画期的な機構を採用したモデルもあり今でも十分魅力的!
衝撃だったが、ちょっとコンセプトが先を行き過ぎ、人々に理解されなかったクルマは意外にもたくさんある。当然、デビューしたときは鳴かず飛ばずで、販売も伸び悩んだ。が、今なら高く評価され、売れるかもしれない。そういったクルマを選び、その魅力に迫ってみた。
【月販数十台のクルマも】売れない車種を販売し続ける理由とは?
1)日産プレーリー
1980年代の日産は元気で、新しいコンセプトのクルマを積極的に送り出している。衝撃を受けたクルマの筆頭は、1982年夏に鮮烈なデビューを飾ったプレーリーだ。FF方式のチェリーを送り出した旧プリンス系の設計陣が開発したマルチパーパスカーで、メカニズムはFFに生まれ変わったT11型オースターJX/スタンザFX、バイオレット・リベルタのものを用いた。
時代に先駆けて1.5BOXデザインを採用し、画期的なフルオープン・スライドドアを採用している。しかも大胆なことにセンターピラーまでも取り去った。だからラクに乗り降りできる。主役のJWは2人掛けのサードシートを装備した8人乗りだ。84年には回転対座シートを採用したエクストラJW-Gも加わっている。パートタイム式だが4WDモデルも設定するなど、じつに魅力的だった。
2)日産エクサ
86年に発売したエクサも、21世紀の今なら高く評価されるだろう。フルオート・フルタイム4WDで話題をまいたパルサーの2ドアクーペ版で、ノーズ先端にはリトラクタブル・ヘッドライトを組み込んでいる。最大の特徴は、モジュールコンセプトによって自由に着せ替えができることだ。現行のコペンと似たシステムで、外装パネルを変えることによってスタイリッシュなノッチバッククーペからキャノピーと呼ぶ粋なロングルーフのワゴンへと変身する。
北米に出しているエクサは、ルーフやリヤパネルを交換して、あるときはクーペに、あるときはスポーツワゴンに変身させることができたのだ。だが、日本のお役所は新しいアイディアには腰が重い。法規を盾に、購入後の着せ替えを許さなかったのである。今なら自由に着せ替えできるから、発売されればクリーンヒットを飛ばすだろう。
3)ダイハツ・アプローズ
ダイハツもユニークなクルマづくりでは定評のあるメーカーだ。そのなかで秀作と言えるのが、シャレードの上のポジションに送り込んだ、コンパクト・ファミリーカーのアプローズである。発売した89年は、軽自動車のエンジンの不具合が新聞で叩かれ、ダイハツのイメージが悪くなっていた時期だった。だからアプローズの販売は低迷している。だが、パッケージングにこだわった意欲作だ。
アプローズは3BOXのノッチバックセダンに見える。だが、じつはテールゲートを備えた5ドアのセダンなのだ。リヤゲートはバンパーから大きく開く。新設計の1.6リッター直列4気筒エンジンも凝っている。シリンダーブロックまでアルミ合金製とし、クランクシャフトやカムシャフトなども中空化して軽量設計にした。FFとフルタイム4WDを設定し、走りの実力も高い。日本では売れなかったが、ヨーロッパでは高い評価を獲得している。今の時代にこそ、出してほしい使い勝手のいいコンパクト・ファミリーカーだ。
4)ダイハツ・ネイキッド
ダイハツは、軽自動車にも意欲作が多い。とくに光っていたのが99年に発売したネイキッドである。素材のよさをボディパネルやインテリアで表現した個性派の軽カーで、ベースとなっているのは初代のムーヴだ。最大の特徴は、ユーザーがアレンジしやすいように、ネジを露出したり、穴を開けるなど、自在にパーツを変えられるようにしていることである。ヒンジやボルトの穴を丸出しにした個性的なルックスも注目を集めた。一部グレードはリヤシートも取り外し可能だ。
ちょっと早すぎたデビューのためか売れなかった。が、中古車市場では女性を中心に人気が高く、高値で取引されている。今の時代に発売されれば、その価値が際立つはずだ。
5)ユーノス・コスモ
バブル絶頂期の90年に発売されたユーノスブランドのコスモも、今ならヒット作になるはずである。ユーノスのフラッグシップに位置付けられるプレミアムスポーツクーペで、インテリアも本革をふんだんに使った贅沢な造りだった。
また、世界で初めてGPSナビゲーションシステムを設定したことも、話題となっている。パワーユニットは、シーケンシャルツインターボを採用したロータリーエンジンだ。2種類あり、主役は量産車としては世界で初となる3ローター・ロータリーの20B-REW型である。V型8気筒エンジンと同様の上質なパワーフィールと豪快な加速性能が自慢だった。
サスペンションは、ダブルウイッシュボーンとツインダンパー付きのE型マルチリンクだ。軽やかなフットワークと正確なハンドリングを披露する。今の時代にこそ発売が望まれる、痛快なロータリーエンジンを積むラグジュアリークーペだ。
6)トヨタ・ブレビス
21世紀を前にしてトヨタは、クラウンのメカニカルコンポーネンツを使った小さな高級車の開発に乗り出した。そして1998年に送り出したのがプログレだ。街中でも扱いやすい小型車サイズにこだわり、全長と全幅を切り詰めた秀逸なパッケージの中にクラウン並みの高級感と上質な走りを盛り込んでいる。
このプログレをベースに、2001年に市販に移したのがブレビスだ。メカニズムはプログレのものを用いているが、こちらはちょっとボディが大きく、3ナンバー車になる。
パワーユニットは、どちらも2.5リッターと3リッターの直列6気筒DOHCを搭載した。気持ちよく回り、サスペンションもそれなりにスポーティな味付けだったし、後輪駆動だから軽快な走りを楽しめる。当時はオッさんのためのラグジュアリーセダンと見られていたが、クルマが肥大化した今の時代なら、オジさんだけでなく若い人にも受け入れられるだろう。FRの冴えた走りは、今の時代、新鮮だ。
7)三菱コルト
相次ぐ三菱の不祥事によって信用を失い、いいクルマなのに販売が低迷したのが、2002年に登場した新感覚のファミリーカー、コルトである。ハイトワゴンの魅力を加味した5ドアのハッチバックで、キャビンは広いし、シートアレンジもミニバン並みに多彩だった。セパレートシートとベンチシートの両方を用意しているのも魅力だ。また、カスタマーフリーチョイスシステムを採用し、インテリアを好みの仕様に仕立てることもできる。
1.3リッターと1.5リッターの直列4気筒エンジンも軽やかに回った。ターボを組み合わせて刺激的な走りを見せたラリーアートは、ボーイズレーサー的な走りも楽しめる。今の4WD技術を組み合わせれば、ランサーエボリューションの代役も務められるだろう。
8)スバルR2
軽自動車のレベルを超えた上質な軽カーを狙い、2003年に投入したのがスバルのR2だ。往年の名車の名前を復活させ、スバリストを喜ばせた。エンジンも軽自動車は3気筒が全盛のなか、贅沢な4気筒だ。パワフルなスーパーチャージャー仕様もある。だが、個性の強いデザインと前作のプレオより狭いキャビンが災いし、不人気車のレッテルを貼られてしまった。
その後、スポーティクーペのR1を送り込んだ。R1もボディやシャシーを新設計するなど、気合が入っていた。しかしR2との差別化がわかりにくかったこともあり、こちらも不発に終わっている。
今の時代は軽自動車も多様化し、再び個性を競うようになった。今がチャンスだ。4気筒エンジンのままでもいい。現役のときに開発中だった電気自動車のR1-eやR2-eを一緒に発売しても共感を得られると思う。瞬発力が鋭く、クリーンなEVなら飛びつく人も多いはずだ。
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