ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はアルピーヌA110(2017年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2019年2月26日号に掲載した記事の再録版となります)
PHOTO/西尾タクト
テリー伊藤 念願成就!? アルピーヌA110試乗 アクセルを踏んだ瞬間青春時代が甦る!【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
■アルピーヌA110はタイムマシンだ!!
アルピーヌA110ピュア(7DCT・811万円)。アルピーヌは1955年に創設し、1970年代に初代A110でラリー世界選手権を獲得。その後ルノー傘下となり1995年に活動を休止。復活したA110は全長4205×全幅1800×全高1250mm、ホイールベース2420mmで車重1110kg(ピュア)の軽さが自慢
ついにやって来ましたこの連載に! アルピーヌA110! 乗ってみたいと思い続けて数カ月。ついにこの時がやってまいりました!
今、私は見事にリバイバルしたA110を目の前にして感動している。かつてのアルピーヌを知り尽くしている人にとっては不満もあるかもしれないが、そんな、今のカノジョの前で昔のカノジョの話をするような男はダメです!
全長4205mm、全幅1800mmの小さなボディでこれほどの存在感を発揮するスポーツカーは貴重。ルノーが成し遂げたこの素晴らしい仕事を見ていると、日産はルノーと仲よくしておかないとまずいのではないかと思えてくる。早く仲直りしてほしい。
リアフェンダーのセクシーな膨らみを見ていると泣けてくる。できれば前の丸いライトは黄色く光らせたいところだが、ダメです! それが昔のカノジョを思い出しているということ。危うく、私が最低の男になってしまうところだった。
A110はミドシップエンジンなので前と後ろにトランクがある。それがどちらも小さくて、ほぼ役に立たなさそうなのが逆にいい。
女の子と旅行に行く時には荷物を極力少なく、また、押し込めるような柔らかいバッグに詰めてくれるよう頼んだほうがいいだろう。ルーフキャリアが付けられるなら、それもまた格好いい。
ドアトリムにはトリコロールカラーの飾りがあって、これもまたいい。私は「フランス車は、車内でもフランスの雰囲気を出すべきだ」とこの連載で言い続けてきたが、やっとその願いが叶った。
もうひとつ嬉しいのがテールランプの小ささだ。これもずっと言い続けてきたことだが、テールランプは小ぶりなほど格好いい。このクルマのテールランプは私の理想に近く、A110は私の好みを知り尽くしているかのようだ。
もしかしたら、やっと時代が私に追いついてきたのかもしれない(笑)。
■若くてバカだった時代を思い出した!
走ってすぐに軽さが感じられる! エンジン音も刺激的で、楽しいことこのうえない!
内外装ともにパーフェクトな仕上がりを見せたアルピーヌA110だが、スポーツカーにとって重要な「走り」はどうか。これは期待せずにはいられない。
エンジンは4気筒の1.8Lターボで252ps/32.6kgmらしい。
私はそういうスペックには無頓着だが、撮影場所まで乗ってきた編集担当は「とにかく軽いんです!」と興奮している。私も軽いクルマは大好物なだけに、そこは大いに気になるところだ。
カードキーを助手席前の薄い穴に差し込むという独特の儀式を経て、スタートボタンを押すと思いのほか静かなエンジンが始動する。
まずはゆっくりと走り出したが、その瞬間から「軽いね!」と叫んでしまった。
最近乗ったクルマのなかではスイフトスポーツも軽さが際立っていたが、その比ではない。着座位置の低さとあいまって、クルマではない何か別の乗りものに乗っているような気分になる。
アクセルを踏み込むと、音とエンジンの回り方に驚いた。まるで昔のDOHCエンジンのような荒っぽさなのだ。ハコスカGT-Rやベレット、私は知らないが、もしかしたらトヨタ2000GTもこういうエンジンだったのではないだろうか。
その雰囲気を味わったとたん、私の頭は1960年代に飛んでしまった。かつて、兄貴のヨハタチ(トヨタスポーツ800)で銀座のみゆき通りに繰り出し、意味もなくエンジンを空ぶかしして女の子を驚かせていた若くてバカだったあの頃。その思い出が突然甦ったのである。
アルピーヌA110はタイムマシンだったのだ! このクルマがどんな走りを見せてくれるのか、いろんな想像をしていたが「タイムマシン」は想定外だった。私は昔のA110に乗ったことはないが、見た目だけでなく、走りの雰囲気も当時のクルマに見事に寄せてきたことがわかる。
私は今夜、昔のクルマ仲間に電話するだろう。A110は1960年代のスポーツカーだったと。俺たちの青春時代を甦らせてくれるクルマだったと。そして「最高だった!」と。
ぜひ若い人に乗ってほしい。スマホを海に投げ捨て、お金を貯めてA110を買ってほしい。生涯の思い出となる最高の経験ができるに違いない。ゴーンさんはあんなにおカネにうるさい人だったとは知らなかったが、彼が率いるルノーは間違いなくいい仕事をした。
かつて、AKB48を卒業した時の前田敦子ちゃんの言葉を借りるなら「ゴーンは嫌いになっても、アルピーヌは嫌いにならないでください!」である。
ゴーンさんは今後通うことになるであろう裁判所に、ぜひアルピーヌA110で乗りつけてほしい。
■テリー伊藤 今回のつぶやき
若者はスマホを海に投げ捨て、全財産をこのクルマにかけるべし! アルピーヌA110は生涯の思い出になる!!!
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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みんなのコメント
私ももう少し収入が増えたらアルピーヌか718ボクスターを手に入れたいと思っていますが、どちらのピュアエンジンも間もなく時代と共に消えてしまいそうで…