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【攻め込んでこそ光る素質】フォード・フィエスタST マウンチューンM235へ試乗

掲載 更新 3
【攻め込んでこそ光る素質】フォード・フィエスタST マウンチューンM235へ試乗

1.5L 3気筒ターボから235psを獲得

text:Richard Lane(リチャード・レーン)

【画像】M235とM520、ヤリスGRMN 全112枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


どの時代の、どの価格帯のモデルでも、ワイルドなハイパフォーマンス・モデルを味わうには、攻め込む必要がある。時には、インリフトするほどに。

親しみやすく毎日乗れるコンパクトカーへ、最もホットなエンジンを求めるドライバーが選ぶ、フォード・フィエスタST。マウンチューン社はそこへ、最新のチューニングメニューを施した。

アフタマーケット製キットとしての英国価格は、890ポンド(11万8000円)。1.5Lの3気筒ガソリンエンジン、エコブーストから、内部構造の強化なしに得られる上限に近いパフォーマンスを引き出している。

最高出力は199psから235psへと向上し、最大トルクは6.0kg-mが加算され35.6kg-mに。0-100km/h加速を6秒以内でこなし、中回転域では明確に高められた動力性能を体感できる。

ハードウェアの変更は比較的控えめ。それが価格にも反映している。アルミニウム製のエアクリーナー・ボックスとハイフロー・エアフィルター、吸気側アンダー・ホースといったレシピだ。

OBDコネクターに装着される、専用スマートフラッシュ・ドライブがカギ。安全領域が確保された、マウンチューンのエンジンマッピングで制御する。

ソフトウエアは、スマートフォンからオン・オフが自由。思わず一緒に導入したくなる、排気系のチューニングは残されている。

基本的なフィエスタST マウンチューンM235ならこれで終わりだが、今回の試乗車はマウンチューン社の開発用デモ車両。ふんだんに用意されるチューニング・メニューが、全部乗せの状態になっている。

選べるチューニングパーツ

マウンチューン社製のハイフロー・インダクションホースは、85ポンド(1万1000円)。美しい仕上げのスロットルボディ・エルボーは、99ポンド(1万3000円)。

グリルを覗くと、試作品のインタークーラーが見える。外気温に関わらず優れた性能を保証するもので、価格は350ポンド(4万6000円)が予定されている。

専用のスプリングで、車高は20mm低い。ストローク量が小さいだけで、負荷設定は標準のサスペンションと変わらないらしい。価格は未定だ。

変速時のストローク量を25%短くしてくれる、クイックシフト・キットは150ポンド(2万円)。フロントに302mm径ディスクが付くブレーキ・キットは、1295ポンド(17万円)となる。価格は天井知らず、というわけではないのが良い。すべては英国での場合だけれど。

ステッカーやリアウイング、マッドフラップなど、ボディを彩るアイテムもある。運動性能が増すことはなくても、見た目にアグレッシブさを加えてくれる。

エンジンを始動した段階では、標準のSTとM235との違いは明確ではない。湧き立つような排気音は深みを増し、整然とした車内で聞くサウンドとしては素晴らしい。

部分的にモニター式となるメーターパネルは、標準のままで見やすい。レカロシートは座り心地も良く、サイドサポートも充分。足を伸ばせば、丁度良い位置に3つのペダルが並んでいる。

8代目フィエスタSTは、ステアリングホイールの調整代が大きい。ドライビングポジションは素晴らしく、一部のより高価なクルマも見習ってほしいと思えるほど。

実際の道路環境で最も扱いやすいモデル

街なかでの乗り心地も、通常のフィエスタSTと変わらない部分。常に落ち着かず、臨戦態勢にあるようだ。マウンチューンの設定で悪化したとは思わなかったが、改善しているわけでもない。

恐らくマウンチューンM235を選ぶ人は、フィエスタSTのドライバーの中でも、かなり極端な走りを好む側に属するはず。乗り心地には、あまりうるさくないかもしれない。何より、M235を選んだのなら、街を出るのが一番。

通常のフィエスタは、実際の道路環境で最も扱いやすいドライバーズカーの1台。アルピーヌA110などと並ぶ、ロードーカーだといって良い。

走り出してわかるのが、変速するまでのパフォーマンスの伸び。レブリミットへ迫るほどエンジンは熱狂的になっていくが、マウンチューンが手を施したことで、そこへトルクが追加されている。

3速を選んだまま、直線では不足なく加速でき、タイトコーナーでは滑らかに素早く抜けていける。シャシーの能力をより引き出し、味わえる。

クイックシフト・キットが組まれていても、変速フィーリングは依然として少しあいまい。でも、シフトノブの操作が少なくても、走りの喜びが減じることはない。

マウンチューンM235が発揮するスピードは、これ以上必要ないと感じるほど。充分に速いが、リミテッド・スリップデフがなく、荒れた路面では特にパワーアップしたエンジンが空回りしてしまうようだった。

郊外の一般道を楽しみ尽くせる

少しヒステリックなフロントタイヤの挙動は刺激的にも感じるが、ほとんどの場面では一連の満足感を損なうだけ。35.6kg-mものトルクを活かすのなら、クワイフ社製のLSDとの組み合わせが理想的に思える。

タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4S。とてもソフトで、安定しているゴムだ。

エンジンのパワーアップだけでも充分な費用対効果といえるが、デモ車両のもう1つの特徴は、コーナリングのレスポンス。車高が低くなり、進路変更時の動きが適度に引き締められている。

鼻先も軽く、しっかり路面を掴むから、一般道ではアンダーステアになりにくい。しなやかな足でフロントが沈み込み、リアタイヤは外へスライドしやすい性格を得ており、テールの挙動もタイトだ。

攻め込んでいくとワイルドな身のこなしに感じられるが、実際には懐が深く、寛大さも残っている。この味わい深さは、クラスでもトップレベルといえるだろう。

きちんとした操作には、きちんとした走りで応えてくれる。遊びたがりだが、しっぺ返しはない。郊外の一般道を、思う存分楽しみ尽くせる。

M235のデモ車両で筆者好みではなかったのが、スポーツ・モードとトラック・モードが用意されたエグゾーストシステム。アクセルペダルを戻した時のドラマを求めるドライバーへ応えるべく、高回転域で右足を緩めると、雷鳴のような響きが聞こえてくる。

これはあえて加味されたサウンドで、アプリでオフにすることも可能。同時に、標準のフライホイールの慣性が減っているわけでもない。標準のフィエスタSTが持つ不満も、そのまま。

攻め立てれば最高の味わいを引き出せる

特にターボラグは残っており、4気筒1.6Lユニットをスーパーチャージャーで過給するトヨタ・ヤリスGRMNの良さにも改めて気づく。といっても、重箱の隅ではある。それ以外のドライビング体験は極上だ。

筆者はとても気に入った。マウンチューンM235は、ドライビング体験を間違いなく引き上げている。サスペンション・スプリングは開発中とのことだが、訴求力はある。車高が下がり、ポルシェ911 GT3 RS並みのフェンダーとタイヤのタイト感が出る。格好良い。

機敏さが増し、ドライバーがより楽しめるフォード・フィエスタST マウンチューンM235。ただし、このセットアップでしなやかな走りを味わうには、標準のフィエスタSTより16km/hほどスピードを速めたい。状況によっては難しい条件だろう。

充分な負荷がスプリングにかからないと、常にドライバーは振動にさらされる。飛ばすしかない。インリフトする勢いでマウンチューンM235を攻め立てて走れば、最高の味わいを引き出すことができるはずだ。

フォード・フィエスタST マウンチューンM235(英国仕様)のスペック

価格:2万2570ポンド(298万円)/890ポンド(11万8000円:エンジン・アップグレードキット)
全長:4040mm(標準フィエスタ)
全幅:1735mm(標準フィエスタ)
全高:1476mm(標準フィエスタ)
最高速度:241km/h(予想)
0-100km/h加速:6.0秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1262kg
パワートレイン:直列3気筒1500ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:235ps/5550rpm
最大トルク:35.6kg-m/3500rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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