現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【高性能PHEVワゴン対決】前編 電動化時代の高性能 三者三様のシステム 乗り味ソフトなプジョー

ここから本文です

【高性能PHEVワゴン対決】前編 電動化時代の高性能 三者三様のシステム 乗り味ソフトなプジョー

掲載 更新 5
【高性能PHEVワゴン対決】前編 電動化時代の高性能 三者三様のシステム 乗り味ソフトなプジョー

新時代のパフォーマンスカー

執筆:James Disdale(ジェイムズ・ディスデイル)

【画像】写真で見るパフォーマンスワゴン 全7枚

撮影:Luc Lacey(リュク・レイシー)

パフォーマンスカーとなると、気になるのはデータだろう。パワーやトルクの大小、加速性能を示すタイムなどを見比べて、机上で優劣を判断する材料としているのではないだろうか。

ところが、これまで長く馴染んできた内燃機関のみで走るクルマは、2030年以降新たに生まれることを禁じられてしまった。となると、各メーカーはそれに代わるものを見出さねばならない。そうして、新種の動力が続々と登場してきている。

大出力や恐るべき速さの加速タイムは、相変わらずアピールポイントであり続けている。しかし、それと同じくらい重視されるようになってきたのが、CO2排出量の少なさや、電力のみでの航続距離の長さだ。いまや、ハイパフォーマンスなプラグインハイブリッドが時代の主役になりつつある。

これに諸手を挙げて賛同しようというのがプジョーだ。速いモデルの将来的な成功は、すべてその新たなパワートレインに賭ける道を選んだのである。かつては最高レベルのホットハッチメーカーに数えられた青きライオンは、今や電動化に力を注いでいる。

そうなった理由のひとつは、もちろん変わろうとしている法的な規制にある。そしてもうひとつが、フランス国内市場に特有の税制だ。フランスでは、伝統的にハイパフォーマンスモデルの課税率が高い。スーパーマシンにとってみれば、スーパーマンの力を奪うクリプトナイトのような弱点となっている。高性能でありながら納税者たるユーザーの負担を軽減することは、商売的に不可欠なのだ。

そのクリプトナイトにインスパイアされたグリーンのロゴを、プジョーのスーパーワゴンである508SWプジョースポール・エンジニアード(PSE)が用いるのはおもしろいところだ。このPSE仕様のフラッグシップは、おそらくプジョーの歴史において、205GTi以降でもっとも重要なパフォーマンスモデルだろう。

そうはいっても、これは大柄なワゴン、もしくはセダンで、軽量コンパクトな過去の俊足ハッチバックとはカテゴリーの違うクルマだ。しかし、このスマートで高性能な大型車は、プジョーの今後のホットモデルに関する方向性を決定づけるものだといえる。

そして、その責任があまりにも重大だったので、PSEはメインストリームモデルのその他大勢に加わるのではなく、プレミアムブランドをライバル視したクルマ造りと価格設定をしている。たとえば、オーリンズの手動調整式ダンパーを備えたポールスター仕様のボルボV60や、プラグインハイブリッド版では初めて四輪駆動と室内の広いツーリングボディを選べるようになったBMW3シリーズなどに対抗するものだ。

最強のプジョーと強力なライバル

それは難しい仕事かもしれないが、プジョーの高性能モデルを手がけるPSEの名は、ドライバーの喜びを高める専用チューンのシャシーなどを備えたクルマであることを示している。むろん、プジョーの市販車では最強の360psを発生するパワートレインも重要な要素だ。

ベースとなるエンジンは200psの1.6L直4ガソリンターボで、11.5kWhのバッテリーと2基の112psを発生する電気モーターを組み合わせる。モーターのひとつはエンジンと8速ATとの間に、もうひとつはリアアクスルに配置され、四輪駆動となっている。

このPSEの出力は、BMWを上回り、しかしボルボには及ばない。V60のT8ポールスター・エンジニアードは、じつに405psを誇る。前輪は、ターボとスーパーチャージャーを装着した318psの2.0Lガソリンエンジンで、後輪は87psのモーターで、それぞれ駆動する。バッテリーは11.6kWhで、EV走行が可能な距離は55kmだ。

こうなると、330eの293psは見劣りするかもしれない。ましてやこの数字は、スポーツもしくはエクストラブーストの各モードで10秒のみ発揮できるもので、通常時のピークは253psしかない。ただし、バッテリーは12.0kWhの容量があり、少なくとも55kWhは電力走行できる。また、興味深いことに、この3台の中でちゃんとしたフルタイム4WDなのはBMWのみだ。113psのモーターは2.0L直4ターボと8速ATとの間に配置される。

スタイリングは、さほど特別感がない。プラグインハイブリッド仕様の330eとはいえ、一般的な3シリーズMスポーツと代わり映えしないのだ。その点、20インチのマルチスポークホイールとゴールドに塗られた巨大なブレーキキャリパーを装着したボルボのほうががんばりを認められる。それでも、発表年次の古さを感じさせるところもあるが。

とはいえ、どちらも508には敵わない。低く構えたスタンスや張り詰めたライン、アグレッシブなLEDヘッドライトを備えるしかめっ面は、RSバッジをつけたアウディのアバントを思わせる。低い位置には跳ね上がったカナードが設置され、ライムグリーンのアクセントはけばけばしくなく、それでも存在感を主張する。

プジョーの乗り心地は上質

それに引き換え、インテリアときたら。多くのひとびとにとっては間違った力の入れ方といえる、プジョー独自のiコックピットのダッシュボードレイアウトと派手なTFT液晶のメーターパネルは相変わらず。ここは賛否両論あるだろう。

それでも、ワゴンにとって重要事項である室内の広さや積載容量は、この3台で一番だ。装備内容も豪華なものとなっている。もっとも、BMWが備える最上級のプレミアム感と完璧なエルゴノミクスや、ボルボのクールなミニマリスト的造形やホールド性最高のシートには及ばないのだが。

EVモードで走り出すと、プジョーとBMWが元気に感じられるのに対し、ボルボの87psのモーターは2tの重量を動かすのにやや苦戦している印象だ。それでも、330eと同じく、ガソリンエンジンと電気モーターの連携はスムース。それに関してプジョーは、低速でスロットルを入れたり抜いたりしたときにうまくいかなくて、発進がギクシャクすることがある。

ただし3台とも、回生と摩擦のブレーキ移行はスムースだ。ベストはBMWだが、プジョーとボルボも僅差でこれに続く。ただし508は、エネルギ回収重視のBモードで、モーターとディスクブレーキの連携に突如として苛立たしさを感じさせられることもある。

驚くべきは、ゆったり走った際にもっともリラックスして上質なのがプジョーだということだ。もっともソフトなセッティングでは、3ウェイ式アダプティブダンパーにより、すばらしくしなやかな乗り心地を味わえる。20インチホイールに、サイドウォールがきわめて薄いミシュランを履いているとは思えないほどだ。

同じくアダプティブダンパーを装備するBMWは、プジョーより硬めの乗り心地。とくに低速域では、ブリヂストンのランフラットタイヤが、キツめの入力を受けるとインフォメーションを伝えすぎてしまう。

ボルボのデュアルフロー式オーリンズは、高価でエンジニアリング的に優れた逸品だが、荒れた舗装では落ち着きのない動きをみせる。もちろん、ダンパーの減衰力を緩めることもできるが、リアをいじるにはトロリージャッキなどで車体を持ち上げ、かなりの労力をかける必要がある。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

最近スズキのデザイン良すぎない? [新型ディザイア]のスタイルがイケすぎな件
最近スズキのデザイン良すぎない? [新型ディザイア]のスタイルがイケすぎな件
ベストカーWeb
父と同じ道を進む佐藤凛太郎「早く慣れてQ1から攻められるように」/第71回マカオGPプレビュー
父と同じ道を進む佐藤凛太郎「早く慣れてQ1から攻められるように」/第71回マカオGPプレビュー
AUTOSPORT web
EVだけは無理ない? ”300万円超え”予想の[新型ハスラー]登場か!! ガソリンモデルはどうなるの!?
EVだけは無理ない? ”300万円超え”予想の[新型ハスラー]登場か!! ガソリンモデルはどうなるの!?
ベストカーWeb
【制限速度は350km/h!】マクラーレン史上最速モデルW1が日本初お披露目!
【制限速度は350km/h!】マクラーレン史上最速モデルW1が日本初お披露目!
AUTOCAR JAPAN
クルマ買うなら[ハイブリッド]? [PHEV]? いったいどっちがいいのだろう?
クルマ買うなら[ハイブリッド]? [PHEV]? いったいどっちがいいのだろう?
ベストカーWeb
約2890名が受講した「ラリー教室」が無事に全行程終了! 最終回には新井選手が登場して校庭でデモランを披露…「開催リクエストが増えているみたいです」
約2890名が受講した「ラリー教室」が無事に全行程終了! 最終回には新井選手が登場して校庭でデモランを披露…「開催リクエストが増えているみたいです」
Auto Messe Web
TC2000王者ペーニャがプジョーで2勝目、僚友カルドゥソも選手権首位を奪還/TCR南米第9戦
TC2000王者ペーニャがプジョーで2勝目、僚友カルドゥソも選手権首位を奪還/TCR南米第9戦
AUTOSPORT web
ニュルブルクリンクを7秒超短縮! 小変更 アウディRS3へ試乗 シャシー技術を大幅アプデ
ニュルブルクリンクを7秒超短縮! 小変更 アウディRS3へ試乗 シャシー技術を大幅アプデ
AUTOCAR JAPAN
マフラーで有名な「ロッソモデロ」がなぜモータースポーツ部門を?…「全日本ラリー」「筑波タイムアタック」「eスポーツ」で次世代のクルマファンを増やしていきます
マフラーで有名な「ロッソモデロ」がなぜモータースポーツ部門を?…「全日本ラリー」「筑波タイムアタック」「eスポーツ」で次世代のクルマファンを増やしていきます
Auto Messe Web
農機のヤンマー「やけにかっこいいトラクター」を発表 部品共通化で“建機”に “船”にもできる!?
農機のヤンマー「やけにかっこいいトラクター」を発表 部品共通化で“建機”に “船”にもできる!?
乗りものニュース
絶対王者は予選ヒート時点で“7冠”達成。決勝では両日ともに初優勝者が誕生/WorldRX最終戦
絶対王者は予選ヒート時点で“7冠”達成。決勝では両日ともに初優勝者が誕生/WorldRX最終戦
AUTOSPORT web
F1レースディレクターのニールス・ヴィティヒが辞任。FIA F2などで同職を担うルイ・マルケスが後任に
F1レースディレクターのニールス・ヴィティヒが辞任。FIA F2などで同職を担うルイ・マルケスが後任に
AUTOSPORT web
EVのBMW「3シリーズ」を発見! 2026年発売の "i3" テスト走行か 先鋭的なデザイン
EVのBMW「3シリーズ」を発見! 2026年発売の "i3" テスト走行か 先鋭的なデザイン
AUTOCAR JAPAN
フロントガラスが飛び石被害はなぜ起こる? 温度差で割れることもあるので早急なリペアが大切…DIYで修理しても大丈夫?
フロントガラスが飛び石被害はなぜ起こる? 温度差で割れることもあるので早急なリペアが大切…DIYで修理しても大丈夫?
Auto Messe Web
ドゥーハンのプライベートテストにガスリーが急きょ参加。アルピーヌの思惑に憶測広がる
ドゥーハンのプライベートテストにガスリーが急きょ参加。アルピーヌの思惑に憶測広がる
AUTOSPORT web
『ジャガーXJR-8(1987年)』スピードで打倒ポルシェを果たした殊勲車【忘れがたき銘車たち】
『ジャガーXJR-8(1987年)』スピードで打倒ポルシェを果たした殊勲車【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
TOYOTA GAZOO Racingが2025年シーズンWEC参戦体制発表。不変の体制で王座防衛目指す
TOYOTA GAZOO Racingが2025年シーズンWEC参戦体制発表。不変の体制で王座防衛目指す
AUTOSPORT web
阪神高速の「約3年通行止め」大幅前倒しで再開日時決定!“垂れ下がる橋”架け替えで大動脈がついに復活
阪神高速の「約3年通行止め」大幅前倒しで再開日時決定!“垂れ下がる橋”架け替えで大動脈がついに復活
乗りものニュース

みんなのコメント

5件
  • このジャンルのワゴンは、輸入車しかないな。
  • タイヤの転がり抵抗を下げて距離を稼ぐにはホイールを細く大径にしたい。
    乗り心地を求めるにはタイヤは大きくエアクッションをたっぷりとりたい。
    でもそれは拮抗するからダンパーにしわ寄せがいく。

    悩ましいですな
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

643.4684.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

22.0540.0万円

中古車を検索
508SW (ワゴン)の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

643.4684.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

22.0540.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村