個性的なスタイルで人気を博したコンパクトSUVの2代目は、フランス車には珍しいキープコンセプトで登場した。合理的な思想と力強い走りを備え、スモールカーとしてさらに磨き込まれている。
ヒットした初代のキープコンセプト
さすがに1200kg少々という新型のルノー ルーテシアほどの軽さには収まらず1380kg(本国発表値)となったが、欧州BセグメントのFFベースのSUVにも関わらず、インテリアの豪華さは想像のナナメ上をいっていた。3連ダイヤルのバイゾーン・エアコンのスイッチなど、ところどころルーテシアと共通ながら、借り出した「インテンス」内装のトリムではマットなオレンジメタリックのソフトパッドがダッシュボードの下面からシフトコンソールにかけて張られ、ビジュアル的にもタッチの上でも包まれ感は上々。メーターパネルはフル液晶に一新され、ダッシュボード中央には縦長のタッチスクリーンが鎮座する。フランス車らしく柔らかな、それでいてモダンな表現だ。昨年のフランクフルトIAAでフルモデルチェンジが発表されて、欧州では発売されて1年近くたったが、日本にも来年前半に導入が見込まれるルノー キャプチャーの第2世代である。
初代より全長は約10cm延び、全幅は約2cm拡がり、全高は約1cm高くなって4227×1797×1576mm(本国発表値)のサイズとなったボディは、なかなか堂々としている。ルノー日産三菱アライアンスのCMF-Bという新開発プラットフォームに一新されながらも、デザインはフランス車には珍しく、キープコンセプトで進化した。Cの字を描くLEDライト一体型の前後コンビネーションランプと、サイドウィンドウ下端からCピラーに至るクローム使いなどが新しいディティールだが、それだけだ。初代がヒットしたがゆえの外観デザインという点は、ルーテシアと同様だ。ちなみにCMF-Bは日本未導入の英国生産の日産車、ジュークが初めて市販モデルに採用し、ルノーは今のところ5世代目ルーテシアとこの2世代目キャプチャーのみ。日産では新しいノート e-パワーで待望の国内投入がようやく始まるところだから、その最新ぶりが分かるだろう。
華もある、スモールSUVの優等生
走りについても、すでに新型ルーテシアの軽量&高剛性ぶりと、それらに見合わぬほどのどっしりした走り味を経験していると、地続きの安定感のようなものを確かにキャプチャーにも感じる。旧型よりも明らかに剛性感も静粛性も高く、力強い。だがTCe140という、最高出力が10psほど向上している新しい1.3リッターターボのアウトプットは、感触もルーテシアのそれと微妙に異なる。トルクの引き出し方が機敏なルーテシアのTCe130に対し、こちらはロングストロークのエンジンらしい力強さを示し、ワンテンポしてからパワーがグイと出るような、そんな性格なのだ。湿式に改められたダブルクラッチの7速EDCの、下のギアでは低めで中から上のギアでは長めというギアリングも効いている。
これは10cmほど伸びた全長のほとんどが、初代の455リッターから536リッターへと拡大された荷室容量に充てられていることと、無関係ではないだろう。スモールSUVであってもフランス車は、1年で最大の冒険である長期休暇ドライブでの満載&グランドツーリングに、焦点が合っているのだ。FFしか駆動方式を用意しないのもそういうことで、年に数度も使わない4WDシステムを1年中背負って燃費を悪化させる方が非合理的、という発想だ。
かといってハンドリングがスロー志向かといえば、そうじゃないのがルノーの凄みだ。マイルドな回頭性ながらも鈍いと思わせない舵の正確さで、足回りのストローク量もハッチバックのルーテシアより多いが、下りのワインディングでも面倒とか怖さを感じさせない。なかなか粘っこいロードホールディングなのだ。ADAS機能もレベル2ながら、レーンセンタリング機能はけっこうな積極制御で、空いている高速道路などでは頼もしく感じることすらある。そもそもミリ波レーダーやセンサーやカメラの安定作動を担保するための、フラットな乗り心地と直進安定性がBセグ離れしている。そこもルーテシア同様だ。
見かけはSUVで、インテリアは地味ハデなラウンジのようだが、乗り込むほどに、良質のスモールカーとして磨き込まれていることを再認識させてくれる。華もあるし、新しいキャプチャーはスモールSUVの優等生といえる。加えてキャプチャーには、ルーテシアにないPHEV版も本国では用意される。日本での展開を期待したいところだ。
文・南陽一浩 写真・Groupe PSA 編集・iconic
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みんなのコメント
サイズは幅1800以下で日本だと運転しやすいサイズだし運転支援も問題無し
リセールバリューは諦めて買わなきゃ駄目だろうけどw
地元市場では大衆SUVとしてこの凡庸ぶりでOKだろうが、日本ではぶっちゃけこれよりジュークの方がトガった商品として好感されそう。