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クルマ界初の生前葬!? 2021年中に逝くホンダの3台を惜別試乗!! 

掲載 更新 62
クルマ界初の生前葬!? 2021年中に逝くホンダの3台を惜別試乗!! 

 ホンダは国内主要工場のひとつである狭山工場(埼玉県・狭山市)の閉鎖に伴い、そこで生産するオデッセイ、レジェンド、クラリティの年内での生産終了を正式に発表。ちなみにクラリティについては、2021年8月末の時点ですでに購入することはできない。

 レジェンド、オデッセイというホンダのビッグネームに加え、FCV(燃料電池)、PHEVをラインナップするチャレンジングなクラリティが一気に消滅することになる。

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 ホンダはN-BOXの好調もあり、軽自動車だけ売っていればいいと思っている、などと揶揄されることもあるが、それもあながち嘘ではないと思わせる大胆な車種リストラだ。

 この3台はお世辞にも売れているというわけではないが、存在感は抜群。レーシングドライバーで自動車評論家、さらに僧籍を得ている松田秀士氏が惜別のイッキ乗りで再評価する!!

文/松田秀士
写真/中里慎一郎
ベストカー 8/26号初出記事

【画像ギャラリー】消滅するには惜しいオデッセイ、レジェンド、クラリティPHEV

■オデッセイ(2013年11月販売開始)

ミニバンとしては素晴らしいハンドリングを実現しているオデッセイ。街中、高速道路ともに乗り心地に優れているのも魅力

 筆者自身、初代、2代目のオーナーだったこともあり、オデッセイには特別な思いがあり、哀悼の意を表したい。

 南無阿弥陀仏!

 現行モデルは前方視界もよくドライビングポジションがほかのミニバンよりも低い。アイポイントも低く、ミニバンにありがちな左側方の死角が少なく、Aピラーのデザインで前側方の視界がクリア。市街地を含めてクリアな視界確保で安心して運転できる。

 実用速度域ではホンダのe:HEVにより停止から80km/hくらいまでは力強い加速。3列シートのミニバンに多人数乗車をしても、トルクが豊満なモータードライブによってストレスのない走りを楽しむことができる。さらに実用燃費のよさも魅力。

Lクラスミニバンとしての豪華さはもちろんのこと、3列目シートにエアコン吹き出し口を装着するなど充分に配慮されているのは大きな魅力となる

 そして室内静粛性が高く乗り心地も突き上げ感が小さく快適である。特にルーフの梁の部分に開けられたリング状のエアコン送風口は自在に向きを変えられ、今回の真夏日でも室内は快適だった。3列目シートにまで2列目と同じ送風口が設置され、座面を含めたシートの作りもこだわりがあり、足元のスペースなどやっつけ感がない。

 オデッセイを改めて乗り回してみて、3列シートのミニバンとしていったい何が足りないのか? 首をかしげてしまうくらいだ。

【苦戦の要因は?】
 外から眺めていて感じるのは、あまりにドライバー目線になり過ぎている。前述したがミニバンとしては低い着座位置、全高は1695mmと中途半端。これによって前後には余裕があるが上下にはちょっともの足りない室内高。立ち上がると腰を曲げて屈む率が高く、室内移動はちょっと窮屈だ。

 このように3列シートのミニバンとして、もっと思い切ったパッケージングを行うべきだったのではないだろうか? 筆者自身、背の高かった初代、2代目には興味を持ち購入したが、3代目からは必要性を感じなかったのだ。

■レジェンド(2015年2月販売開始:日本)

スポーツカーかと思うほど着座位置が低く、SH-AWDによる路面コンディションを問わないハイパフォーマンスな旋回性能は特筆レベル

 世界で初めて自動運転のレベル3を実現したホンダ センシング エリートを搭載したレジェンド。その価格は1100万円。100台限定生産でリースのみだから、誰もが手に入れられるモデルではない。

 しかし、この準自動運転を達成するためにライダーなど超高価な補器類や開発に費やした時間や人材を考慮すれば、赤字を覚悟のうえでの販売だろう。ホンダ初のハイブリッド車のインサイトの時と同じ。世の中に必要なシステムと考えてのリリースと思えるのだ。

 実際に筆者自身、レベル3でのドライブは先立って行われた試乗会で体験ずみ。比較的スムーズに流れる渋滞の首都高で、合流車線でもしっかり判別して合流。これらをハンズオフ(両手放し)だけでなく構えることもなく普通に安心して運転を任せられることに驚愕。もうここまで来ているのか!! と感心した。

 レベル3以外にトピックがある。それがSH-AWDだ。エンジンを横置きのFFベースに後輪を左右独立した2モーターで走らせる4WD。この2モーターが、一方が駆動時に片方が減速で回生電力を産み、そのエネルギーで片方を駆動。

 これでより少ない操舵角でコーナリングできる。このシステムはNSXのフロントにも採用されている。

 コックピットはこの手の高級セダンとは思えないほど低い着座位置でスポーティ。V6エンジン+ハイブリッドの加速もなかなか力強い。

 そしてインテリアの高級感も高く、落ち着きのあるプレミアムな空間である。

100台限定リースのみとは言え、市販モデルとして世界で初めて自動運転レベル3を実現したのはホンダの意地。その気概が素晴らしい

【苦戦の要因は?】
 かつてレジェンドはカー・オブ・ザ・イヤーなどのイベントのたびに開発が促進し宣伝活動も活発になった。

 しかし賞取りレースが終わると忘れられたかのように放置。育てる、という意思が感じられない。今回のようなレベル3という偉業を成し遂げた途端にその生涯を閉じる。

 何も言わず「南無阿弥陀仏」を唱えたい。合掌。

■クラリティPHEV(2018年7月販売開始)

販売台数が少なく、街中でも見かけることの少ないクラリティPHEVだが、ほかのホンダ車に負けず劣らず走りへのこだわりは強い

 もともとクラリティはFCV(燃料電池車)としてデビュー。石油に代わる次世代エネルギーへの転換に対応するには水素で走るFCVは切り札だが、まだ時間がかかる。

 直近への対応をしながら近未来への対策を行うにはクラリティのプラットフォームの流用が効率的、という方向性になった。つまり、直近の対応(PHEV)、EV、インフラなどを整えながら徐々にFCVというレールを敷いていたのではないだろうか。

 今一度、PHEVとなったクラリティをドライブして感じるのはその走りのよさだ。

 さすがにホンダだけあって加速力が素晴らしい。スポーツモードを選択してアクセルを床まで踏みつければ、パワフルで鋭い加速に驚く。このクルマ、環境車なの? と思わずニンマリするほど。

 もちろん環境性能も高くリチウムイオンのバッテリー容量は17kWhとPHEVとしては超大型。これによりEV走行距離は100kmとロングだ。さらに、そのリチウムイオン電池への充電方法はいわゆる一般家庭での200Vに加えて急速充電も可能。

大容量のバッテリーを搭載するPHEVとしては異例のトランクの広さを誇る。しかもトランクスルーだから長尺ものも搭載できる利便性は◎

 これほど大きなバッテリーを搭載していてもトランクは広く、おまけにトランクスルー構造なので長尺荷物も搭載可能なのだ。バッテリーを床下に搭載するので低重心。パワステはデュアルピニオンEPSでハンドリングにもこだわる。レゾネーターを内蔵したホイールにより室内も静か。

 エクステリアはリアホイールを3分の1ほど覆うフェンダーで燃費に影響する空力も徹底している。インバーターをエンジンルームにコンパクトに収める技術もスゴイ。

 そして驚くほどの燃費。

【苦戦の要因は?】
 売れる軽自動車やSUVに注力しすぎで、クルマ本来のよさ、メリットを伝える努力をしていない。米国ではBEV(100%EV)版も販売されているのに国内向けは廉価モデルもないワングレード販売。これでは顧客は手を出さないだろう。

レジェンドは3 モーターのスポーツハイブリッドSH-AWD、オデッセイは2 モーターのe:HEV、クラリティPHEVは2 モーターのプラグインハイブリッドと三車三様

【画像ギャラリー】消滅するには惜しいオデッセイ、レジェンド、クラリティPHEV

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