フォードとヴァンダービルト大学の研究者たちは今週、アダプティブ・クルーズコントロール(定速走行・車間距離制御装:ACC)が広く普及している交通だと自然渋滞の発生確率を抑えられるということを実証する試験を始めた。
合同で組まれた研究チームは今までで最も大規模かつ現実的な実地試験を行い、交通網に大きな影響を及ぼす自然渋滞は現行のテクノロジーで十分対策できることを示した。
実験ではフォードの専用テストコースで36台の車が一般的な高速道路の交通を想定した走行を行った。全車両にはACC機能が効いている状態で走行したのち、同じシナリオをACCなしで走行した。
結果、ACC機能が働いている場合、ブレーキを踏んだ時の交通の流れに対する影響がACCなしの場合の交通よりも少なかった。更に、全車両ではなく3台に1台程度でもACCが機能していると交通に良い影響が出た。
フォードCo-Pilot360の主任Michael Kane氏は「独立記念日に合わせた旅行ラッシュも渋滞一つで台無しになりかねない。是非フォード車オーナーの皆さまにはこのACC機能をオンにしてもらい、少しでも快適なドライブの実現に貢献してほしい」とコメントした。
フォードは現在アメリカのラインナップの71%の車両にアダプティブ・クルーズコントロール機能を搭載している。合同チーム主任研究員Raphael Sternはこのようなスマートテクノロジーがよりスムーズで効率的な交通網を実現できると考えており、今回の実証試験の結果を論文雑誌に掲載する予定だ。
自然渋滞の“呪い”
道中で発生した交通事故、指示器なしの合流やわき見運転、反応の遅さや不必要なブレーキングなどの人的要因。これらが自然渋滞の主な原因となっている。前でドライバーが一度ブレーキを踏めば、後続車も次々とブレーキを踏んでしまい、結果として大きな自然渋滞を引き起こしてしまう。
インリックスの試算(http://inrix.com/press-releases/scorecard-2017/)によると一般的なアメリカ人の車通勤では年間41時間の渋滞に巻き込まれており、その損失額は車通勤者一人当たり1400ドルにものぼるという。これは渋滞による生産性の低下やアイドリング中に消費されたガソリンなどが含まれている。
今年から導入されている最先端のドライバーアシストシステムFordCo-Pilot360は全車両で標準装備されている。北米市場で全車両にこのようなドライバーアシストシステムを搭載しているメーカーは他にいない。Co-Pilot360は歩行者自動検知による緊急自動ブレーキや死角情報システム、車線維持システムや自動ハイビームヘッドライトなどの機能が装備されている。2019年登場予定のフォード エッジでは車線中央を自動で走行するアダプティブ・クルーズコントロール機能が装備されており、より快適なロングドライブを実現できるようになっている。
アダプティブ・クルーズコントロールで自然渋滞を防ぐ:フォードの実証実験
フォードの専用コースで行われた実証試験では、高速道路を想定した3車線にそれぞれ12台のフォード車が走行した。先頭の車両はあるタイミングで60mphから40mphまで減速した。ACC機能なしで走行しているとき後続車はそれぞれ前の車両よりも強くブレーキを踏んでしまい、結果として車の流れが大きく止まってしまう箇所が発生した。つまり、ACCなしだと最初のブレーキは後々大きな自然渋滞を引き起こす結果となった。
次に、同じ走行をACC機能付きの状態で行ったところ、自然渋滞はほとんど発生しなかった。ある走行では列の最後の車両で先頭からわずか5mphしか速度が低下していなかった。ACCなしでは最後の車両はほぼ停止していたこと踏まえると大きな違いだ。ACCをオンにしている割合を33%に削減しても100%の場合と同じような効果があった。
ヴァンダービルト大学の土木工学教授のDaniel Work氏いわく、アダプティブ・クルーズコントロールは人間と違って疲れたり集中が切れたりしない。しかし、自動化がされる中で人間は「前方の複数の車両を確認して、全体の状況を把握する」ことができるという点では未だに優位に立っているという。「安全な運転を心掛け、適切な車間距離を開けるよう常に注意していることが渋滞のない効率的な交通を実現できる」という。
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