移動体衛星通信サービスの大手企業である英国インマルサット社と三菱重工業は、日本の新たな基幹ロケットとなるH3ロケットによる衛星打上げで、インマルサット社が民間企業として初めて三菱重工に発注することを決定した。H3の初号機打上げは2020年度の計画で、インマルサット社向け打上げ実施は2022年以降となる予定だ。三菱重工にとって、インマルサット社への打上げ輸送サービスは2017年の契約発表に続き今回が2件目で、海外顧客への打上げ輸送サービスとしてはH-IIAロケットでの5件、H3ロケットでの1件で6件目となる。
H3ロケットは、柔軟性、高信頼性、低価格の3つの要素を実現することを目指し、2020年度に試験機の打ち上げを予定している日本の新しい基幹ロケットだ。国の重要な人工衛星や探査機などを宇宙へ輸送する手段を今後も日本が持ち続けるために、現在運用しているH-IIAロケット、H-IIBロケットの後継機として開発されている。H3ロケットは、国の衛星だけでなく民間の商業衛星を毎年打ち上げていくことも視野に入れている。JAXAとプライムコントラクターである三菱重工業を始めとする国内の関連企業が開発段階から総力を結集して、これまで培った運用経験等を活かして全体のシステムを刷新し、低価格・柔軟性・高信頼性を兼ね備えたロケットの実現を目指している。
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三菱重工は、インマルサット社から同社が2020年以降の運用開始を計画する第6世代通信衛星(Inmarsat-6)シリーズ初号機の打上げ輸送サービスを現行の基幹ロケットであるH-IIAで受注した経緯がある。この一連の合意は、打上げサービス分野における両社のパートナー関係の進展を象徴するものだ。
インマルサット社のルパート・パース(Rupert Pearce)CEOは、次のように述べている。
「当社は、移動体通信における世界的リーダーであり、この地位はパートナー企業との協業関係の拡充・多様化に努めることで構築したものです。当社は、新たな市場に進出し、商機を創出するために、イノベーションにコミットする新しいパートナーを絶えず探し求めています」
同CEOはさらに
「このような理由により、当社は2017年に三菱重工を打上げパートナーに選定し、また、このたび民間企業として初めてH3ロケットを選択することを決定しました。このような発表ができることを嬉しく思います。私たちは、H3が世界レベルのイノベーションを象徴するものであり、将来インマルサット衛星を軌道に乗せるために効果的かつ効率的なサービスを提供すると信じています」
と続けた。
一方、三菱重工の渥美 正博宇宙事業部長は、次のようにコメントした。
「H3ロケットの開発は国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)を核としてキーコンポーネントメーカーと主契約企業である当社が連携しながら進めている途上にありますが、今回高い評価を頂けたことに改めて感謝します。お客様の期待に応えるべく、JAXAや政府機関のもと、この基幹ロケットをしっかりと開発していきたいと存じます」
また、英国のグレッグ・クラーク ビジネス・エネルギー・産業戦略大臣は、次のようにコメントした。
「英国のインマルサット社と日本の三菱重工の間で築かれた長期的かつ戦略的なパートナーシップが示すように、科学とイノベーションに国境はありません。また、宇宙産業は英国にとってサクセス・ストーリーであり、グローバルに成長を遂げている産業です。英国政府は、国内初のスペースポート建設や過去最大規模の科学産業への投資を通して宇宙産業へのサポートを継続していきます」
三菱重工の打上げ輸送サービスは、97.9%という非常に高い成功率を誇り、2005年以降41回連続で成功。さらに、H-IIAおよびH-IIBともに、定刻打上げにより高い顧客満足を実現している。
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