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【ガチンコ4番勝負】 人気車とイマイチ車 その違いはどこにある?

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【ガチンコ4番勝負】 人気車とイマイチ車 その違いはどこにある?

 月々の販売台数を眺めていると、「あれっこんなものなの?」と、思っていたほど売れないクルマがあるいっぽうで、そのライバル車が爆売れ! という現象も。そんな「人気車」と「イマイチ車」とを分けてしまった理由はどこにあるのだろう?

 そこで今回は「ガチンコ4番勝負」と銘打ち、販売台数でリードする人気車、それを追う、ちょっとだけ“惜しいクルマ”とでweb上対決を組んでみた。

【水野和敏が斬る!!】 小型車作りのノウハウは日本車が欧州をリードする

 売れてるクルマとちょっと惜しいクルマ、その違いが見えてくるかもしれない。

〈取り組み表〉


■コンパクトSUV対決! ヴェゼル 対 CX-3


■コンパクトカー対決! ノートe-POWER 対 フィット


■SUV対決! ハリアー 対 エクストレイル


■軽スーパーハイトワゴン対決! N-BOX 対 タント

※本稿は2017年12月のものです


※日産は2017年10月から完成車検査問題で出荷停止しているため、今回紹介するクルマの累計販売台数はその影響を受けています


文:渡辺陽一郎(判定・立行司)、永田恵一、国沢光宏、片岡英明ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部


初出:『ベストカー』2018年1月10日号

【コンパクトSUV対決】ホンダ ヴェゼル 対 マツダ CX-3

(TEXT/渡辺 陽一郎)

 人気のコンパクトSUVの2台だが、販売台数ではヴェゼルがCX-3を大きくリード。まさに「立ち合い一気の寄り切り」状態。両車の明暗をチェックしていく。制限時間いっぱいだ。

 世界的にSUV人気は続くが、特に日本ではコンパクトSUVが売れ筋。が、車種によって売れゆきが異なり、CX-3はヴェゼルの約24%となっている。明暗が分かれた理由はどこに? テーマを挙げながら検証していきたい。

※今回の実燃費計測


■走行距離:66.6km(ほぼ高速道路を巡航)


■ヴェゼルハイブリッド(4WD):16.9km/L


■CX-3 ディーゼル(4WD):22.1km/L

■ハンドリングはどうだ?

 ヴェゼルのハイブリッド(HV)は1.5Lエンジンがベースだから、車両重量は1.5Lのクリーンディーゼルターボを搭載するCX-3よりも少し重いが、操舵感は軽快。走行安定性も優れる。その代わり乗り心地は少し粗く、運転感覚はよくも悪くもコンパクトカー的。

 それに比べるとCX-3には重厚感がある。峠道ではボディの重さを意識するが、どっしりした印象で直進安定性がいい。乗り心地にも粗さがなく、ミドルサイズSUVの運転感覚に近い。

 また、動力性能もCX-3のディーゼルが力強い。1600~2500回転の実用域で2.7Lのガソリンエンジンに匹敵する駆動力を発揮する。アクセルペダルを軽く踏むだけで、必要な加速力が得られる感覚だ。

 ヴェゼルHVは直噴エンジンがベースで、モーターの駆動力を含めると加速性能は1.8L並みといっていい。ガソリンエンジンらしい機敏な吹き上がりは、前述の軽快な操舵感ともマッチしてバランスはいい。それでも運転感覚が上質なのは、直進安定性が優れ、実用回転域の駆動力が高いCX-3といえそうだ。

■燃費はどうだ?

 今回、2台の実用燃費を計測してみた。ほぼ高速道路を巡航するという状況だったが、ヴェゼルHVは16.9km/L、CX-3のディーゼルは22.1km/L(両車とも4WD)であった。軽油価格の安さも含めると、CX-3の燃料代はヴェゼルHVの約64%ですむ計算となる。

 ヴェゼルの燃費はHVとして情けない印象だが、JC08モード燃費もHV Zホンダセンシングの4WDは21.6km/Lにとどまる。1.5Lのノーマル直噴エンジンを搭載した4WDが19.0km/Lだから、ヴェゼルのHVシステムは燃費だけでなく動力性能にも重点を置いているといえる。今回の試乗中も、ヴェゼルHVはエンジンを停止させてモーターだけで走る時間が短かった。

■そのほかの機能はどうだ?

 SUVが人気を得た理由は、大径のタイヤなどによるスタイルの格好よさ、ワゴンや5ドアハッチバックと似たような空間を広くとったデザインによる居住性や積載性が優れているからだ。

 ヴェゼルはこのSUVの特徴を生かして開発され、前後席ともに居住性がよく快適。ラゲッジ容量も大きく、シートアレンジが多彩だから荷物も積みやすい。ファミリーカーに適した実用性も備えて人気を押し上げたわけだ。

 いっぽうのCX-3はそれとは対称的で、ドライバーを中心に据えて開発されているといっていい。前席の座り心地は快適で運転姿勢も自然だが、後席の足元空間はヴェゼルに比べて大幅に狭い。ラゲッジのアレンジも単純。ファミリー向けではなく、価値観が2名で乗車するクーペに近い感覚。

■最後に、コスパはどうだ?

 ヴェゼルHV Zホンダセンシング4WDに、電動パワーシートをオプション装着すると価格は300万4800円。CX-3 XD・Lパッケージ4WDは、これらの装備をセットにして303万4000円だからほぼ同額になる。

 そして機能を比べると走行性能、操舵感、乗り心地、燃費ではCX-3が勝る。その半面、後席の居住性、ラゲッジの積載性といった実用面はヴェゼルが大幅に優れている。

 これらの要素を見ていくと、コスパではCX-3よりヴェセルが優位になり、ファミリーカーとしての実用性も高い。ヒットも納得である。

■まとめ…軍配はヴェゼル! その勝因は?

 走りの質感ではCX-3も魅力だが、後席の居住性、ラゲッジの広さとシートアレンジ、収納設備の使い勝手などを含めるとヴェゼルが買い得だ。総合力で勝ち名乗り。

【永田恵一の視点】 後席の快適性に見るヴェゼルとCX-3の違い

 広いフィットをベースに広いコンパクトSUVを目指したヴェゼルと、室内空間は標準的なデミオをベースに広さよりも格好よさを重視したコンパクトSUVというコンセプト通りというか、後席の居住性はヴェゼルの圧勝だ。

 ヴェゼルとCX-3の後席は膝前の長さの差も大きいが、CX-3はヘッドクリアランス(頭上)の小ささに加え全体的に開放感にも欠けており、この点もCX-3の後席の広さ感を大きく損なっているように感じた。

 ただ、CX-3の後席もコンパクトSUVとしては充分納得できる広さを確保している仕上りになっている。リアシートの使用頻度が低い人であればスタイルを重視してCX-3を選んでも、不便を感じることはほとんどないと思う。

【コンパクトカー対決】 日産 ノートe-POWER 対 ホンダ フィット

(TEXT/渡辺 陽一郎)

 2017年5月「ノートが日産車では30年ぶりの月販台数1位」となったが、大きく貢献したのがノートe-POWER。ここ数カ月は無資格検査発覚で停滞しているが、2017年トータルで見るとライバルのフィットを“はたき込むように”引き離す。その差はどこからきたのか?

 フィットは2001年の発売以来高い人気を保っているが、ノートが2016年にe-POWERという“飛び道具”を加えて売れゆき増大。2017年全体では販売順位が逆転している状況だ。

■今回の実燃費計測


・走行距離:66.6km(ほぼ高速道路を巡航)


・ノートe-POWER:23.4km/L


・フィットハイブリッド:25.7km/L

■ハンドリングはどうだ?

 ノートe-POWERは駆動用モーターと併せて発電機も搭載するなど機能がやや複雑。それもあり車両重量は、ノーマルエンジン車を170kg上回り、フィットハイブリッド(HV)と比べても70kgほど重い。

 そのためにコーナーを曲がったり車線を変える時は、ボディの重さがつい気にかかる。基本的には後輪の接地性を優先させた設定で不安はないが、峠道では旋回軌跡を拡大させやすいので曲がりにくく感じてしまう。

 対するフィットHVはボディが軽く、2017年にボディ剛性と足まわりを改良。安定性や操舵に対する車両の反応はノーマルエンジン車に近く、峠道ではノートe-POWERよりも自然な感覚で運転できる。軽快感も伴う。

 ゆえに走行安定性はフィットHVが優れるが、動力性能はノートe-POWERの圧勝だ。エンジンは発電機として使われ、駆動はモーターだから、アクセル操作に対する加減速の反応が素速い。追い越しなどでは2.5Lクラスのガソリンエンジンを積んでいる感覚の加速で、フィットHVは1.5Lなりの加速感。またエンジンが発電を行い、駆動はモーターが担当する仕組みだからノイズは小さい。

■燃費はどうだ?

 JC08モード燃費はノートe-POWERが優れるが、今回の実燃費は23.4km/L。対するフィットHVは25.7km/Lで上回った。ただし数値の違いは10%以下。

■そのほかの機能はどうだ?

 前後席の広さは両車ともに同程度だ。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、Lサイズセダンと同等の握りコブシ2つ半。その上で比べると、ノートe-POWERにリラックス感覚が伴い、4名乗車時の居住性も少し上回る。

 逆にラゲッジの使い勝手はフィットHVが勝る。燃料タンクが前席下の搭載なので荷室の床が低く積載容量も大きい。シートアレンジも多彩。居住性ならノートe-POWER、積載性などの実用性ならフィットHVが勝るとなる。

■最後に、コスパはどうだ?

 ノートe-POWERメダリストの価格は232万9560円で、フィット HV Sホンダセンシングは220万5360円。価格はノートe-POWERが高いが、駆動用モーターと発電機を併用するHVの違いを考えると、むしろ割安になる。エコ/パワーモードでは、アクセルペダルの操作だけで速度を自由に調節することも可能で、ノートe-POWERには付加価値が多い。

 そのためにHVの機能を重視するとノートe-POWERが買い得だが、フィットHVにはラゲッジの多彩な機能が備わる。安全装備面もホンダセンシングのほうが高機能だ。それでも、“e-POWER”という新たなシステムがユーザーに合致したことが決め手になり、フィットをリードしているといえそうだ。

■まとめ…軍配はノートe-POWER! その勝因は?

 フィットHVはラゲッジが広く安全装備も充実してお買い得。が、動力性能や走りの楽しさ、快適性を重視するとノートe-POWERに軍配が上がる!

【永田恵一の視点】 後席の快適性に見るノートとフィットの違い

 両車ともコンパクトカーのなかでもスペースを重視したクルマだけに充分なヘッドクリアランス(頭上)と、足を伸ばして組めるほどの膝前の長さを確保。特に膝前の長さに関してはノートe-POWERが大きなアドバンテージだ。

 が、フィットHVも十二分に広く、かなり身長の高い人でもくつろげることを踏まえると、ノートe-POWERの膝前の長さが広いのも、フィットHVに対して約100mm長い全長を考えると当然といえば当然。さらにノートe-POWERの後席は着座位置が低く足を投げ出すような姿勢になるのに加え、座面が柔らかすぎて長時間座ると疲れそうに感じるのを考慮すると……、総合的な後席の居住性はフィットHVに軍配を上げたい。

【SUV取組】 トヨタ ハリアー 対 日産 エクストレイル

(TEXT/片岡英明)

 2017年ハリアーは2Lターボを追加し、エクストレイルはマイナーチェンジ(MC)を受けて、両車同時に魅力に磨きをかけた。トヨタと日産の看板を背負ったSUVがまさに“がっぷり四つ”……なのだが、現状ではハリアーが販売面で頭ひとつ出ている。この差は!?

 プレミアムSUVの元祖ともいえるハリアーは、現行モデルで3代目。2013年11月のデビューだが、多彩なラインアップがある。ガソリンの2Lモデルのほか、4WDと組み合わせた2.5Lエンジン+ハイブリッド車を設定。

 200万円台で手に入るリーズナブルなグレードから500万円に迫る高級SUVまで品揃えは豊富だ。6月にMCを行い、さらに仲間を増やし、魅力を増した。

 最大のニュースは2Lモデルに直噴ターボが追加されたことだ。また、フェイスリフトを行い、リアコンビランプにLEDランプを組み込んだほか、内側から外側に流れるシーケンシャルターンランプも採用している。

 それだけではない。待望の衝突回避支援の安全装備、トヨタセーフティセンスPも全車に標準装備としている。

 新設定のターボ車は、3.5Lクラスの分厚いトルクを発生するのが魅力だ。6速ATだから応答レスポンスは鋭いし、加速も支えている。

 ハンドリングも軽快。ターボ車はパフォーマンスダンパーを装備し、スポーツモードを追加。インテリアの質感も高い。これがエクストレイルより車格を上に見せることに成功している。

 いっぽう、エクストレイルも同じ時期にMCを実施した。フェイスリフトを行って見栄えをよくするとともに、同一車線自動運転技術のプロパイロットを採用している。また、足で開閉操作できるバックドアなど使い勝手のアイデアも増え、満足度は高い。

 さらに走りの実力も高い。特に4WDモデルは非凡な走破性能を秘め、痛快な走りを楽しめる。ハイブリッド車は加速も軽快だ。

 だが、MCで走りの実力を高めることはしなかった。デザインも洗練されたが、タフなイメージやSUVらしいラギッド感を好む初代と2代目のオーナーは物足りなく感じている。これらの部分がライバル、ハリアーに今一歩及ばない要因だろう。弾け切れていない感じがする。

■まとめ…軍配はハリアーに! その勝因は?

 先代までのエクストレイルは主張が強かったが現行車はやや存在感が薄い。2Lターボを追加し先進安全技術も標準装備……というハリアーには及ばず。

【軽スーパーハイトワゴン取組】ホンダ N-BOX 対 ダイハツ タント

(TEXT/国沢光宏)

 本企画結びの一番は軽スーパーハイトワゴン対決。ニューモデルに切り替わったN-BOXがタントを圧倒か!?

 本来このカテゴリーは圧倒的にタントが強かった。けれど新参のN-BOXに最初から抜かれ、そしてさまざまな手段で勝負を仕かけるもまったく歯が立たず、新型が出たら背中すら見えなくなるほど引き離されてしまう。なんでこうなったのか。

 こらもう簡単。ダイハツに「夢」や「やさしさ」がないからである。ダイハツ、上手に宣伝することに重点を置くだけでクルマは売れると思っているようだ。軽自動車のユーザーを見切ってる??

 そもそもユーザーにとって最大の「思いやり」というのは、事故を起こしにくいクルマを作り、そして万一事故に遭ってしまった時も、ケガしないようなクルマにすることだと考える。

 例えばサイド&カーテンエアバッグ。来年から衝突基準が厳しくなり「側面ポール衝突モード」(横滑りして電信柱にブツかったような状況。非常に厳しい)を導入するけれど、サイド&カーテンエアバッグなしだと、26km/hで当たって死ぬ可能性大。

 ホンダの場合、軽自動車ユーザーも普通車ユーザーも安全の価値は同じと考えているため、N-BOX全グレードに4万3000円で装着可能。

 タントを見ると、現時点での衝突基準(ポール側突なし)に有効なサイドエアバッグこそ付いているが、危険なのはカーテンでカバーする側頭部。サイド&カーテンエアバッグを装着できるのは上からひとつ下の1グレードのみで、8万6400円もする! 売る気をまったく感じない設定だ。

 自動ブレーキも同じ。J-NCAPの試験結果を見たら、停止している車両に対しノーブレーキで接近して止まれる速度は、N-BOXの50km/hに対し、タント40km/h!

 車両の陰から出てくる歩行者を検知しての自動ブレーキまで行っているN-BOXに対し、タントは「データなし」(止まれない)。一事が万事、N-BOXと違う。

 日本のユーザーは慧眼だ。同じような金額出すのなら、迷うことなく、N-BOXを選ぶでしょうね。

■まとめ…勝者はN-BOX! その勝因は?

 軽と普通車との間で安全装備に差がなく割安に装着できるN-BOXに対し、性能で劣るサイド&カーテンエアバッグや自動ブレーキが割高なタントでは厳しい。

〈参考:2018年7月期の販売台数〉


■ヴェゼル……4724台(ハイブリッド含む)


■CX-3……849台


■ノートe-POWER……1万1256台(ノート含む)


■フィット……9144台(ハイブリッド含む)


■ハリアー……3750台(ハイブリッド含む)


■エクストレイル……3759台(ハイブリッド含む)


■N-BOX……1万9098台


■タント……1万708台

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