、344Nm/4400rpm)。トランスミッションは6速マニュアルモード付きCVT。装備をざっとあげると、アラウンドビューモニター(360°カメラ)、本革と木目調パネルを組み合わせたステアリング・ホイール、後席エンターテインメントシステム、レザーシート、専用デザインの18インチホイールなど。

リア・ドアは電動開閉タイプのスライド式である。動きはスムーズで、スピードも適切。とくに閉まり方がやさしく、ていねいだ。初代より、電動開閉タイプのスライド式ドアを設定しているだけのことはある。

サイドシルも太すぎず、乗り降りしやすいよう気遣いがされている。3代目になって前輪駆動化されると同時に低床化がはかられたが、たしかに床は低い。ライバルのトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」に比べ圧倒的に乗り降りは楽だ。

2列目シートはスライド&リクライニング機構のほか、シートバック中折れ機構、オットマン、角度調整式アームレスト付き。リアシート用エンターテインメントシステムは標準。ツインサンルーフはオプション。3列目シートはセンターアームレスト付き。3列目シートのバックレストはラゲッジルームから倒せる。シート・クッションもからだへの密着度が高い。わりとソフトで、個人的には好ましい座り心地である。ソフトだけれど、いわゆる”コシ”もあって、長い時間座っていても、疲れ知らずだった。

10年選手ではあるものの、意外なほどつくりはしっかりしていた。ハンドルを握っても、それほど古さを感じなかった。

JC08モード燃費は9.4km/L。メーターはアナログ。インフォメーションディスプレイはカラータイプ。オーディオおよび運転支援関係のスウィッチ付きステアリング・ホイール。とくに操縦性でキャラクターがたっている。重めの操舵感にくわえ、足まわりの設定は意外なほどロールを抑えたもの。全長4975mm、全高1815mmのボディながらロールをよくチェックしている。カーブを曲がるのがなかなか楽しかったのは予想外の発見だった。

搭載する3498ccV型6気筒エンジンは、最高出力206kW(280ps)と最大トルク344Nmを発揮する。最大トルクを4400rpmで発生する設定ではあるものの、低回転域から力がしっかり出る。とはいえ、いまのガソリン・エンジンの主流は“ダウンサイジング化”。もしエルグランドの最新版が開発されるとしたら、2.0リッター直列4気筒ターボで充分かもしれない。しかし、3.5リッターV型6気筒エンジンの、ちょっと昔っぽい回転マナーが悪いとは思わない。大排気量エンジンの力強くまわる雰囲気は個人的に好ましい。

多くのミニバンは、運転者より同乗者を重視した仕上がりだけれども、エルグランドは運転者も重視して開発されたように思う。初代からのDNAというのか、日産のクルマづくりのポリシーというのか、筋が通ったクルマづくりである。

エルグランドの個性は今後どうなるのか?10年選手だけに、気になる点はいくつかある。ひとつは、高速道路で速度が上がるとともに、ステアリングの接地感が失われてくるのには、ちょっと困った。けっして非現実的な速度域ではない。風のせいでフロントが浮いてくるのだろう。発表から10年たっているとしても、いまからでも対策してほしいと思う部分だ。

ダッシュボードは数多くのスウィッチがならぶ。フロントシートは電動調整式。BOSEのサウンド・システム(13スピーカー)はオプション。もうひとつ時代を感じさせるのは、ダッシュボードのデザインと、コネクティビティ技術の性能&使い勝手。パネルは、まさに“ボタンとダイヤルの見本市”、とも言うべきだろうか、いまどき珍しいほど多くの操作用つまみが配置されている。夜走っていると、ラジオの選曲などで苦労した。慣れの問題かもしれないが、やはり最新モデルにくらべると操作性は芳しくない。

エルグランドを試乗した印象としては、競合車に対し、ブランドの立ち位置を明確にさせようと開発陣が骨を折ったことが伝わってきた。とくに走りの部分は最大のライバルである「アルファード/ヴェルファイア」とは明確に異なる。10年選手ではあるものの、色褪せているとは思わない。

いまの日産車に求めたいのは、トヨタやホンダとはよりはっきりと一線を画したキャラクターだ。それを欲しいひとがエルグランドを買うのだろう。その期待に対し日産は今後エルグランドをどうしていくのか? 気になるばかりだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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