英国アストンマーティンは2024年2月12日(現地時間)、GT3カテゴリーに参戦する進化版の「ヴァンテージGT3(Vantage GT3)」を発表した。車両価格は税抜きで57万5000ポンド(約1億960万円)に設定する。
新しいヴァンテージGT3は、2012年から2023年の11年間、52回のクラス優勝と11回の世界選手権タイトル獲得という驚異的な強さを誇ったヴァンテージGTEおよびヴァンテージGT3の後継を担うアストンマーティンのGT3マシンに位置。開発はF1をはじめとするモータースポーツ活動を担うアストンマーティン・レーシング(AMR)と、技術開発ディビジョンのアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)が初のタッグを組み、エアロダイナミクスやシャシー、4リットルV8ツインターボエンジンを始めとするパワートレインなどの改良を実施する。実際の工程では、AMPTが厳密な目標を設定し、その目標に沿った開発をAMRが行うという手順をとった。
従来比で155ps/115Nmの出力アップを果たした改良型アストンマーティン・ヴァンテージがデビュー
まず課題となったのが、旧モデルで指摘されたハンドリング面の改善。プロ・アマ両方のドライバーにとって可能な限り運転しやすいものにすることを目指し、足回りの変更やエアロダイナミクスの改善などを手がける。新世代のGT3カーは従来以上にダウンフォースに頼るため、ブレーキ時の安定性の向上は必須。旧モデルではブレーキ時にかなり沈み込みが見られたため、リアサスペンションのセットアップでピッチの制御を試みる。ただし、それだけではサスペンションが硬くなってゴツゴツとした動きになるうえ、タイヤにも過度な負担がかかるというデメリットが発生する。そこでダンパーのチューニングに集中的に取り組み、旧モデルに比べてはるかに優れたバランスを見つけ出して、サスペンションのセットアップを悪化させることなく有効なダウンフォースを発生させて、優れたハンドリング性能を実現した。
エアロダイナミクス自体は、数値流体力学を活用することでFIAのダウンフォース規制の枠内で空力特性の向上と効率性のアップを具現化。なかでもフロントセクションは、グリルのワイド化を果たして見栄えをよくするとともに、ブレーキダクトからブレーキに流す冷却用空気の量を増やして、制動性能を引き上げる。また、一体型クラムシェル形状のカーボンファイバー製フロントノーズは、クイックリリース設計によりレース中の接触などのアクシデントで損傷した際などでも素早く交換が可能。さらに、スプリッターを短く設定して圧力の中心を旧モデルより後方にずらし、ピッチ感度を下げて安定性を向上させた。加えて、フロントホイールアーチ上部に配した大型ルーバーは空気を逃してリフトを低減し、合わせてリアアーチのルーバーで高圧の空気を逃すことでドラッグを減らして、走行安定性をいっそう高める。リアウイングやディフューザーなどの造形を変更して、よりバランスのいい空気の流れを創出したこともトピックだ。
進化したヴァンテージGT3は、FIA世界耐久選手権(WEC)、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(IMSA)、ファナテックGTワールドチャレンジ、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)、ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)など、名だたるGTシリーズに参戦予定。アストンマーティンは2024年シーズンにおいて、最終的に全世界で30台ほどのヴァンテージGT3の走行を想定しているという。
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