2021年6月17日、マツダは技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」に基づき2030年に向けた新たな技術・商品の開発方針を発表した。
大きなトピックスとして、2030年時点での生産における電動化比率を100%とし、その内、EV比率を25%とすると発表した。
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となると、気になるのはロードスターの存在。ロードスターもやはり電動化は免れないのか? 1トンを切るライトウエイトスポーツカーという開発コンセプトを掲げているロードスターは、純エンジンではなく、電動化すると車重が重くなり、走りに影響するのでは?
さらに直列6気筒エンジンのFR車やロータリーエンジンの開発はどうなるのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/マツダ
【画像ギャラリー】マツダ 2030年時点での電動化率100%でロードスター開発の行方は!? を写真でチェック!!
■2021年6月17日に発表された「2030年に向けた新たな技術・商品の開発方針」
2020年創業100周年を迎え、次の100年に向けてマツダはどう舵を切る?
2030年時点での生産における電動化比率は100%、EV比率は25%を想定(出典:マツダ)
2021年6月17日に2030年に向けた新たな技術・商品の開発方針を発表。HVモデルを5車種(マイルドHVを除く。トヨタからOEM供給を受けるTHS搭載車含む)、PHVモデルを5車種、EVモデルを日本、欧州、米国、中国、アセアンを中心に2022年から2025年にかけて順次導入するという(出典:マツダ)
2021年6月17日、マツダは2030年に向けた新しい技術・商品の開発方針を発表した。この内容を見ると、2030年には世界で販売されるマツダ車の100%を電動化するという。
その内の75%は、ハイブリッドなど内燃機関(エンジン)+電動化技術の併用だ。残りの25%はエンジンを搭載しない純粋な電気自動車になる。
そして2022年から2025年に掛けて、業務提携を結ぶトヨタからOEM供給を受けるタイプを含め、ハイブリッドを5車種、プラグイン(充電可能な)ハイブリッドを5車種、電気自動車を3車種、日本/欧州/米国/中国/アセアン地域に投入する。
さらにエンジン駆動を併用しない電気自動車専用モデルとして、2025年から2030年に、複数の車種を発売する計画だ。
ちなみに2018年の時点では、マツダは2030年の電動化率について、95%がハイブリッドをはじめとする内燃機関+電動の併用としていた。
エンジンを搭載しない電気自動車は、残りの5%に過ぎなかった。それが新しい技術・商品の開発方針では、前述の通り電気自動車比率を25%まで引き上げている。
今までのマツダは、環境技術に関して、クリーンディーゼルターボの積極的な搭載、火花点火制御圧縮着火方式を利用したスカイアクティブXなど、内燃機関を中心に対処する方向性を強く打ち出してきた。そのために電気自動車の比率は5%だったが、直近になって大きな路線変更を行った。
ほかのメーカーを見ると、トヨタでは、従来は2030年に電動車の世界販売台数を550万台、エンジンを搭載しない電気自動車+燃料電池車はこの内の100万台としていた。
それが2021年5月には、2030年における電動車の世界販売台数を800万台に増やし、この内の200万台が電気自動車+燃料電池車としている。電動車の目標は1.5倍に修正され、電気自動車+燃料電池車については2倍に増えた。
このように各メーカーとも電動車の販売目標を増加させ、特にエンジンを搭載しない電気自動車に重点を置く。その背景にあるのは、海外の電動車に対するニーズの高まりだ。
例えば2020年のEU(欧州連合)では、乗用車販売総数の約12%がハイブリッドで占められた。前年は6%だったから、ハイブリッド比率は約2倍に増えた。電気自動車の比率は11%で、前年は3%だったから急増している。
電気自動車の購入に際して交付される補助金の効果などもあり、最近は電気自動車の需要が旺盛だ。そのためにフォードでは、2026年までに、欧州で販売する乗用車のすべてを電気自動車とプラグインハイブリッドにするとしている。
この後、2030年までに、すべてを電気自動車に切り替えていくBMWのMINIブランドも、2025年以降に発売する新型車は、電動車のみになる可能性が高い。
以上の動向に対応するため、ホンダeの日本国内の販売計画は1年間に1000台(1か月平均は83台)だが、欧州市場は10倍の1万台だ。開発者は「欧州では厳しい燃費規制が実施されるため、対応策としてホンダeの販売計画を大幅に増やした」という。
■ロードスターだけは純エンジン車というわけにはいかないのか?
ロードスターは電動化されるのが確実となった。ただ、HVなのか、マイルドHVなのか、EVなのかは不明
マツダに話を戻すと、2030年には世界で売られるマツダ車の100%を電動化する方針を打ち出した以上、そこにはロードスターも含まれる。
実際、中期技術・商品方針説明会の質疑応答において「2030年に全車電動化を目指しておりますが、そのなかにロードスターも含まれています」と専務執行役員・研究開発・コスト革新統括の廣瀬一郎氏が答えている。
ただし、先代ロードスターは約10年間にわたって生産されたこともあり、2022年から2025年の間に導入される8車種には含まれないだろう。現行ロードスターの登場は2015年だから、10年後なら2025年だが、車両の性格やプラットフォームの独自性によって先送りされそうだ。
新しいマツダ車のプラットフォームには、エンジンを横向きに搭載する前輪駆動車が中心のスモール群、縦向きに搭載する後輪駆動車を基本としたラージ群、さらに電気自動車(スカイアクティブEV)専用の床下にリチウムイオン電池を搭載するプラットフォームもそろえる。
これらの内、スモール群は今のマツダ車のレイアウトに近い。環境技術には、スカイアクティブX、24Vのマイルドハイブリッド、電気自動車、ロータリーエンジンを使う電動化が挙げられている。
ラージ群はエンジンを縦向きに搭載する後輪駆動車とあって、専用開発される直列6気筒のガソリンエンジン、スカイアクティブX、クリーンディーゼルターボがある。さらにラージ群でも、直列4気筒ガソリンエンジンを選べる。電動化技術には、48Vのマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドを用意する。
このほかロードスターは、電動技術としてハイブリッドを併用しながら、現行型と同じくコンパクトな後輪駆動のプラットフォームを個別に用意する。
これまで開発してきたマツダのモノ造り革新の進化(出典:マツダ)
■直6エンジンとFR、大いに期待したい!
直6エンジン+FRのプラットフォームを採用するLARGE群(出典:マツダ)
マツダのLARGE商品群(エンジン縦置き)のエンジン。左からガソリンの直列6気筒ターボ、中央が直列4気筒+PHEVのパワーユニット、右がディーゼル直列6気筒ターボ(出典:2020年11月9日に発表されたマツダの中期経営計画見直し)
マツダの戦略で興味深いのは、直列6気筒エンジンと後輪駆動の組み合わせを新たに設定することだ。もともとマツダのスカイアクティブ技術のコンセプトと魂動デザインは、後輪駆動と親和性の高いものだった。
特に魂動デザインは、獲物を追いかけて疾走するチーターから外観のイメージを膨らませている。体重を後ろ足に掛けて蹴り上げ、進行方向は、前足を使って機敏に変化させる。この躍動感が魂動デザインのモチーフだ。
実際にマツダ車の外観では、前輪駆動車なのにボンネットを長くデザインして、荷重が後輪に乗っているように見える。
実際は後輪駆動ではないから、ボンネットといっても、前側のオーバーハング(前輪よりもボディが前側に張り出した部分)が長い。視覚的なバランスに少々無理が伴い、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を長く、オーバーハングは短く抑える今のデザイントレンドにも沿っていない。
その点で後輪駆動を採用すれば、今のマツダ車が抱えるこれらの本質的な矛盾をすべて解消できる。後輪駆動なら、前後輪が負担する重量配分も向上するから、マツダの目指す運転の楽しさも一層高められる。後輪駆動の採用は、最近のマツダにとって当然の成り行きだ。
ただし、電動化や自動運転に繋がる運転支援技術の開発などを迫られる今、新たに6気筒エンジンと後輪駆動のプラットフォームまで手掛けるのは、相当な英断だろう。多額の投資が集中的に発生するからだ。
ほかのメーカーは、エンジンやプラットフォームの種類を抑えることで、コストを削減している。例えばボルボのエンジンは、直列4気筒2Lが上限で、高い動力性能が必要な車種にはターボで対応する。
今は2Lガソリンターボでも最大トルクは40kgm以上を引き出せるから、多気筒の大排気量エンジンは必要性が薄れてきた。
プラットフォームについても、前輪の中心点とペダルの間隔は一定で、それ以外は柔軟に対応できるタイプが実用化されている。後輪を後方に寄せてホイールベースを伸ばせば、共通のプラットフォームを使って多彩な車種を展開できる。
このような効率化の時代に、マツダは直列6気筒エンジン、プラットフォームについては後輪駆動と電気自動車専用のタイプまで開発する。
かつてマツダは、エンジン、プラットフォーム、サスペンションといったスカイアクティブ技術に基づく複数のメカニズムを、ほぼ同時進行で開発した実績がある。
これを支えたのは、少ない投資で効率の優れた開発と生産を行える「モノ造り革新」だった。今回も同様の考え方で取り組むが、経営的なリスクは大きい。
それだけに直列6気筒エンジンを搭載する後輪駆動車は、優れた商品に仕上げて成功させてほしい。今時、直列6気筒エンジン+後輪駆動という昭和風のレイアウトがウケるのか? と思うが、走りの味わいという意味では、後輪駆動は前輪駆動と一線を画す。
そのためにレクサス、メルセデスベンツ、BMWなどのプレミアムブランドは、今でもエンジン縦置きの後輪駆動車を造り続ける。
相当にリスキーなチャレンジだが、逆の見方も成り立つ。今になって直列6気筒エンジン+後輪駆動を手掛けるのは、クルマ好きから見れば、雄大なロマンではないのか。マツダしかやらないことだろう。
2022年に発売される予定のマツダの直6エンジン+FR車、次期マツダ6の予想CGイラスト(ベストカー製作)
■ロータリーエンジンはどうなる?
マルチ電動化技術として発表された写真。これはロータリーエンジンを用いたシリーズハイブリッド(もしくはレンジエクステンダーEV)とみられる(出典:2020年11月9日に発表されたマツダの中期経営計画見直し)
そうなるとマツダしか開発できないロータリーエンジンも気になる。もともとロータリーエンジンは、軽量でコンパクトなスポーツ指向のパワーユニットとされた。
1970年代から1990年頃までは、数多くのマツダ車にターボを含めてロータリーエンジンが搭載されたが、その後は燃費の悪さなどが災いして登録台数と車種数を減らした。
2012年にRX-8の生産を終えた後は、10年近くにわたって、ロータリーエンジン搭載車が市販されていない。それでもマツダによると「ロータリーエンジンの開発はマツダの使命だから、常に進めている」とのことだ。
直近では、電気自動車のMX-30・EVモデルに、発電用エンジンとして小排気量のロータリーを搭載することが予定されている。いわゆるレンジエクステンダーで、日産のe-POWERのように、エンジンが発電機を作動させるハイブリッドではない。
リチウムイオン電池の電気を使い切った時、エンジンの作動で発電を行い、走行距離を伸ばす。充電設備のある場所まで移動を可能にするものだ。
MX-30・EVモデルのフロントフードを開くと、モーターが収まっているが、右側には広い空間が空いている。そこにロータリーエンジンが収まると思われる。
しかしMX-30がレンジエクステンダーを中止する趣旨の報道も見られる。出力がさらに大きなロータリーエンジンを搭載して、e-POWERのように発電を積極的に行い、プラグインハイブリッドも構成するものだ。
6月25日の定時株主総会では、「ロータリーエンジンはどうなりますか?」という、株主がマツダへ事前質問したが、その回答という形で、ロータリーエンジンの開発についてこう述べている。
「当社では、地球上の地域差、車両特性、燃料特性、エネルギーミックス等の様々な事情を踏まえた適材適所 の対応が可能となるマルチソリューションの検討を進めています。
ロータリーエンジン(RE)については小型軽量、かつ静粛性に優れるという特性を活かし、REを発電に使うマルチ電動化技術を2022年に導入する予定です。
REを発電機として使用する電動車を実用化しておくことで、水素や圧縮天然ガス(CNG)のインフラの整ったところでの活用の可能性があると考えています。
特に、水素については将来のエネルギー源の1つと考えており、またREと水素の燃焼の相性が良いことはすでに実証済みですのでエネルギー全体でWell-to-wheelベースのCO2削減を考慮しながら、さらなる検討を進めてまいります」。
以上のように今のマツダでは、ロータリーエンジンから後輪駆動のプラットフォームまで、多種多様なメカニズムが話題になる。
最近のマツダ車は、どれも同じように見えて興味を示さないユーザーも少なくないが、今後は多彩な商品が揃いそうだ。
特に後輪駆動の上質な運転感覚に期待したい。以前、マツダの開発者と話をした時、「レンジエクステンダーがロータリーエンジンのすべてではない」と述べていた。
コンパクトで吹き上がりの良いロータリーエンジンに、ハイブリッドを装着して、後輪駆動のプラットフォームに組み合わせる。このようなスポーツモデルが登場するように祈りたい……。
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みんなのコメント
バッテリーなど技術革新があればいきなりEVってのもあるかもね。
どちらにしても世界中のロードスター好きを裏切らないものにしてくれるだろう、マツダは。