現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【なぜ?】トヨタ・クラウンがFRから卒業して、THSとは違うハイブリッドを採用した理由

ここから本文です

【なぜ?】トヨタ・クラウンがFRから卒業して、THSとは違うハイブリッドを採用した理由

掲載 48
【なぜ?】トヨタ・クラウンがFRから卒業して、THSとは違うハイブリッドを採用した理由

新型クラウンクロスオーバーは2つのハイブリッドを設定

2022年7月15日に世界初公開された、16代目クラウンは4バリエーション展開という多くの人を驚かせるカタチでの発表となりました。前々から噂になっていたように、プラットフォームはFWD(前輪駆動)を採用、スタイリングについても従来のクラウンとは一線を画したチャレンジングなものとなっています。

トヨタ新型クラウンの衝撃 クラウンスポーツはBEVで決まり? セダンは?

そんな新型クラウンは、第一弾として、2022年秋ごろに「クロスオーバー」と名付けられたリフトアップセダンスタイルのバリエーションからローンチする予定となっています。セダン/スポーツ/エステートといった他のバリエーションがすべて揃うのは1年半後あたりになるということで、クラウンという単独モデルというよりはクラウン・ファミリーが誕生したと理解すべきかもしれません。

2022年秋ごろに登場予定、リフトアップセダンスタイルの「クロスオーバー」新型クラウンにおいて先兵となるクロスオーバーには、2種類のパワートレインが用意されています。ひとつは、中型以上のトヨタ車ではおなじみの2.5L NAエンジンに動力分割機構、発電用モーターと駆動用モーターを組み合わせた「THSII(トヨタハイブリッドシステムII)」。もうひとつが、トヨタ車としては初採用となる2.4Lターボとモーター、6速ATを組み合わせた「デュアルブーストハイブリッド」です。

いずれも後輪を駆動するモーターを別途備えた電動4WDだけの仕様となっています。このあたり『クラウンの後輪は駆動しているべきだ』という判断が働いたのでしょうか。また、どちらのハイブリッドシステムにも最新技術から生まれたバイポーラ型ニッケル水素電池を採用しているのも特徴です。

この2つのハイブリッドシステムは明確に個性が分けられています。

THSIIは、システム最高出力172kW(234PS)でWLTCモード燃費が22.4km/Lと経済性とパフォーマンスのバランスを考慮したもの。デュアルブーストハイブリッドは、システム最高出力257kW(349PS)とパフォーマンス重視です。そのぶん、WLTCモード燃費は15.7km/Lとなっていますが、スポーツハイブリッド的な位置づけで加速性能に振ったシステムと理解すべきでしょう。

2.4Lターボとモーター、6速ATによってフロントを駆動

新開発の「2.4L デュアルブーストハイブリッドシステム」は上級グレードの「RS」のみ選択可能。2.4Lターボエンジンを軸とした「デュアルブーストハイブリッド」のメカニズムを深掘りしていきましょう。

まずは、パワーユニットの構成を整理してみます。

2.4Lガソリン直噴ツインスクロールターボ:200kW(272PS)
フロント用モーター:61kW(82.9PS)
リヤ用モーター:59kW (80.2PS)

駆動力を生み出す3ユニットのスペックを見てわかるのはエンジンが主体となっていることです。2つのモーターを足しても120kWでしかありませんから、システム最高出力の257kWを発生するときは、エンジンがピークパワーを出しているのに近い状態であると推測できます。

フロントのパワートレインの配置(トルクフロー)を文字化すると、【エンジン→モーター→6速AT】といった流れになっています。パワートレイン系のエンジニア氏によると『二人乗り自転車のようなパワートレイン』ということです。
これは典型的なパラレルハイブリッドのトルクフローで、モーターがエンジンをアシストするタイプのハイブリッドだと理解できます。フロントについては、エンジンの回転に合わせてモーターがアシスト、その合計した出力を6速ATに送り込んでタイヤを駆動するという仕組みになっているのです。ターボチャージャーとモーターアシストという2通りのブーストが可能なことが、「デュアルブースト」のネーミングの由来でしょう。

そのメリットとして考えられるのは、レスポンス面でのアドバンテージです。
ターボエンジンにはどうしても過給のタイムラグ(ターボラグ)が付き物ですが、モーターアシストによってターボラグを隠すことができるため、抜群のアクセルレスポンスを味わえることが期待できるのです。このあたりもデュアルブーストハイブリッドのチャームポイントとなりそうです。

クラッチを使い分けてバッテリーの充電をコントロール

パラレルハイブリッドかつ電動4WDとなると気になるのは、バッテリーの充電コントロールです。
なにしろ初期のパラレルハイブリッドではバッテリー充電は回生ブレーキ頼みでした。もし、新型クラウンのデュアルブーストハイブリッドにおいても回生ブレーキだけでバッテリーを充電するシステムであれば、後輪用モーターを駆動したいときにバッテリーが空で、4WD状態にならないということがあり得ます。

もちろん、そんなことはありません。

デュアルブーストハイブリッドのフロント駆動におけるトルクフローを、【エンジン→モーター→6速AT】といった風に表記しましたが、この”→”部分にはそれぞれクラッチが備わっています。エンジンとモーター間のクラッチをつなぎ、AT側のクラッチを離しておくことで、フロントユニットは発電機として機能します。また、エンジンとモーター間のクラッチを切り離し、モーターとATをつなぐというモードにするとEV走行が可能となります。

さらにポイントとなるのはすべてのクラッチをつなぎ、エンジン出力メインで走行しているときにも発電できることです。フロントモーターは構造上エンジンと同じ回転数で動いていますが、モーター出力によってアシストするのではなく、逆にエンジン出力によってモーターを回すという使い方もできます。このとき回路を逆転させると発電機として機能します。

ですから、巡行しているようなときにバッテリー残量が心もとないとなったときには、エンジン出力に一部を利用してフロントモーターで発電してバッテリーを充電するといった制御も可能なのです。仮にエンジンが100の出力を発生しているとして、そのうち20をモーターが抜いて発電に回すということも可能です。

4WD走行が続いて、バッテリーの電力を使い切ったときにも、同様の制御は役立ちます。エンジン出力100のうち、50をフロントモーターが抜き出して発電、その電力をリヤモーターに送るということもできます。様々なロスを除いて話を単純化すれば、バッテリーの充電が空であっても、50:50の駆動力配分とすることが可能というわけです。

THSとは異なるシステムに未来はあるか?

新型クラウンに採用されるデュアルブーストハイブリッドのシステム構成自体はトヨタ独自というわけではなく、他メーカーでも見かけるものです。けっして珍しいものではありません。しかし、革新と挑戦を旗印とする新型クラウンに採用したことは意味深いといえます。

これまで動力分割機構を使うTHSは、プラグインハイブリッドへの展開が容易な点などが評価されてきました。ハイブリッドの本命と言われ続けてきたともいえます。だからといって、デュアルブーストハイブリッドは本命にはならないとは限りません。

これまでもトヨタはクラウンに新技術を採用、それをエントリーモデルへと拡大してきた歴史があるからです。もはや当たり前となっているクーラー(冷房)、クルーズコントロール、カーオーディオといった快適装備を国産車として最初に採用したのは、いずれもクラウンでした。エンジン技術でいえば、直噴とポート噴射を併用するD-4Sをトヨタ車として初採用したのもクラウンです。

そうであればデュアルブーストハイブリッドも、他のトヨタ車に展開される可能性が高いといえます。実際、トヨタにはハイパワーな3気筒ターボエンジンがあります。そのエンジンを使ったデュアルブーストハイブリッドが登場すれば、電動化時代のスポーツユニットとして価値あるものになるかもしれません。

あわせて読みたい よく分かる! 新型クラウンの買い方・選び方【新型CROWNバイヤーズガイド】

新型クラウンが衝撃の発表以来、大きな話題を呼んでいる。「これはクラウンじゃない!」という声も…

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

サラ・ボビーに代わるアイアン・デイムスの女性ブロンズドライバーが決定
サラ・ボビーに代わるアイアン・デイムスの女性ブロンズドライバーが決定
AUTOSPORT web
兄弟車に違いはあるのか!?  KTM『250 DUKE』とハスクバーナ『スヴァルトピレン250』を比べてみた!~小野木里奈の○○○○○日和~
兄弟車に違いはあるのか!? KTM『250 DUKE』とハスクバーナ『スヴァルトピレン250』を比べてみた!~小野木里奈の○○○○○日和~
バイクのニュース
【ロイヤルエンフィールド】日本公式アンバサダーに mapico さんが就任
【ロイヤルエンフィールド】日本公式アンバサダーに mapico さんが就任
バイクブロス
新人最速はフェラーリのアーサー・ルクレール。BMWのロッシは“2番手デビュー”/WECルーキーテスト
新人最速はフェラーリのアーサー・ルクレール。BMWのロッシは“2番手デビュー”/WECルーキーテスト
AUTOSPORT web
日産の「和製スーパーカー」に反響多数! 「伝説の車」「ワクワク」 MT&「大排気量V6エンジン」搭載でミッドシップってサイコー! めちゃ高性能な「MID4」とは
日産の「和製スーパーカー」に反響多数! 「伝説の車」「ワクワク」 MT&「大排気量V6エンジン」搭載でミッドシップってサイコー! めちゃ高性能な「MID4」とは
くるまのニュース
トヨタ・モビリティ基金、国際パラリンピック委員会と提携…障がい者スポーツを支援
トヨタ・モビリティ基金、国際パラリンピック委員会と提携…障がい者スポーツを支援
レスポンス
インプレッサ22B、F40、M2 1001…… 「残存数1台」の超希少車も! あの限定車の行方2013年版
インプレッサ22B、F40、M2 1001…… 「残存数1台」の超希少車も! あの限定車の行方2013年版
ベストカーWeb
視界に入ってむしろ邪魔……って感じるのは設定が合っていない可能性! 賛否両論ある「ヘッドアップディスプレイ」の賢い使い方とは
視界に入ってむしろ邪魔……って感じるのは設定が合っていない可能性! 賛否両論ある「ヘッドアップディスプレイ」の賢い使い方とは
WEB CARTOP
歴史に残る巨額「投資サギ事件」首謀者の不可解な行動 ド派手イベント強行せざるを得なかったウラ事情
歴史に残る巨額「投資サギ事件」首謀者の不可解な行動 ド派手イベント強行せざるを得なかったウラ事情
乗りものニュース
新しいトヨタ・グランドハイランダーが出た!──GQ新着カー
新しいトヨタ・グランドハイランダーが出た!──GQ新着カー
GQ JAPAN
新型スズキe VITARA登場!──GQ新着カー
新型スズキe VITARA登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
カワサキ、新登場のレトロスポーツバイク『MEGURO S1』を発表。11月20日から発売
カワサキ、新登場のレトロスポーツバイク『MEGURO S1』を発表。11月20日から発売
AUTOSPORT web
約138万円! 全長4m以下のホンダ「超小型セダン」がカッコいい! MTもある「アメイズ」インドで爆売れ! どんなモデル?
約138万円! 全長4m以下のホンダ「超小型セダン」がカッコいい! MTもある「アメイズ」インドで爆売れ! どんなモデル?
くるまのニュース
キジマから GSX-8S/R用カスタムパーツ5アイテムが発売!
キジマから GSX-8S/R用カスタムパーツ5アイテムが発売!
バイクブロス
圧倒的加速の[GT-R]は価格も別格! そもそもターボの[定義]ってなに?
圧倒的加速の[GT-R]は価格も別格! そもそもターボの[定義]ってなに?
ベストカーWeb
「幻の最終戦」で悪い流れをどう断ち切る? 豪雨から快晴で劇的展開!! KONDOレーシング56号車はもてぎでどう走った?
「幻の最終戦」で悪い流れをどう断ち切る? 豪雨から快晴で劇的展開!! KONDOレーシング56号車はもてぎでどう走った?
ベストカーWeb
ストロール、フォーメーションラップでのコースオフはブレーキトラブル? しかしなぜかグラベルにハマる……クラック代表「予想外のこと」
ストロール、フォーメーションラップでのコースオフはブレーキトラブル? しかしなぜかグラベルにハマる……クラック代表「予想外のこと」
motorsport.com 日本版
高速のカーブが走りやすいのはアウトバーンゆずりの大発明のおかげ! 誰もが知らずに恩恵を受けている「クロソイド曲線」とは
高速のカーブが走りやすいのはアウトバーンゆずりの大発明のおかげ! 誰もが知らずに恩恵を受けている「クロソイド曲線」とは
WEB CARTOP

みんなのコメント

48件
  • THSを持っているので、CAFEに余裕がある。で、他社並みの走りに振ったシステムを導入できる。トヨタらしい。
    バイポーラ型ニッケル水素電池も、今は電池としてリチウムイオン電池より高価だと聞くけど、作り方で安くできるとふんでいるのでは。材料費が安いほうが、最後は製品として安くなると。
  • 「卒業」って表現おかしくない?
    クラウンクラスのクルマがFFになったなら「FRからグレードダウンして…」と言い回すべきじゃ…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

509.9575.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0890.0万円

中古車を検索
クラウンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

509.9575.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

48.0890.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村