ご承知のとおり「絶版スポーツ」の中古車相場は今、ちょっと大変なことになっている。そしてその中でも「MT車」の相場は特に強烈だ。
一例を挙げるなら2022年4月中旬現在、国産車ではマツダ RX-7(FD3S)のMT車最高値は「1412万円」で、輸入車でいうとポルシェ911(タイプ964)のMT車最高値は、ターボやRSではなく普通のカレラ2であっても「1920万円」である。
MTとATの価格差は300万円以上? そこまで高いお金出して買うべきか? ATやCVTでも楽しい中古スポーツカー
個人的にも客観的にも「マニュアルトランスミッションであることの素晴らしさ」は知っているつもりだが、さすがにこの価格はちょっと高すぎるのではないかと思う。
そして同時に、「MT車がこんなに高くなっちゃったなら、この際だから“同モデルのAT車”でもいいんじゃないか?」とも思ってしまう。
同じFD3Sやタイプ964であってもAT車であれば、おそらくは数百万円単位でお安く買うことができるはずだからだ。MTであることの魅力は捨てがたいが、「数百万円」だってそれと同様に、いやそれ以上に“捨てがたい”のである。正直申し上げて。
そこで、今回は、そこまで高いお金を出してMT車を買うよりも数百万円安いAT車(CVT車)を買っても楽しい中古スポーツカーを挙げてみたいと思う。
文/伊達軍曹
写真/TOYOTA、MAZDA、SUBARU
■MTとの価格差は……思ったほどではない?
トヨタ チェイサー(X100系 ツアラーV)
ということで、代表的な絶版スポーツのMT車/AT車それぞれの相場を調査したうえで、「最近はATの絶版スポーツを狙うほうが断然おトクですよ!」という記事を書こうとしたのだが……調べてみると、ここ最近は「AT絶版スポーツ」の相場も爆騰していた。
MT車とほぼ同じとまでは言えないが、「AT車の相場もMT車とそう大きくは変わらない」という時代になってしまったようなのだ。ううむ……。
具体例を申し上げよう。まずは1JZ-GTEエンジンを搭載したトヨタチェイサー、要するに「ツアラーV」の相場について。
1992年から1996年まで販売されたX90系の中古車流通量は今や僅少だが、1996年から2001年のX100系トヨタチェイサーツアラーVは今も豊富に流通しており、人気も高い。
で、そんなX100系チェイサーツアラーVの中古車相場は今、おおむね下記のとおりである。
【X100系トヨタチェイサーツアラー】
●全体(88台):170万~500万円
●MT車(72台):200万~500万円
●AT車(16台):170万~330万円
最安値同士で比べればAT車のほうが30万円安く、また最高値同士で比べた場合でもAT車のほうが170万円もお安い。だが「典型的な1台」同士で比べると、数字は下記のとおりに変わる。
●MT車の典型(走行15万km前後の車高調付き):250万~300万円
●AT車の典型(同上):210万~270万円
もちろん「AT車のほうが安い」とはいえるわけだが、「その差はさほど大きくはない」ということも、おわかりいただけるのではないかと思う。
■車種ごとに価格差を調査!
トヨタ スープラ(80系)
ならばトヨタ スープラ(80系)はどうだろうか? モデル全体の流通量は2022年4月中旬現在55台ほどで、そのうち65%がMT車で、AT車が35%。スポーツモデルの割にはAT車比率もまあまあ高いと言えるだろう。
で、そんな80スープラの現在の相場は下記のとおりである。
【80系トヨタスープラ】
●全体(55台):350万~1180万円
●MT車(36台):360万~1180万円
●AT車(16台):350万~750万円
最高値の物件同士で比べたときの価格差は430万円と強烈にデカいが、これは鳥取県で販売されている(しかも高すぎてなかなか売れない)走行3.4万kmのワンオーナー車という特殊な個体によるもので、「一般的なスペックの80スープラ」に絞った場合の数字は、下記のとおりに変化する。
●一般的なスペックのMT車:370万~900万円
●一般的なスペックのAT車:370万~700万円
高値圏では約200万円の差があるため、「やはりAT車のほうが断然安い!」と言うことはできるだろう。だが同時に「AT車なのに700万円もする!」ともいえるわけで、ひと昔前のように「AT車であればけっこう安く狙える」とも言い切れない状況に変化しているのだ。ううむ。
■AT車を狙う意義は十分あり!!
マツダ RX-7(FD3S)
さらに見てみよう。FS3Sこと最終型マツダRX-7である。モデル全体の流通量は108台となかなか豊富だが、そのうち99台はMT車で、AT車は9台しか流通していない。つまりFD3SのAT車比率は約8%と極端に低いのが現状だ。
それを踏まえたうえで、下記の数字を見ていただこう。
【マツダRX-7(FD3S)】
●全体(108台):270万~1410万円
●MT車(99台):350万~1410万円
●AT車(9台):270万~500万円
こればっかりはMT車とAT車の価格差はかなりデカそう。なにせ最高値同士で比べると900万円以上の差があるのだから。だが1410万円の最高値車と、そのすぐ下の「1180万円」が付けられている物件は人気限定車であるスピリットRの低走行物件であるため、やや特殊な存在および特殊な値付けであるといえる。
その2台を取っ払って数字を補正してみると、状況は下記のとおりに変わる。
●一般的なスペックのMT車:370万~770万円
●一般的なスペックのAT車:270万~470万円
最初に挙げた数字ほどではないが、MT車とAT車の価格差はそれでもけっこうデカい。FD3Sは、もしも「MTじゃなくてもいいかな?」と思えるのであれば、あえてAT車を狙ってみる意義はある選択肢と言えるだろう。
■輸入車のAT/MT価格差をみる
964型911カレラ4(1989年式)。カレラ4のMTは1000万円前後でも見かけるが、1991年までのカレラ2前期型のMTは1300万円前後
輸入車の絶版スポーツはどうなっているのだろうか? 代表的なところでドイツのポルシェ911(964型、1989~1993年)を見てみよう。
あまりにも高額なターボやRSを入れるとデータに「異常値」が発生してしまうため、最高出力250psの一般的な3.6L空冷フラットシックスを搭載した後輪駆動モデル「カレラ2」に絞った相場は下記のとおりである。
【ポルシェ 911カレラ2(タイプ964)】
●全体(51台):680万~1900万円
●MT車(22台):1000万~1900万円
●AT車(29台):680万~1600万円
これも、数字だけを見ていう分には「AT車のほうが断然お安い」という部類に入るクルマではあるだろう。なにせ最安値同士の場合で220万円、最高値同士でも300万円もの差があるのだから。
だが現実的な肌感覚に基づくのであれば、「AT(ティプトロニック)のカレラ2も鬼のように高くなってしまった!」と捉えるのが正解であるように思える。
筆者がティプトロニックの964型カレラ2を買った約10年前は、ごく一般的なコンディションのカレラ2ティプトロニック、つまり走行8万kmとか10万kmぐらいの中古車は、車両200万円台で普通に購入できた。
筆者が買った走行10万kmの1990年式も、ズバリ200万円だった。さらに状態が良い走行6万kmぐらいのカレラ2ティプトロニックでも、せいぜい300万円台か400万円台だったものだ。
しかし今、筆者が買ったような10万km級のカレラ2ティプトロニックでも700万円は下らず、よりスペックやコンディションが良好な個体は軽く1000万円を超える。
964型ポルシェ911カレラ2の場合、MT車よりもAT車のほうが断然安く買えるのは事実だ。しかしそれでも、おおむね700万~1000万円にまで上昇したATの964を「安い!」と評するには抵抗がある。
■F1マチック搭載の中古フェラーリは注意!
フェラーリ F355
イタリアのフェラーリ F355も、964型ポルシェ911と同様にAT車(F1マチックを搭載するF355 F1)は確かにMT車よりも安いのだが、その相場は大幅に上昇している。
【フェラーリF355】
●全体(42台):930万~2700万円
●MT車(19台):1600万~2700万円
●AT車(29台):930万~2400万円
最安値圏の個体同士で比べた場合の価格差は約670万円にも達するため、「AT(F1)はめっちゃ安い!」と思う人もいるかもしれない。
フェラーリF355のF1マチック。当初は6速MTのみの設定だったが、1997年に2ペダルセミオートマチックのF1マチックが設定されている
だが900万円台で買えるF355 F1はハッキリ言って買った瞬間にF1マチックが壊れて走行不能になり、その修理もほとんどままならない……と絶対になるかどうかはさておき、そうなってしまう可能性を大いに秘めている。
マトモに維持できるだろうF355 F1に絞ったうえで補正すると、相場データは下記のとおりに変化する。
●MT車全般:1600万~2700万円
●マトモなAT車:1300万~2400万円
MTのF355よりもATのF355 F1のほうが安いというのは補正前と変わらないが、その差は「さほどデカくはない」というニュアンスに変化している。
そして修理するのが難しいF355のF1マチックであるだけに、価格差がこの程度であれば、多少高くても「最初から5MTのF355を探す」というのが、結局は得策となるだろう。
■ATでも楽しいオススメの中古スポーツカーは?
以上のとおり絶版スポーツの中古車は、国産車も輸入車も「AT車のほうが安いは安いが、最近はその差も縮まってきている」ということがわかった。
しかしそれでも、比較的お安く買うことができる「ATの絶版スポーツ」は、MTであることに必要以上にこだわらない人にとっては、なかなか魅力的であることは間違いない。
もしもATの絶版スポーツを狙ってみたい場合の“オススメ4選”を、あくまで個人的なチョイスではあるが、最後にお伝えしておこう。
964型911カレラ2のティプトロでも走行距離が5万km以内だと、1500万円オーバーになることも。現在964型カレラ2、MTの1992年以降のモデルは約1500万円。いくらなんでも高すぎ? こうした強気なショップの値付けのせいなのか、なかなか売れない長期在庫車が多くなってきた
●ATでも楽しい中古スポーツカー・その1
■ポルシェ 911 カレラ2ティプトロニック
中古車相場:680万~1600万円
「ポルシェ911に乗るなら絶対MT!」と思っている人は多そうで、筆者もMTの911の素晴らしさを否定するものではないが、同時に「911はティプトロニックでも十分!」とも思っている。
空冷フラットシックスは超極太トルクであるため、わざわざ変速を繰り返さずとも運転は十分に楽しい。また独特の音とボディの猛烈な剛性感を楽しんでいると、変速のことなどどうでもよくなってくるというのは言い過ぎかもしれないが、まぁティプトロニックもぜんぜん悪くない。
耐久性も非常に高いため、故障もめったにしないはずだ。
スバル BRZ(先代)
●ATでも楽しい中古スポーツカー・その2
先代スバル BRZ
中古車相場:100万~300万円
スポーツカーとはいえ実用回転域でのトルク特性に優れるエンジンを搭載しているため、市街地ではむしろ6速ATのほうが楽しいというか便利。
そしてスポーティに走りたい場合にはシフトレバー後方のスポーツスイッチを押してやれば、コーナー手前で本当に適切に気持ちよくシフトダウンを行ってくれる。
トヨタ 86(先代)
●ATでも楽しい中古スポーツカー・その3
先代トヨタ86
中古車相場:80万~330万円
これも上記の先代スバル BRZと同様。MT車のほうがより楽しいのは確かだが、AT車でも普通以上に気持ちよく、普通以上に楽しく運転できる。
BMW M4(先代)
●ATでも楽しい中古スポーツカー・その4
先代BMW M4クーペ(DCT)
中古車相場:390万~1050万円
最高出力431psのBMW M謹製直6ツインターボエンジンは、「せっかくだからMTで楽しみたい!」と思うのが人情ではあるが、そこまで凄いエンジンは手動でシフトチェンジするからと言って性能と面白みをフルに引き出せるものでもない。7速M DCTドライブロジックというAT(MTベースの2ペダルのDCT、デュアルクラッチトランスミッション)こそが適任だろう。
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みんなのコメント
「ATでも充分楽しい!」なんて言っても、結局は妥協点であって我慢し続けなきゃいけないのはオーナー自身。
試乗して楽しいと感じるのと、所有して満足感を得られるポイントは、何も走りや性能の差だけではない。
あの種の車のミッションに原価計算してもなぁ。