現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 鈴木修さんを偲ぶ「生涯現役」を貫いた筋金入りの“マルチ”経営者[新聞ウォッチ]

ここから本文です

鈴木修さんを偲ぶ「生涯現役」を貫いた筋金入りの“マルチ”経営者[新聞ウォッチ]

掲載 3
鈴木修さんを偲ぶ「生涯現役」を貫いた筋金入りの“マルチ”経営者[新聞ウォッチ]

年の瀬に入ってからも「ホンダ・日産の経営統合協議入り」など、突然、自動車業界を震撼させるような重大ニュースが飛び込んできたが、この年末はその発表だけでは暮れないようだ。

スズキの社長や会長として40年以上にわたり君臨し、『アルト』や『ワゴンR』などの人気車種を軽自動車市場に投入したほか、いちはやくインド市場に進出するなど、卓越した先見力で常に外に目を向け、変化に挑戦して世界的な自動車メーカーに育て上げた鈴木修さんが12月25日、悪性リンパ腫のため、94歳の生涯を閉じた。

911を持ってること自体、ワガママだと思うのだが

葬儀を近親者で済ませた後の27日には訃報が伝えられたが、翌28日の各紙の朝刊にも1面と経済面などに鈴木さんの功績や人柄など、故人を偲ぶ「評伝」を掲載。このうち、読売は「『軽』飛躍 売上高10倍超に、国内外と積極連携」とのタイトルで、「1978年の社長就任から約40年間で、スズキの売り上げを10倍以上に拡大させるなど、トップとして優れた手腕を発揮した経営者」などと称えた。

朝日は「『中小のおやじ』守った軽、40年超現場主義貫く」として、税制改正で軽自動車への増税が取りざたされた2012年末、鈴木さんは「弱い者いじめだ」「(軽は)貧乏人が乗る車だ」と訴え、業界内をまとめたことなどを取り上げて、歯に衣着せぬ、というエピソードを紹介。また、産経は「国内メーカーに先んじて進出したインドでトップシェアに育て上げ、『浜松のスズキ』を『世界のSUZUKI』 へと脱皮させた」などと評した。

日経は「反骨精神貫いた中興の祖、インド市場、自ら開拓,『生涯現役』40年以上けん引」との見出しで「業界最後発の位置から出発し、最後は世界の大手メーカーも容易にマネのできないユニークなポジションを築いた。その生涯を貫いたのは『負けてたまるか』の反骨精神である」と伝えている。

仕事柄、私も取材などを通じて多くの経営者と知り合ったが、鈴木さんと初めて出会ったのは経済誌の編集記者で自動車を担当していた頃で、もう40年近くも前。お膝元の浜松市のホテル内にあるスズキ専用のゲストルームで、鈴木さんと差しで取材を兼ねて会食する機会があった。

当時、47万円という低価格で発売した初代の「アルト」が大ヒットし、未開のインドやパキスタンなどの海外戦略がようやく実を結び、中小企業意識に徹する“スズキ商法”も順風満帆。当時、鈴木さんは社長に就任してから9年目で56歳を迎えたばかりだったが、元気いっぱいで自動車不況もどこ吹く風にも見受けられた。

そのときの話題は、地元浜松出身で、45歳の若さで本田宗一郎氏の後を継いでホンダの社長に就いた河島喜好氏が在任10年で突然引退したことにも及んで、鈴木さんは「最近は河島さんの気持ちがよく理解できる。年齢に関係なく、社長として全力投球できるのはせいぜい10年」と語っていたのが今でも記憶に残る。

ところが、駆け出し時代に先輩記者から「芸者の年齢とトップ人事は額面通りに受け取るな」と教わってはいたが、まんまと煙に巻かれてしまった。その後、鈴木さんは「人生七掛け」を提唱して筋金入りの「生涯現役」を貫いたが、振り返ればそのときの発言も妙に納得できる。

また、“落ち穂拾い“経営と揶揄されても、「発展途上の国ならばトップを狙える」と、1980年代はまったくの新興市場であったインド市場にいちはやく進出してから20年近くが過ぎた頃のインビューでは、そのインド事業が本格軌道に乗ってトップシェアを握り、スズキの屋台骨を支える重要な市場に成長したことについて「ビジネスは魚釣りと同じなんだよね。魚のいるところに釣り糸を垂れないと、魚が釣れるわけがない。新興国志向なんて上等のものではなく、多くの人口を抱え、将来のユーザーがたくさんいるところに経営資源を投入しているだけですよ」

それから鈴木さんにインドでの成功の秘訣を問うと「成功するという確信を持って進出したわけではない。インドくらいしかウチの出ていくところがなかったのが本当のところ。また、ウチの強さなんてたかが知れている。インドでも稼げると知って大手さんがどんどん参入してきたら、あっという間に追い出されかねない。そうなったら、また大手さんが出ていない国を探さないとね」とも。

さらに、鈴木さんはその当時からも少子化による日本経済の収縮を懸念して「政府が本気で対策を打つ気がない以上、止まらないと思う。人口が減るということは、すべての経済活動が縮小していくことを意味する。少子化時代の成長モデルを確立するなどと言っている政財界人がいるけど、そんなのは絵に描いた餅でできっこない」と、まるで、予言者のように、社会における車の必要性は低下して国内市場の拡大はありえないと言い切っていた。

独特の眉毛と細い目で話す “オサム節”とも呼ばれた鈴木さんの語録は数限りない。いずれもわかりやすく実にシンプルで、言い得て妙であり、ユーモアたっぷりで時には煙に巻かれることもあったが、小さな車をつくる仕事に興味を持ち仕事を好きになり、仕事に没頭することに生涯をかけて真面目に人生を送っていた姿には改めて学ぶことも多く、心底から敬意を払いたい。合掌。

2024年12月30日付

●韓国機炎上179人死亡、胴体着陸失敗救助は2人,務安空港「鳥衝突」の可能性(読売・1面)

●2024年亡くなった方々、12月25日、鈴木修さん(94)スズキ元会長兼社長(朝日・20面)

●東京のホテル1泊平均2万円、円安と変動幅引き上げ影響(毎日・1面)

●世界の論点 ホンダ・日産の経営統合(産経・5面)

●USスチール「米は敗北」日鉄の買収不成立なら (日経・3面)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

スズキを日本国内で2番めに新車を売る世界的メーカーに押し上げた中小企業のおやじ! 鈴木 修相談役が残した功績が偉大すぎた
スズキを日本国内で2番めに新車を売る世界的メーカーに押し上げた中小企業のおやじ! 鈴木 修相談役が残した功績が偉大すぎた
WEB CARTOP
【訃報】スズキ 鈴木修 巨星墜つ 多大な功績を振り返る
【訃報】スズキ 鈴木修 巨星墜つ 多大な功績を振り返る
Auto Prove
ホンダとの統合検討で話題沸騰中!! 何度も倒産寸前で世間をお騒がせ!!!! [日産]の歩みを今一度おさらい
ホンダとの統合検討で話題沸騰中!! 何度も倒産寸前で世間をお騒がせ!!!! [日産]の歩みを今一度おさらい
ベストカーWeb
2024年に発表された新型バイク、ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキの注目車は?
2024年に発表された新型バイク、ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキの注目車は?
レスポンス
スズキの鈴木修相談役が逝去
スズキの鈴木修相談役が逝去
レスポンス
「マジか…」記者が震えた 2024年最も印象に残ったクルマの記事 3選
「マジか…」記者が震えた 2024年最も印象に残ったクルマの記事 3選
AUTOCAR JAPAN
巨星堕つ…スズキ鈴木修前会長死去「お別れの会」は後日実施予定
巨星堕つ…スズキ鈴木修前会長死去「お別れの会」は後日実施予定
ベストカーWeb
日産・ホンダ経営統合! 合同開発でVTEC搭載「シルビア」が登場? 魅力的なOEM車種も? 元ディーラー目線で考える
日産・ホンダ経営統合! 合同開発でVTEC搭載「シルビア」が登場? 魅力的なOEM車種も? 元ディーラー目線で考える
Merkmal
スズキ・鈴木修氏が死去 軽自動車の発展やインド市場開拓などに尽力 トヨタ豊田会長から「お悔やみの言葉」も
スズキ・鈴木修氏が死去 軽自動車の発展やインド市場開拓などに尽力 トヨタ豊田会長から「お悔やみの言葉」も
くるまのニュース
自動車メーカーの日本事業、難しさ増す舵取り 母国市場の生き残りは数年がヤマ
自動車メーカーの日本事業、難しさ増す舵取り 母国市場の生き残りは数年がヤマ
日刊自動車新聞
「またトラ」対応 中国メーカーの大躍進…… 2024年自動車業界10大ニュースと2025年「最も恐るべきこと」
「またトラ」対応 中国メーカーの大躍進…… 2024年自動車業界10大ニュースと2025年「最も恐るべきこと」
ベストカーWeb
「100% BEVに」と宣言したメーカーと現在の戦略…「君子豹変す」は褒め言葉ですよ!!
「100% BEVに」と宣言したメーカーと現在の戦略…「君子豹変す」は褒め言葉ですよ!!
ベストカーWeb
ジャガーのサスペンションを持ったT型フォードが猫足で未来を切り拓く!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第41回
ジャガーのサスペンションを持ったT型フォードが猫足で未来を切り拓く!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第41回
LE VOLANT CARSMEET WEB
「スカイラインを諦めない」はもう無理か? 日産が本気で生き残るための苦渋の決断の可能性とは【ホンダ・日産考察】
「スカイラインを諦めない」はもう無理か? 日産が本気で生き残るための苦渋の決断の可能性とは【ホンダ・日産考察】
ベストカーWeb
【2025年のクルマ世界に思うこと】マルチパスウェイで本当に自分の好きなクルマを探したい
【2025年のクルマ世界に思うこと】マルチパスウェイで本当に自分の好きなクルマを探したい
AUTOCAR JAPAN
日本の自動車メーカー、本当に「14社」も必要? ホンダ×日産経営統合が示す、希望ある再編の未来とは
日本の自動車メーカー、本当に「14社」も必要? ホンダ×日産経営統合が示す、希望ある再編の未来とは
Merkmal
涙目のポルシェ、今ならまだ狙えるピュアな911---相場は高値へ推移中
涙目のポルシェ、今ならまだ狙えるピュアな911---相場は高値へ推移中
レスポンス
さらに100kg軽量化!? スズキ『アルト』次期型は「48Vスーパーエネチャージ」でパワーUP&燃費改善
さらに100kg軽量化!? スズキ『アルト』次期型は「48Vスーパーエネチャージ」でパワーUP&燃費改善
レスポンス

みんなのコメント

3件
  • tondemo310
    自公支持者は喜んで働いている。
    反自公の人は嫌々働いている?
    何の時か忘れたが、M・F氏は「私の周りに募集してるから働こうかなんて人は¥は居ませんよ。皆生活のために嫌々働いてますよ」と言った。随分とパートさんに失礼な人だと思った。
    おさむちゃんはまさに会社のため、日本国のために、生涯現役を貫いた。「世界のスズキ」がどれだけ外貨を稼いでいるか。
  • TNR
    静岡のローカルニュースだけでやってください
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

106.5125.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

3.8308.0万円

中古車を検索
アルトの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

106.5125.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

3.8308.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村