■王道ではないスバルのスポーツモデルを振り返る
2020年10月5日に北米スバルのサイトで、突如、新型「BRZ」のティザーサイトが公開されました。とはいうものの、前輪まわりの画像が公開されただけで、全体像やスペックなど詳細は明らかになっていません。
これまで、BRZと並んでスバルの王道スポーツモデルといえば、「インプレッサ WRX STI」や「WRX STI」がありましたが、そうしたモデル以外にも過去にさまざまなスポーツモデルが存在。
そこで、歴代スバル車のなかから、異色のスポーティモデルを5車種ピックアップして紹介します。
●レオーネRX/II
1971年にデビューしたスバル「レオーネ」は、悪路だけでなくオンロードでの走りにも4WDが有効であると証明した、初の量産国産車であり、いまに続く「シンメトリカルAWD」の原点といっていいクルマです。
そして、1984年には4ドアセダンが3代目にモデルチェンジされ、当時の流行を取り入れた直線基調のシャープな外観となり、1985年に、スタイリッシュな3ドアハッチバッククーペの「レオーネクーペ」が登場。
1986年には135馬力(グロス)を発揮する1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンと、スポーツドライビングを重視したスバル初のフルタイム4WDシステムを搭載する「レオーネRX/II」が追加ラインナップされました。
前後駆動力配分は50:50で、低重心の水平対向エンジンと強化された専用サスペンションとの組み合わせで、高いコーナーリング性能を発揮。
外観ではフロントスポイラーやリアスポイラー、サイドステップなど、いわゆる「フルエアロ」を標準装備することで、質実剛健なイメージが強かったレオーネを華やかに演出しています。
1989年に初代「レガシィ」が発売された後もレオーネを併売していましたが、車種整理がおこなわれ、クーペやステーションワゴンは生産を終了しました。
●アルシオーネ
1985年に発売された2ドアクーペのスバル「アルシオーネ」は、レオーネのラインナップとは異なるスペシャリティカーとしてデビュー。
アルシオーネ最大の特徴は、空力性能を極限まで追求したことで、空気抵抗を推し量るCD値(空気抵抗係)は0.29と、国産車で初めて0.3を下回る数値を実現しています。
そのためボディ各部に空気抵抗低減策が盛り込まれ、同社初で唯一のリトラクタブルヘッドライトとしたクサビ型のフォルム、ドアノブやウインドウのフラッシュサーフェイス化、ダックテール状のトランクリッドなどを採用。
内装のデザインも非常に個性的で、インパネやハンドル周り、シフトノブは、飛行機のコクピットをイメージさせる作りとなっています。
駆動方式はFF(2WD)と4WDが設定され、エンジンは発売当初、レオーネと共通の1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンのみでしたが、後期型ではスバル初の新開発2.7リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンが追加されます。
また、トップグレードには自動で車高を調整するエアサスペンションが採用されるなど、技術的にも意欲作でした。
しかし、販売面では苦戦を強いられ、1991年に後継車の「アルシオーネSVX」にバトンタッチしました。
●レガシィB4 3.0R
前述のとおり1989年に初代レガシィが誕生。トップグレードに高性能な新開発2リッター水平対向4気筒ターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせた、セダン/ステーションワゴンとして大ヒットを記録しました。
その後、初代のコンセプトを引き継いで代を重ね、2003年に登場した4代目レガシィでは、シリーズ初の3ナンバーボディとなったことや、等長エキゾーストマニホールドの採用により、スバルの水平対向エンジン独特の「ボクサーサウンド」が消えた新世代のレガシィとして話題となりました。
スバルの高性能モデルといえばターボエンジンの搭載が不可欠でしたが、2003年に追加ラインナップされた「3.0R」は、最高出力250馬力を発揮する3リッター水平対向6気筒エンジンを搭載。
2リッター水平対向4気筒ターボ車とは異なる6気筒ならではのエレガントかつパワフルなフィーリングが特徴でした。
さらに2004年には、専用チューニングが施されたビルシュタイン製ダンパーや、専用の外装パーツ、18インチホイールを装備する「3.0R Spec B」が登場し、さらにスポーティさに磨きをかけました。
当初、トランスミッションは走りを重視したことで6速MTのみとなっていましたが、後に5速ATを追加し、大排気量自然吸気エンジンのフィーリングを幅広いユーザー層にアピールします。
なお、国内のレガシィB4ではこの3リッターが最大排気量でしたが、北米仕様には3.6リッターエンジンを搭載した「3.6R」が設定されていました。
■今はなきスバルの軽自動車にも高性能モデルが存在
●ヴィヴィオRX-R
1987年に550ccエンジンながら最高出力64馬力を誇ったスズキ「アルトワークス」が発売されると、軽自動車市場では第2次パワー競争が勃発。ダイハツや三菱も次々と64馬力の高性能モデルを発売しました。
そして、スバルも軽自動車の「レックス」に代わって、1992年に「ヴィヴィオ」を発売し、パワー競争に加わります。
トップグレードのヴィヴィオRX-Rには、最高出力64馬力を発揮する660cc直列4気筒スーパーチャージャーエンジンを搭載。
駆動方式はFFとフルタイム4WDを設定し、トランスミッションは5速MTのみとなっています。
外観はやや丸みを帯びた比較的オーソドックスな3ドアハッチバックですが、RX-Rではボンネットのエアスクープや、ラリーカーをイメージさせるフォグランプが装着されるなど、スポーティに演出。
さらに、軽量化と足まわりなどがチューニングされたモータースポーツベース車の、「RX-RA」が設定されるなど、レースでも活躍しました。
しかし、軽自動車の人気モデルは軽トールワゴン/ハイトワゴンへと移行し始めたことで、ヴィヴィオは1998年に生産を終了。後継車はトールワゴンの「プレオ」です。
●R-2 SS
スバル初の市販4輪自動車である「スバル360」は、庶民でもマイカーを持つことを夢から現実に変えた、日本の自動車史に残る偉大な軽自動車です。
このスバル360の後継車として、1969年8月に発売されたのがスバル「R-2」です。
「てんとう虫」の愛称で呼ばれたユニークなスタイルのスバル360とは違い、R-2はオーソドックスな2BOXタイプのデザインを採用。
個性は薄れましたがスバル360よりも広くなった室内によって、居住性と実用性は大幅に改善されました。
リアに搭載されたエンジンは360cc空冷2サイクル2気筒がスバル360から踏襲され、出力は30馬力を発揮。400kg台の軽量な車体には、十分な出力です。
そして、1970年には36馬力を誇るスポーツバージョンの「R-2 SS」が加わりました。
R-2 SSは内外装もスポーティに演出されており、フロントにはカナードのようなスポイラーや砲弾型フェンダーミラー、フォグランプを装着。内装ではスポーツシート、タコメーターが装備されました。
また、R-2 SSよりもエンジンはデチューンされながらスポーティな装備の「スポーティデラックス」もラインナップ。
1972年には水冷エンジンを搭載するなどラインナップを拡充しましたが、よりモダンなデザインの「レックス」にバトンタッチし、1973年にR-2は生産を終了しました。
約12年間販売されていたスバル360に比べ、4年間の販売にとどまったR-2は販売台数が少なく、かなりの希少車です。
※ ※ ※
2019年から2020年にかけて、スバルは大幅な車種整理をおこないました。なかでも衝撃的だったのが、レガシィB4の販売終了です。
また、高性能セダンのWRX STIも、EJ20型エンジンの生産終了とともに、販売を終えました。
スバルファンにとってはショッキングな出来事でしたが、決して高性能モデルの火が消えたわけではありません。
BRZもすでに生産を終えていますが、トヨタ「86」とともに新型モデルへフルモデルチェンジすべく、開発が進められています。
これから世代交代がおこなわれ、スバルらしい新たな高性能モデルも登場する予定となっているので、期待して待つことにしましょう。
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みんなのコメント
今乗ったらどんな風に感じるんだろう?
アルシオーネも面白そう。
ヴィヴィオは文句なしに速くて楽しかった。
高速の伸びも良かったんだよねー。