motorsport.comの調べでは、FIAは雨用ホイールカバーのF1での導入を断念したようだ。
FIAはウエットコンディションでの後続車の視界を改善することを目指し、昨年は雨のシルバーストンでテストを実施。先日はフィオラノでフェラーリと共に最新版のホイールカバーを試し、水しぶきの低減に役立つかどうか評価を行なった。
■雨用タイヤカバー、設計からやり直し? テスト参加したベアマン「ほんの少しはマシだったけど……」
シルバーストンで試された部分的な“泥除け”とは異なり、フィオラノに持ち込まれたのはタイヤ全体を覆うデザインを持つホイールカバー。フェラーリは2台のマシンを接近させて走らせ、状況の改善に繋がるかどうか確かめた。
FIAは、ホイールから巻き上がる水しぶきがない場合、視界がどれほど改善されるのかをより良く理解しようとしたため、最新版のホイールカバーは意図して大掛かりなモノとなった。
そしてビデオ分析に基づくテスト後の結論は、マシンにホイールカバーを装着したとしても、依然ディフューザーから巻き上がる水しぶきは大量で、効果はわずかだと導き出された。
これを受けてFIAは、ホイールカバーのアイデアを追求する価値はないと判断。現在は、危険なコンディションで役立つ他の選択肢が検討されている。
motorsport.comの独占取材に応じたFIAのシングルシーター担当主任のニコラス・トンバジスは、ホイールカバー計画は期待されていたような改善を実現できないため、中止されたと説明した。
「水煙には、主にふたつの要因があることは常に理解していた」とトンバジスは語った。
「ひとつはディフューザーが地面から吸い上げる水の量、もうひとつはタイヤからの水だ」
「我々がやろうと考えたのは、ホイール全体を覆うことだ。限界まで覆ったらどうなるのかを見て、解決策になるかどうか検討するためにね」
「(シルバーストンでの)前回のホイールカバーテストでは、あまりに薄っぺらで小さすぎた。だから上手くいくとは思えなかった」
「だから、ホイールカバーから得られる最大限(の効果)を検証するために、限界までやってみた。その結果、多少の効果はあったが、それが解決策だと言えるほど大きな効果はなかった。したがって、我々は振り出しに戻った」
「いくつかの疑問に答えることができたと思う。我々の現在地は分かったが、それがプロジェクトとして継続されているとは言えない。今はレース中断を回避するための他の方法を見つける必要があると分かっている」
現在のF1では、マシン下面から多くのダウンフォースを発生させるグラウンドエフェクトカーが使用されており、ウエットコンディションでは空気とあわせて大量の水がベンチュリーフロアから巻き上げられる。そのため以前はディフューザーに何かしらを追加して、水しぶきを抑えるというアイデアが考えられた。
しかしトンバジスは、このアイデアに対して懐疑的で、ディフューザーに手を加えればダウンフォース発生に悪影響を及ぼすと考えている。
「理論的には何かできるかもしれないが、それはダウンフォースを全て取り除いてしまうようなモノだ。だからかなり問題になるだろう。正直なところ、次のステップは簡単ではない。話し合いが必要だ」
「ただ基本的には、テストとして(最新バーションのホイールカバー)は上手くいった。テストが上手くいき『素晴らしい』と言えることもあれば、逆に自分たちが追いかけている方向性は良くないから、別の方向に進む必要があることもある。今はその別の何かを確立する必要がある」
トンバジス曰く、ウエットコンディションでの後方視界改善のためのアイデアがいくつかあるものの、まだ公にはしたくないという。
ただその答えが何であれ、厳しいコンディションでのレース改善になることを望んでいるとトンバジスは語った。
「我々は異なる解決策を考える必要がある」とトンバジスは言う。
「一番避けたいのは、レースが中止されたり、大幅に短縮されたり、大幅に遅れたりという2021年スパのような状況だ」
「常に妥協が必要なのは明らかだ。ホイールカバー自体はかなり醜いモノだったが、もしそれが大きな貢献をしてくれるのであれば、レースが中止されるかどうかを分けるのなら、1年に1回装着しても全く問題なかっただろう」
「雨のたびに装着するという意図はなかった。しかし残念ながら、我々は他の解決策を考える必要がある」
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みんなのコメント
フロントウィングからバージボード、サイドポッドからのリアウィングとフロアパネルからのディフューザーの空気の流れ。
この空気の流れがタイヤから発生した水しぶきはマシン後方から上方へ巻き上がる。
風洞でもCG解析でも分かり切っている現象をタイヤカバーで抑えようなんて本気か?と思ったらやっぱりの結果。