ドライバーへの情報伝達量の増加に対応して、大型化と形状の複雑化が進む車載ディスプレイ。メルセデスベンツのSQSやEQE、Eクラスがダッシュ全面を覆う大画面の液晶ディスプレイを採用し、話題になっていますが、ディスプレイの巨大化や形状の複雑化は、今後さらに進むと予想され、それを覆うカバーガラスにもさらなる進化が求められています。
また、フロントガラスに各種情報を表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)も普及が進んでおり、さまざまな用途に対応できるガラスも必要。クルマに使用されるガラス素材の現状と今後の動向について、ご紹介します。
衝撃!! 液晶ディスプレイの大画面化はどこまで進むのか? 進むといいことがあるのか?
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、NISSAN、Mercedes Benz
合わせガラスの中間膜を調整して実現した「調光ガラス」
クルマのフロントガラスには、2枚のガラスの間に柔らかで強靭な透明樹脂フィルムの「中間膜」を挟んだ3重構造となっている合わせガラスを使用することが義務付けられています。強い衝撃を受けてもヒビが入るだけで視界を妨げることなく、粉々に砕け散ることもありません。また、中間膜が衝撃を吸収するので、事故の際に人体が衝突しても、強化ガラスより割れやすく、ダメージを軽減するようになっています。
近年は、この中間膜の素材を工夫することで、用途に合わせた様々なガラスが登場しています。最近注目されているのが、ガラスの色味を一瞬で変更できる調光ガラスです。例えば、トヨタ「ハリアー」のパノラマルーフに採用されており、スイッチ操作でクリアと乳白色に変更できます。
調光ガラスは、2枚のガラスの間に特殊なフィルムを挟み込むことで、日差しを和らげる調光(遮光)モードと、透過(通常の透明)モードを電気信号で瞬時に切り替えることが可能となっており、パノラマルーフへの採用例が増えています。フロントガラスには法規上の問題で使えませんが、今後、サイドガラスやリアガラスへの適用が期待できます。また近年は、重量がかさみがちなガラスの代わりに、ポリカーボネート樹脂(PC)を使用するという開発も活発に行われています。
2020年発売の新型ハリアーの調光パノラマルーフ (左図:透過状態、右図:遮光状態)
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ガラス中間膜の調整で今後さらに表示エリアが拡大できるHUD
近年普及が進んでいるHUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)も、ガラス技術の進化によって可能となったものです。HUDは、インパネの裏側に配置されたプロジェクターから投射されたナビ情報や車速、シフト位置などの情報を、反射ミラーや拡大ミラーを通して前方2~3mほど先の虚像としてフロントガラス下面に映し出す表示技術ですが、今後は、周囲の景色に情報を重ねて表示するAR(拡張現実)を活用したAR HUDの登場などによって、さらにフロントガラスの広いエリアを使って普及することが予想されます。さらには、2次元映像でなく3次元映像を表示するデジタルホログラムのHUDも開発されています。
HUD用のガラスには、フロントガラスの内面に特殊な塗料をコーティングしたり、中間膜を使ってプロジェクターのように映像を投影するのが一般的ですが、中間膜に発光材料を使ってフロントガラス全面に投影できるAR HUD用ガラスや、ホログラム対応のガラスの開発も進められています。
新型エクストレイルに搭載されているHUD(写真では、車速と制限速度、進路を表示)
次世代ディスプレイのカバーガラスは「より薄く、より強く」が必須
液晶ディスプレイは、映像を映し出す液晶パネルの上にタッチパネルや光学粘着剤を塗布し、その上をカバーガラスで覆っていますが、ディスプレイの面積が大きくなれば、ガラスはそのぶん強度を高める必要があり、かつタッチパネルの機能を阻害しないため薄いガラスが必要。そのためディスプレイのカバーガラスには、ガラス表面に圧縮層を形成する特殊な強化ガラスが採用されています。
また湾曲したダッシュボードに張り付けるために必要となる技術として、ガラスを加熱することで軟化させて成型後に冷却して固める「ホットベンディング」や、板ガラスを部品形状に合わせて変形、固定する「コールドフォーム」のような成形加工法などが開発されています。将来的には、HUDと同様に、大画面の液晶画面にホログラム映像が浮かび上がり、助手席でも情報が確認できる立体的な3D画像が出現することが予想され、これに対しても高度なガラス技術が必要となります。
メルセデスベンツの新型「Eクラス」には、ダッシュ全面に高画質な大画面の液晶ディスプレイが装備されて注目を集めている
◆ ◆ ◆
ドライバーへの情報伝達の量と質の向上が求められるなか、その表示デバイスであるウインドウガラスや液晶ディスプレイは今後さらに注目度が増していくことでしょう。従来の透明で硬くて曲がらないガラスでなく、多種多様なパネルに対応できるガラス技術の飛躍的な進化が期待できそうです。
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みんなのコメント
利点なんて商品力の強化、同じ部品を他車種でも使いまわしてのコストダウン、物理ボタンを廃する事によるコストダウンあたり以外に何があるというのか。