トヨタ車を軸に、トヨタ車以外のメーカーの競合モデルとの本気対決をお送りしている本企画。1月30日公開のSUV・ミニバン編に続き、今回はコンパクトカー・ハッチバック・セダンなどを取り上げる。
国沢光宏、渡辺陽一郎、片岡英明の、ベストカーおなじみの自動車評論家お三方に各車の採点をご依頼、各車100点満点で採点してもらった。
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トヨタの人気モデルと、それらのライバルモデルとして選ぶのに迷いそうなクルマたちをピックアップ、合計点でシロクロつけてみたい。ラインアップは以下の通りだ。
■本気のガチ対決 ラインナップ
【最新コンパクトカー対決!】ヤリス vs ホンダ フィット
【Cセグハッチバック対決!】カローラスポーツ vs マツダ3ファストバック
【Cセグセダン対決!】カローラ vs スバル インプレッサG4
【Dセグサルーン対決!】 クラウンハイブリッド vs 日産 スカイラインハイブリッド
【場外乱闘!】ノートe-POWER vs アクア
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※本稿は2019年12月のものです
文:国沢光宏、渡辺陽一郎、片岡英明、永田恵一/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年1月26日号
【最新コンパクトカー対決!】トヨタ ヤリスvsホンダ フィット
●トヨタ ヤリス(139万5000~249万3000円)
先代型までのヴィッツから新たにグローバルモデルの名前であるヤリスに改名された。新しいダイナミックフォースエンジンの直3、1.5L DOHC(6MT車も設定)と同ハイブリッド仕様、それにベーシックな直3、1Lモデルを設定する。ボディサイズは全長3940×全幅1695×全高1500mm
VS
●ホンダ フィット(148万8100円~242万6500円)
ホンダ独自のセンタータンクレイアウトを新型でも踏襲し、前席下に燃料タンクを設置。1.3LガソリンNAに加え、2モーター方式の1.5Lハイブリッド、e:HEVを採用する
●国沢光宏審査員の評価
このカテゴリーで大切なのはスペースユーティリティだと思う。軽自動車が象徴しているとおり、日本のマーケットを見るかぎり、小さいクルマほど広い室内を求める傾向にある。加えて走りの質感についていえばプライオリティ低い。といったことを総合して評価すると、やはりフィット優位だと考えます。
両車ともにキャビンをチェックしてみたけれど、リアシートの居住性が圧倒的に違う。こらもう比べたら誰でもハッキリわかるレベル。さらにリアのラゲッジスペースだってまったく違います。
もし軽自動車ジャンルなら、勝負にならない差だと思う(ミライースとムーヴくらいの差がある)。また、装備面でもフィットが電動パーキングを装備しているのにヴィッツは普通のパーキングブレーキ。機能面で劣る部分もあると思います。
●渡辺陽一郎審査員の評価
全高が1550mm以下の立体駐車場を使いやすいコンパクトカーでは、フィットが以前から広い室内を備えていた。デミオは後席と荷室が狭く、走りに重点を置く。両車の中間に位置するのが、ヤリスの前身となるヴィッツだった。
それが新型になったヤリスでは、車両の性格がデミオに近づいた。走行安定性が大幅に向上して、乗り心地もよくなり、内装の質も高まっている。その代わり後席の足元空間が狭まり、荷室の機能も低下した。ドライバー本位のクルマに発展している。
ヤリスは性格を大幅に変えたが、フィットは従来路線を踏襲する。燃料タンクを前席の下に搭載して荷室容量が大きく、後席の足元空間もミドルサイズセダン並みに広い。視界もヤリスより優れ、総合評価は上回る。
●片岡英明審査員の評価
正式発売前だが、どちらも2020年の主役となるコンパクトカーだ。プロトタイプでの試乗だったし、走った場所も違っているが、スポーティ感覚が強いのはヤリスのほう。特にガソリンエンジンに設定された6速MT車は小気味よく走り、応答レスポンスも鋭い。
ただし、3気筒特有のカラカラ音が出るから4気筒エンジンを積むフィットより格下と感じる場面も……。
ハイブリッド車は両車とも好印象を残した。どちらもパンチ力を増し、力強い加速を見せつける。燃費の点でも期待できそうだ。ヤリスには電気式の4WDもあるが、ハンドリングと乗り心地の妥協点が高い。
キャビンはヤリスも広くなっているが、センタータンクを採用するフィットのほうが後席は快適だ。シートアレンジも差をつけている。
●採点&結果
・ヤリス…国沢 80点+渡辺 83点+片岡 88点=計 251点
・フィット…国沢 85点+渡辺 93点+片岡 88点=計 266点
よってフィットの勝ち!
【Cセグハッチバック対決】トヨタ カローラスポーツvsマツダ マツダ3ファストバック
●トヨタ カローラスポーツ(216万9200~282万4800円)
かつてのカローラFX、カローラランクス以来となる“カローラ”のハッチバックモデル。TNGAプラットフォーム採用モデルであり、エンジンは1.2Fターボと1.8Fハイブリッドの2種類を設定している
VS
●マツダ マツダ3ファストバック(222万1389~368万8463円)
先代までのアクセラの名前を捨て、新たにマツダ3の名で登場したグローバルCセグモデル。1.5Lと2Lのガソリン、1.8Lディーゼル、2Lマイルドハイブリッドを設定
●国沢光宏審査員の評価
好みで評価が異なるデザインはココじゃ触れない。参考までに書いておくと、私はドッチも好みじゃありません。マツダ3はノッペリしているし、カローラスポーツってプレスラインがウルさ過ぎます。
デザイン以外どうか? パワーユニットは圧倒的にカローラスポーツでしょう。1800ccのハイブリッドは意外なほどパワフルでリーズナブルだし、ふつうに走っていても信じられないほど燃費いい。
マツダ3のパワーユニット、すべてパワーないか高価か、大して燃費よくないか。6速ATというのも古い。コストパフォーマンスは明らかにカローラスポーツ優位。マツダ3より実質的に20万円以上安いですから。
お買い得度やクルマの完成度など総合的に評価するならカローラスポーツ優勢だと思います。
●渡辺陽一郎審査員の評価
両車ともミドルサイズの5ドアハッチバックで、全長は4400mm前後、全幅は1800mm弱に収まる。外観はマツダ3が個性的だが、後方視界は悪く、カローラスポーツのほうが運転しやすい。
車内の広さは同等で、後席は両車ともに3ナンバー車では狭い。
デザインと実用性は一長一短だが、カローラスポーツは1.2Lターボ、1.8Lハイブリッドともに動力性能が不足する。マツダ3は4種類のエンジンを用意した。SKYACTIV-Xは割高だが、ディーゼルは駆動力が高く価格も妥当だ。
操舵感はマツダ3の正確性が高く、比較的よく曲がり運転を楽しめる。乗り心地はカローラスポーツが少し快適だ。実力は互角だが、クルマ好きのユーザーが買うことを考えるとマツダ3の魅力が強い。
●片岡英明審査員の評価
カローラスポーツとマツダ3は、世界をターゲットに開発されたCセグメントのファミリーカーだ。激戦区に自信を持って投入するだけあり、ハッチバックは両車とも欧州勢を凌ぐできのよさを見せた。
特にカローラスポーツはVWゴルフと同等の実力を秘める。日本式の採点方法なら得点は上をいく。これはマツダ3に対しても言えること。
マツダ3と比べるとデザインはコンサバだし、パワートレーンの新鮮味も薄い。が、既存のパワートレーンを使いながら気持ちいいパワーフィールと良好な燃費を実現している。
マツダ3のSKYACTIV-Xも痛快だが、価格が張るので魅力を味わえる人は少ない。カローラスポーツは洗練されたハンドリングを身につけ、乗り心地などの快適性に関してもハイレベル。
●採点&結果
・カローラスポーツ…国沢 80点+渡辺 73点+片岡 90点=計 243点
・マツダ3FB…国沢 70点+渡辺 78点+片岡 82点=計 230点
よってカローラスポーツの勝ち!
【Cセグセダン対決!】 トヨタ カローラvsスバル インプレッサG4
●トヨタ カローラ(193万6000~294万8000円)
TNGAプラットフォームを採用した歴代初の3ナンバー車となって登場
VS
●スバル インプレッサG4(200万2000~270万6000円)
2019年秋に大幅改良を受け、フェイスリフトを敢行した
●国沢光宏審査員の評価
クルマとしての総合評価なら、多くの点でカローラ優勢。乗り心地いいし、自動ブレーキの絶対的な性能だってカローラの勝ち!
インプレッサG4と比べた時の弱点は、リアシートの使い勝手だと思う。カローラのリアシート、乗り込む時に狭く、居住性だってインプレッサと比べたら厳しい。
また「カローラ」という車名も私らの世代からするとイメージよくないです。カローラの素晴らしさを認めつつもインプレッサ派が多いかと。
●渡辺陽一郎審査員の評価
カローラは現行型になって3ナンバー車に拡大されたが、インプレッサG4に比べるとボディが少し小さい。今でもセダンでは運転しやすい部類に入る。視界はインプレッサがいい。動力性能は両車とも互角で、走行安定性と操舵感はカローラが勝る。問題は後席の居住性だ。セダンでは4名乗車の機能も大切だが、カローラは後席の足元空間が狭めで乗降性もよくない。インプレッサは後席が快適で乗降性も優れ僅差で勝る。
●片岡英明審査員の評価
キャビンの快適性はインプレッサG4がリードする。特に後席の頭上と膝下空間、乗降性は差をつけた。また、4WDの仕上がりと安心感、運転支援システムのアイサイトの優位性も光っている。
が、デザインの新鮮味は薄れてしまった。まとまりのいいデザインだが、目立たない。パワートレーンに関しても大きく後れをとっている。カローラのようにハイブリッド車を用意していないから燃費は期待できないからだ。
●採点&結果
・カローラ…国沢 90点+渡辺 84点+片岡 88点=計 262点
・インプレッサG4…国沢 85点+渡辺 86点+片岡 85点=計 256点
よってカローラの勝ち!
【Dセグサルーン対決!】トヨタ クラウンハイブリッドvs日産 スカイラインハイブリッド
●トヨタ クラウンハイブリッド(507万1000~703万4500円)
ダイナミックフォースエンジンの直4、2.5Lハイブリッドと従来からあるパワフルなV6、3.5Lハイブリッドの2種類が設定される
VS
●日産 スカイラインハイブリッド(557万5900~644万4900円)
プロパイロット2.0を採用しているのはV6、3.5Lハイブリッドのみ
●国沢光宏審査員の評価
決定的な違いは運転補助システム「プロパイロット2.0」ということになるだろう。スカイラインのプロパイロット2.0、安全性向上に大きく寄与すると思う。常時ドライバーをカメラで確認し、異常あったら対応してくれますから。
この2車、メインユーザーは私と同等以上のシニア層。うっかりミスで事故を起こしたくない。運転中、体調不良になることも考えられるし。といったことを総合的に評価したならスカイラインです。
●渡辺陽一郎審査員の評価
現行クラウンはスポーティな性格に変わり、走りはよくなったが、柔軟な乗り心地は失われた。それでもスポーツセダンの走りを競えばスカイラインが勝り、クラウンは魅力がわかりにくい。
現行クラウンは少し迷走気味だが、後席を含めた居住性などの総合評価は依然として高い。スカイラインは独自の操舵システムを採用するが、運転すると違和感が残り、ターボの衝突被害軽減ブレーキは歩行者を検知できない。
●片岡英明審査員の評価
クラウンは2種類のハイブリッド車を設定し、日本のユーザーを強く意識して全幅を1800mmに抑えた。プラットフォームも一新し、ハンドリングと乗り心地の妥協点を高いレベルに上げている。
スカイラインは全車を上質な6気筒とし、ターボだけでなくハイブリッド車もクラウンよりはるかにスポーティな味わいだ。先進安全装備のプロパイロット2.0も魅力的と感じる。だが、基本設計の古さが顔を出す場面も………。
●採点&結果
・クラウンハイブリッド…国沢 85点+渡辺 75点+片岡 85点=計 245点
・日産 スカイライン ハイブリッド…国沢 85点+渡辺 68点+片岡 80点=計 233点
よってクラウンハイブリッドの勝ち!
【場外乱闘】日産 ノートe-POWER vs トヨタ アクア
(TEXT/永田恵一)
よく売れている2台ながら、どちらも乗り心地やインテリアなどクルマとしての質感はあまり高くない。燃費はアクア優勢となるが、ボディの大きさを生かした広さ、EV的なパワフルかつスムーズで静かな走り、アクアも頑張っているもののNISMO Sなどバリエーションも豊富と、総合するとノートe-POWERが大きくリード。日産国内販売のエースが負けるほうが問題。
トヨタ アクア(上)と日産 ノートe-POWER(下)
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