スポーティグレードのマカンSとトップグレードのマカンターボの間を埋めるモデル、マカンGTSがラインナップに追加された。ポルトガルで行われた国際試乗会でその真価が確認できた。
待っていなかったといえばウソになる。新型に切り替わり、マカン、マカンS、マカンターボというラインナップを見たときにGTSの登場を期待しないはずがない。従来型マカンで人気モデルだったGTSは、いずれ出てくると予想していたので、気になったのは登場そのものよりもその内容である。つまり、どのように進化しているのか、ということである。
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そんな期待を胸にポルトガルに向かった。新型マカンGTSの国際試乗会に参加するためだ。
排気量はダウンしたが出力、トルクは向上
まずは、新型マカンGTSのディテールを紹介しよう。搭載エンジンは2.9L V型6気筒ツインターボである。従来のGTSが3L V6気筒ツインターボだったので排気量はダウンしているが、最高出力は15kW(20ps)増となる280kW(380ps)、最大トルクは20Nm増の520Nmとなった。この大トルクが1750-5000rpmという広い回転域で発生するのも特徴である。
またこのエンジンには多くの革新的な技術も採用されていて、センターインジェクターにより燃焼と圧縮行程および吸入が最適化されている。そしてすべてのポルシェのV型エンジンと同様に、ターボチャージャーがVバンクの内側にレイアウトされ、燃焼室とターボチャージャーの間の排出ガス経路が大きく短縮されている。これにより鋭いレスポンスが得られるのだ。
組み合わされるのは、従来型と同様の7速DCT(PDK)だが、新型マカンGTS用に改めてチューニングしていると、マカンの開発に携わったエンジニアはコメントする。そしてスポーツモードでは、トランスミッションのレスポンスを向上させ、スポーツクロノパッケージと組み合わせることで0→100km/hは、従来型より0.3秒速い4.7秒という俊足ぶりを発揮する。
さらに最高速度は261km/hと、こちらも5km/h向上した。またこのトランスミッションは、効率にも優れていてノーマルモードでは高いギアを選択して燃料を節約、さらにACCとの組み合わせではコースティングモードを使い、実燃費の向上に貢献しているのである。
またスポーツクロノパッケージ装着車は、ハンドルにモード選択スイッチが用意され、そこで「ノーマル」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「インディビジュアル」の4つが用意される。またスポーツモードの中心にあるスポーツレスポンススイッチをオンにすることで20秒間の高ブーストが与えられ、パフォーマンスを最大限に引き出すことができるのだ。
次にエクステリアを見てみよう。標準モデルよりも車高が15mm低くなったシャシによりよりスポーティなSUVとなっているのがマカンGTSの特徴だ。これをさらに10mm下げることもできる。それにはオプションのアダプティブエアサスペンションを装着することが必要だが……。
パフォーマンスアップに合わせブレーキ性能も向上させた
ポルシェのSUVなのでもちろんカッコだけのクルマではない。相当な実力も伴っているのである。前述したようなパフォーマンスアップに伴い、標準のねずみ鋳鉄製ブレーキディスクは、フロント360mm×36mm、リア330mm×22mmに大型化されている。
またオプションとして、カイエン同様に、炭化タングステンコーティングが施されたポルシェサーフェスコーテッドブレーキ(PSCB)やポルシェセラミックコンポジットブレーキ(PCCB)を用意している。ちなみに標準装備のブレーキのキャリパー色はレッド、PSCBがホワイト、PCCBがイエローとなりひと目でどのブレーキを装着しているかがわかるようになっている。
エクステリアでマカンGTSを強く主張するのは、フロントまわりに採用されたブラック仕上げのエレメントである。これはポルシェのすべてのGTSに共通する特徴でもある。そして20インチRSスパイダーデザインホイールもサテングロスブラックとなり、ルーフスポイラー、ウインドウトリムストリップやリアのロゴなどもブラックになっている。
もっと言えば、ポルシェダイナミックライトシステム(PDLS)装備のLEDヘッドライトおよびボディの左右を繋ぐLEDテールライトのバーもティンテッド加工が施され、スポーツエキゾーストシステムのデフューザー、テールパイプなどリアセクションもブラックでまとめられている。
インテリアは、やはり10.9インチという大型のポルシェコミュニケーションマネジメント(PCM)用ディスプレイが新型の大きな特徴だ。もちろん、ポルシェコネクト機能も強化されている。もともとベーシックなマカンのインテリアでもスポーティなのだが、さらにGTSらしさ強調するならインテリアの多くにアルカンターラ仕上げのアイテムが採用され、よりGTS感を盛り上げるスポーツデザインパッケージの装着をお勧めしたい。これらは視覚的、感覚的にも、このモデルがGTSであることが強く感じられるのである。
そのほかでは当然、パドルシフトも備えられている。またマルチファンクションスポーツステリングホイールはリムにスムースレザー仕上げが施され、8way調整および大型のサイドサポートを備えたスポーツシートもマカンGTS専用となる。もちろん、ポルシェらしくパーソナライゼーションも充実している。
先進の安全運転支援機能、ADASも充実している。センターエアインレットに設置された高感度なセンサーに加え、より強力なデータおよび画像処理能力により、レーンキープアシスト、レーンチェンジアシストが装備可能となった。さらにトラフィックジャムアシスト対応ACC、リバースカメラ&サラウンドビュー対応パークアシストなど運転支援機能は充実している。
ちなみにトラフィックジャムアシスト機能には、ストップ&ゴー機能が加わる。このシステムは、0→約60km/hの速度範囲で車線と同じ車線または隣接する車線の前走車を検出するというもの。システムをオンにすればステアリングに介入してクルマを車線内に留まるようにし、さらにACC使用時はフロントカメラを使って衝突エリアに進入する車両または歩行者を検出し、第一段階はドライバーへ警告音での警告、第二段階はブレーキを断続的に作動させて警告するのである。
SUVであっても正真正銘ポルシェのスポーツカーだ
試乗は、ポルトガルエストリルサーキット周辺の一般道で行った。試乗車はマカンGTSのオプションでエアサスペンションを装着したモデルである。走り出してすぐにダイナミックなハンドリングに心酔してしまった。交差点の角をひとつ曲がることや、加速、減速のすべてが実に楽しいのである。最高のクルマに乗っているという感覚がとても強く感じられる。
エクステリアやインテリアから想像できるようにスポーツティさを裏切らない実力の持ち主だったと言っていい。また標準装備となるスポーツエキゾーストサウンドも迫力あるものだった。このV6サウンドをかなり気に入った。マカンGTSは、視覚、触覚、嗅覚だけではなく聴覚にも訴えてくるものである。もしかしたら味覚にも……と思ってしまったほどである。
実は、今回の試乗会では718ケイマンGTS4.0でエストリルサーキットを走る機会があったが、わがままが許されるならば、「このマカンGTSでサーキットを走りたい!」と思ったほど。それほど、ポルシェのスポーツカーを名乗るに相応しいパフォーマンスを持っていたのである。
マカンGTSは、日本での価格もポルシェジャパンから発表されている。1038万8889円という価格を見たときに、絶妙だなと感じた。
ポルシェのGTSモデルは、トップグレードとなるターボとスポーツグレードのSの中間というポジションで、マカンは874万9074円、ターボは1219万1667円である。SとGTSでは約163万円、GTSとターボでは約180万円の価格差となり、それまで344万円以上もあったターボとSの間に見事に嵌まっている。このあたりのポルシェのマーケティング戦略は見事だと言わざるを得ない。
さて、ラインナップがすべて揃ったことでマカンの魅力はさらに増したと言えるだろう。そしてこのグラン ツーリスモ スポーツ=GTSは、ポルシェのSUV人気をさらに押し上げるモデルとなるだろう。(文:千葉知充/写真:ポルシェジャパン)
■ポルシェ マカンGTS 主要諸元
エンジン:V6DOHCツインターボ、総排気量:2894cc、最高出力:280kW(380ps)/5200-6700rpm、最大トルク:520Nm/1750-5000rom、全長×全幅×全高:4686×1926×1609mm、ホイールベース:2807mm、車両重量:1985kg、ラゲッジルーム容量:488-1503L、駆動方式:4WD、トランスミッション:7速DCT(PDK)、最高速:261km/h、0→100km/h加速:4.9秒※EU準拠
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みんなのコメント
60年代のスポーツカーと呼ばれる多くの車よりも、現代のSUVの方が当然速いだろう。その車のスタイルや在り方を含めてスポーツカーは成立しているのだと思う。