2007年5月、レクサスの最高峰「LS600h」とそのロングホイールベース版「LS600hL」が登場しているが、その日本正式発表を前に、ドイツで国際試乗会が行われている。Motor Magazine誌もその試乗会に参加。アウトバーンやワインディイングなど、ドイツの超高速環境下でLS600h/LS600hLはどんな走りを見せたのか。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年6月号より)
走り出しのスムーズさ、静かさに磨きが掛かった
高性能ディーゼルも得意とする国で、もうひとつのCO2排出抑制手段である最新鋭のガソリンハイブリッドモデルを走らせる。それが待望のレクサスLS600hとなれば、自然と気分は浮き立つ。
【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?
走り出しは、もうすっかりおなじみとなった、トヨタのハイブリッド特有のモーターによる静粛なスタートだ。だが600hは、その静かさにさらなる磨きが掛かった感じだ。
流れに乗るべくアクセルペダルを踏み込めば即座にエンジンが始動する。しかしそのことは、タコメーターがゼロ指針から動き出すことによってのみわかる。エンジンが掛かる際の振動や音は、わずかな走行ノイズにかき消されてまったく感じられない。
こうした静粛性やスムーズさは、トヨタの新型ハイブリッドが出る度に話題になってきたが、LS600hはちょっと次元が違う。例えば郊外から街中へ入った場合。50km/h以下での600hはEV走行となるシーンが多く、速度調節やバッテリーの容量などに応じて頻繁にエンジンの始動/停止を繰り返している。しかしそうした複雑な動きを、乗る人間にまったく気付かせない。
また、GS450hで感じられた80km/h付近の加速感の変化、リダクション機構の変速に伴うものと思うが、これも完全に姿を消している。このように、スムーズさ/自然さを目指して、まさに「制御を極めた」というのがLS600hの印象だ。
アウトバーンに乗ってアクセルペダルへさらに力を込める。だが、あまりガツンとした加速感はない。ハリアーHVやGS450hは、時に乱暴とも思えるほどのモーター特有の無機質なトルクの盛り上がりを感じたが、LS600hの身のこなしはどこまでもジェントルだ。
しかしスピードメーターに目を転じると、その針が驚くべき速さで動いていることに愕然とする。何ともスムーズで音の盛り上がりなども少ないため加速/速度感ともに希薄だが、実際はかなり俊足のクルマだ。特に80km/h以上、200km/hまでの中間加速はどこから踏んでも反応が良く、速く、心地良い。
FRベースの4WD方式、驚異的メカニズムを実現
レクサスLS600hのハイブリッドシステムは、先に登場したGS450hの基本構造を踏襲している。つまりFRベースで、8速ATとほぼ同じ大きさのミッションケース内に、ジェネレーター、動力分割機構、駆動用モーター、高回転を大トルクに変換する2段変速式リダクション機構などをコンパクトにまとめたタイプだ。ただし、レクサスシリーズのフラッグシップとして6L級の実力を持つという意味の600hなのだから、出力は大幅に向上している。
エンジンはLS460用と同じではなく、6.5mmのストローク増で4969ccとした専用のV8だ。単体出力は394psに達する。モーターは、サイズは450h用と同じながら、大電流に対応したほか冷却効率のアップで165kW(450h用は147kW)を実現。同時に永久磁石の配列を変えて、静粛性を高めてもいる。
もちろんジェネレーター、パワーコントロールユニット、ニッケル水素バッテリーもさらなる高出力/大容量化が行われ、その結果システム全体としての最高出力は327kW(445ps)に達した。
これだけのハイパワーを確実に路面に伝えるため、駆動方式をフルタイム4WDとしたのもLS600hの大きな特長だ。この4WDシステムは、新開発のトルセン式LSDを組み込んだトランスファーを介してトルクを前輪にも振り分ける。ちなみに前後の駆動力配分は、FRらしい旋回性能を重視した後輪寄りの40:60を基本に、50:50~30:70の比率まで状況に応じて調節を行う。
4WD化で僕が期待したのは、高速域の直進安定性だ。LS460がこの点で欧州車勢から著しく劣っていたわけではないが、もう少しピシッとすればベストだと思っていた。
実際にアウトバーンを200km/hオーバーで巡航した際の感触は、LS460とほとんど変わらない。安定性は必要にして十分だが、そこに4WDらしさは感じなかった。なお、欧州向けモデルは最高速250km/hでリミッターが作動する。日本仕様モデルは、ローギアードなファイナルギア比と制御により180km/hリミットだが、今回はアウトバーンでの試乗も含まれているので210km/hまで出せるようになっていた。
今回ドイツで試したLS600hには、標準ボディとロングボディそれぞれに欧州仕様と日本仕様が用意され、合計4種類があった。この内、18インチタイヤを履いていたのが日本仕様のロング。それ以外はすべて19インチで、標準ボディは日本/欧州仕様ともにアクティブスタビライザーを装備していた。
この中で、僕がもっともバランスが良いと思ったのは日本仕様のロング。つまり18インチでアクティブスタビライザーなしだ。全体の動きはおっとりしているが、その分、鷹揚で重厚。したがって、アウトバーンの200km/hオーバーでもリラックスしていられる。
それに、乗せてもらうにもロングは魅力的。2人分に限定されたリアシート(3人掛けも設定されるが)は、淋しくなるくらいに広い。リクライング機構、オットマン、マッサージ機構のほか、AV環境も充実しており快適至極。超高速域での風切り音がもう少し低ければ、欧州のVIPたちもコロっと寝返るのではないか、と思うほどである。
また、LSのシャシは元々、路面感受性が高い上に、600hは460より300kg以上重いこともあり、やや硬めの乗り心地となっているが、この18インチ仕様のロングはその点でも最良のバランスだった。
19インチのアクティブスタビライザー付きモデルは、もう少し神経質。特にうねりのある路面を通過する際には、そのスタビライザー機構が邪魔をするのか、やや浮き上がった挙動を見せた。
反面、この仕様はワインディングロードでは実に軽快だ。フラットな姿勢でスイスイとコーナーを抜ける。300kg増を感じさせない軽やかなフットワークは、アクティブスタビライザー効果の賜物だろう。
高度な動力性能を確認、将来への展望と期待
その燃費性能だが、連続全開走行が可能なアウトバーンはハイブリッドの効果が最も出にくい場所でもあり、燃費計によれば6~7km/L台で終始していた。
スペック上でのECモード燃費は、9.3L/100km。日本式表示に直すと10.75km/Lで、これは3Lクラス相当。6LクラスのV8やV12には及びもつかない領域の値で、まさにLS600hの大きなアドバンテージだが、いかにハイブリッドでもひたすらアクセルを踏んでいては、この数値は出ない。それにバッテリー残量もみるみる減る。
もちろん、減速があればわずかな時間でバッテリーのチャージ量は蘇る。今回も、前のクルマに追いつくことが多く、バッテリー切れは起きなかった。
このように、ドイツの超高速環境下でも実用性と性能をしっかり立証して見せたLS600h/LS600hL。量産車世界初のLEDを用いた3連プロジェクターヘッドライトのマスクは精悍だし、ハイブリッドの専用色であるブルーのエンブレムも控えめにその存在を主張していて、レクサスのブランド作りの太い礎となりそうだ。
ただし、ひとつだけライバルから明確に劣る点がある。それはトランク容量。バッテリーの搭載により、その容量は330Lしかないのだ。ハイブリッドがバッテリーを必要とし、それが劇的に小さくできないのなら、そろそろ専用のパッケージを考えても良いのではなかろうか。
セダンという伝統的な高級車の定型にこだわらず、新たなプレミアムカーの姿を提案する。若いブランドのレクサスがハイブリッド技術をここまで昇華できた今なら、僕は十分にそれができると思う。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年6月号より)
レクサス LS600h 主要諸元
●全長×全幅×全高:5030×1875×1480mm
●ホイールベース:2970mm
●車両重量:2270kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4969cc
●最高出力:394ps/6400rpm
●最大トルク:520Nm/4000rpm
●モーター最高出力:224ps(165kW)
●モーター最大トルク:300Nm
●トランスミッション:電気式無段変速
●駆動方式:4WD
●最高速:250km/h(リミッター)
●0-100km/h加速:6.3秒
※欧州仕様
レクサス LS600hL 主要諸元
●全長×全幅×全高:5150×1875×1480mm
●ホイールベース:3090mm
●車両重量:2320kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4969cc
●最高出力:394ps/6400rpm
●最大トルク:520Nm/4000rpm
●モーター最高出力:224ps(165kW)
●モーター最大トルク:300Nm
●トランスミッション:電気式無段変速
●駆動方式:4WD
※欧州仕様
[ アルバム : レクサス LS600h /LS600hL はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
カッコ良かったし質感が高かったです。
今なら手が届くから
100万で買えるし
遊びで買ってみようかなぁ〜
現行型は遅れて出た分進化していると思いきや、すぐに陳腐化しそうな内容でガッカリ。