国内だけでなく海外でも人気のコンパクトSUV。今回は、ドイツとフランスという国の違いを象徴するかのような、2台をピックアップ。乗り比べて違いを確かめてみた。
全長4.5m前後のコンパクトSUVは、使い勝手のよさから日本市場だけでなく、欧州市場でも人気だ。次々とニューモデルが登場し、最新技術を競っている。
BMWで最もコンパクトなSUVが『X1』。最新モデルは今年2月に登場した3世代目。欧州のSUVはこのクラスに限らず、パワーユニットのバリエーションが多いのが特徴だ。『X1』もデビュー当初は、2Lのガソリンターボと、航続距離465kmの電気自動車『iX1』を用意した。さらに今年5月には2Lのディーゼルターボを追加。しかもこのディーゼルは48Vマイルドマイルドハイブリッドシステムを搭載している。
一方のシトロエン『C5エアクロスSUV』は、2019年にシトロエンのフラッグシップモデルとして登場。2022年11月には新しいデザインコードの下、フロントマスクを刷新した。また、この『C5』もデビュー当初から1.6Lのガソリンターボ、2Lのディーゼルターボのほかに1.6Lガソリンターボ+モーター1基を加えたプラグインハイブリッドモデルを用意している。今年6月には同モデルのEVモードでの航続距離を65kmから73kmに伸ばした改良型を発表、バリエーションの拡充に力を入れている。
今回紹介する2車は、いずれも2Lディーゼルターボエンジンを搭載。ボディーサイズは全長は同じだが、全幅と全高はシトロエンのほうが大きい。フランス車は欧州ブランドの中でもエンジン排気量に対して、ボディーが大きいという特徴がある。しかし、車両重量はBMWのほうが70kgも重い。ボディーが大きいのに車重が軽いシトロエンは、素材をうまく活用して軽量化を図っている。
また、2Lのディーゼルターボエンジンは、アイドリング時から3000回転まではBMWのほうが静かでエンジン音の抑え込みがしっかりしている。一方のシトロエンはBMWほど遮音性を強化している印象を受けなかった。また、動力性能については、0→100km/hの加速を計測してみるとBMWが8秒台、シトロエンは9秒台前半で、約1秒の差があった。
乗り味については、カチッとしているBMWに対し、シトロエンは座席のソフトなクッション性に代表されるように柔らかい居住空間づくりが特徴。乗り比べてみるとどちらが自分に合う感覚かはっきりわかるだろう。
洗練されたデザインと最新の運転支援システムを搭載
BMW『X1』
Specification
■全長×全幅×全高:4500×1835×1625mm
■ホイールベース:2690mm
■車両重量:1740kg
■排気量:1995cc
■エンジン形式:直列4気筒ディーゼルターボ
■最高出力:150PS/4000rpm
■最大トルク:360Nm/1500~2500rpm
■変速機:7速AT
■燃費:19.5km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:659万7000円
※「XDrive 20d M Sport」
キドニーグリルは正方形に近い大型グリル。デイタイムランニングライトは、環状のシグネチャーを2回繰り返すLEDライトを採用。下部のグリルからの空気を取り入れるデザインも実用的だ。
ドアハンドルをドアパネルと一体化させたフラッシュハンドルを採用。これもBMWの新しいデザインで空力特性を重視している。ドアミラーも見やすい。
リアのデザインは水平方向のキャラクターラインと立体的なLEDコンビネーションライトが特徴。リアゲートの開口部は『C5』よりわずかに低い。全幅は『X1』のほうが15mm狭い。
マッスルなデザインが新しいフレンチSUV
シトロエン『C5 AIRCROSS SUV』
Specification
■全長×全幅×全高:4500×1850×1710mm
■ホイールベース:2730mm
■車両重量:1670kg
■排気量:1997cc
■エンジン形式:直列4気筒ディーゼルターボ
■最高出力:177PS/3750rpm
■最大トルク:400Nm/2000rpm
■変速機:8速AT
■燃費:17.1km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:568万円
※「SHINE PACK Blue HDi」
新世代のフロントデザイン。シトロエンのアイコン、ダブルシュブロンを中心にしたグリルと平行した2本のデイタイムランニングライトが特徴。バンパー左右には空気取り入れ口も。
全長は『X1』と同じだが、ホイールベースは40mm長く、全高も85mm高いプロポーション。ルーフレールもがっしりとしている。ドアの下部にある四角形はシトロエンのSUVを特徴するデザイン。
横幅より高さを強調したリアデザイン。ゲートの開口部は『X1』よりわずかに低く、床面との段差も小さい。サブトランクのスペースも高さは約100mmで、床面のほぼ全体に広がっている。
走破性や運転支援システムのレベルも高いバランスの取れたSUV
BMW『X1』
エンジンルーム
今年5月からディーゼルを追加。48Vマイルドハイブリッドシステムも搭載。実走燃費は22.0km/Lを記録。音も振動も抑えられている。
運転席と各種装備
メーターパネルとコントロールディスプレイを一体化させた、弧を描くようなインパネのデザイン。シフトレバーも小さな形状に変更。
シートスペース
M Sportグレードなので、ホールド性の高いシートを装備。後席は4/2/4で背もたれを前に倒せる。床面の出っ張りも小さい。
ラゲージスペース
奥行きは『C5』より100mmほど短いが左右幅は1m以上確保されている。トノカバーと床面の間も500mm以上あって荷室は広い。
【 ココがポイント!】洗練された上質なデザインと空間づくり
BMWの最新SUVはセンターアームレストの下に、小物が置ける空間を設けているインテリアが特徴。こういった解放感で運転ストレスを軽減する効果がある。シフトノブなど随所に新しさが見られる。
【 ココがポイント!】居住空間をリッチにするオーディオシステム
Amazon Alexaが利用できることで、スマホアプリを介した音楽配信も楽しめる。さらに楽しみを感動的にするのが、Hi-Lineパッケージに設けられたhaman/kardonのスピーカーシステム。
シトロエン『C5 AIRCROSS SUV』
エンジンルーム
2.0Lのディーゼルターボエンジンを搭載したFF車だが、グリップコントロールを搭載。スノー、マッド、サンドを選択でき、走破性も高い。
運転席と各種装備
大きめのセンターコンソールには、コンパクトなシフトレバーやドライブモードセレクターが備わっている。内装もクオリティーが高い。
シートスペース
すべての座席でシトロエン独自のコンフォートシートを採用。高密度のウレタンとスポンジを用いる手法と独特の座り心地が特徴。
ラゲージスペース
荷室は奥行き、左右幅とも『X1』より広い。テールゲートは電動式を採用。床下のサブトランクも広い。
【 ココがポイント!】シンプルですっきりしたシフト周りの設計と操作
シトロエンの新しい変速システムは、シフトレバーがなくなり、小さな突起を指先でつまむようにしてシフトする。今後はこの新しいAT用シフトに変わっていきそうだ。
【 ココがポイント!】3つに分割された後席は個別にスライドして便利
後席は3人掛けだが、座席も3等分されている。それぞれにスライドし、折りたたむことができる。クッションは前席と同じで快適な空間を確保。背を倒せばスライドして低くなる。
洗練されたデザインと質感はどちらもハイレベル
BMW『X1』
[運動性能]スタートからのアクセルレスポンスはPERSONALモードでもスポーティー。SPORTモードでさらに硬めの走りに。19点
[居住性]前後席のゆったりした空間は合格点。アイドリング中のエンジン音も静か。コンソール下の小物置きも便利。19点
[装備の充実度]最先端のドライビングアシスト機能を搭載。コネクテッドドライブやインテリジェントパーソナルアシストも装備。19点
[デザイン]各モデルごとに新しいキドニーグリルを採用している。『X1』は正方形に近い、縁取りの太いデザインを採用。18点
[爽快感]ボディーサイズもコンパクトで扱いやすく2Lディーゼルターボのトルクもスポーティー。燃費はカタログ値に近い。19点
[評価点数]94点
シトロエン『C5 AIRCROSS SUV』
[運動性能]基本的にはFF車だが、独自のサスペンション技術やアドバンスグリップコントロールなどもあり走破性が高い。19点
[居住性]ディーゼルのエンジン音はやや大きめ、室内空間は長いホイールベースと高さを確保していて乗り心地もいい。18点
[装備の充実度]安全装備は全モデルに最新のセーフティー&ドライバーズアシストを搭載。トラフィックジャムアシスト機能も便利。19点
[デザイン]フロントデザインはかなり凝っている。縦型のクロームのドットやバンパー下の開口部にもダブルシェブロンが。18点
[爽快感]2Lのディーゼルターボは低回転トルクの太さが魅力。FF車だがオンロードよりオフロード走行を楽しめそう。18点
[評価点数]92点
取材・文/石川真禧照
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年9月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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