クルマの燃費表示が、これまでのJC08モードから国際的な燃費表示方法、WLTCモードに2018年10月1日から切り替わる。乗用車は、10月1日以降に発売される新型車に表示が義務づけられ、フルモデルチェンジしないで売られている継続生産車に関しても、2020年9月までにはすべて表示されることになる。
さてこのWLTCモード燃費、これまでのカタログ燃費表示値「JC08モード燃費」とどう違うのか? WLTCモードに変わるとJC08モード燃費よりも数値が悪くなるのか? よくなるのか? 実燃費との差は縮まるのか? 迫ってみたい!
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文/ベストカー編集部
写真/ベストカー編集部
初出/ベストカー2017年4月26日号
■なぜWLTCモード燃費が導入されたのか?
WLTCモードとは、「世界統一試験サイクル(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)」といわれる国際的な試験方法のことで、2014年3月に国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラムで採択。これまでカタログに表記されていた日本独自のJC08モード燃費に変わる燃費測定方法のこと。
自動車メーカーは同じ仕様のクルマであっても、燃費の測定試験をそれぞれの国や地域の基準ごとに行っていたが、一度の試験で複数の国、地域での認証に必要なデータが済むようにということで、国連のフォーラムにて世界標準の燃費測定法を定めることになったというわけだ。
また、基準が統一され、国をまたいで型式認証が取得可能になれば、設計や仕様の統一、部品の共通化が進めやすくなり、開発や認証にかかるコストを低減できるというメリットが生まれる。
■WLTCモードはこうなる!
WLTCモード最大の特徴は燃費値が4種類表示されること。「市街地」、「郊外」、「高速道路」の3種類の走行モードの燃費値と、それらを平均的な使用時間配分で構成した「WLTCモード」で表される。1種類の表示だったJC08モード燃費に比べ、ユーザーの走行状況により近い燃費値を知ることができるというわけだ。
それぞれの走行モードの特徴は、まず「市街地」が、信号待ちや渋滞などの影響を受ける都市部での比較的低速な走行を想定したもので、最も低い値となる。
「郊外」は、信号や渋滞などの影響をあまり受けない比較的スムーズな走行を想定した値だ。そして最後の「高速道路」は、高速道路などの自動車専用道路での高速走行を想定した最も燃費のいい値となる。
■日本では超高速モードは除外
WLTCモードの走行パターンのグラフは上記のとおり、WLTCモードはJC08モードに比べ、加減速が増加しているのが見てとれる。
日本はグラフにある4のExtrahghは採用しなかった。WLTCの策定に際して、日本もJC08モード策定時のデータを提供したわけだが、欧州や米国、インド、韓国なども各国の基準で計測した燃費データを提供している。そのため総合データは日本の走行実態と比較すると、高い速度、高い加速度の使用頻度が含まれている。
Low、Midium、High、Extrahighという4種類のフェーズの内、平均車速92km/h、最高速度が130km/hに達する最も高い速度域のExHighフェーズは各加盟国のオプションとすることで決着、日本ではExtraHighフェーズは距離ベースの交通量比として全走行の5%しかないことから使用しないことになった。
たしかに日本の高速道路の最高速度は100km/h(新東名は110km/h)だからあまり意味がない。
■WLTCモード燃費に切り替わるのはいつから?
日本でのWLTCモードに関する日程的なスケジュールは、2016年10月に法規として正式採用され、2017年4月からは各メーカーが風洞内に設置したシャシーダイナモメーターにおいて実際に屋内測定試験を実施できるようになった。
乗用車の新型車(完全な新型車およびフルモデルチェンジ車)のWLTCモードの表示義務化は、2018年10月1日から、すでに販売されている継続車は2020年9月からとなっている。JC08モードは2020年以降も併記してもいいことになっているが、WLTCモードのみの表記になる時期はまだ決まっていない。
すでに2017年6月2日からマツダがCX-3からWLTCモードの燃費表示を始めており、2018年に発売されたクラウンやジムニー、カローラスポーツ、フォレスターなどの新車もWLTCモード燃費を表示している。
■JC08モード燃費とWLTCモード燃費との計測方法の違いは?
まずJC08モード燃費からの変更点としては、上の表を見ていただければわかるとおり、最高速度、平均速度が上昇し、走行時間、総走行距離が増加している。
このほか、重要なポイントは4つある。まずアイドリング時間が減少すること。アイドリング時間比率はJC08モードの29.7%から15.4%と14.3%も減少する。
次にクルマのエンジンが温まった状態で試験を行うホットスタートがなくなること。JC08モードではホットスタートが75%で、エンジンが冷えた状態からスタートするコールドスタートが25%の比率で燃費を算出していたがWLTCではコールドスタート100%になるのだ。
試験車両の重量の違いについてもJC08モードとWLTCモードは大きく違う。JC08モード燃費では2名乗車による+110kgであったのに対して、WLTCモードでは1名乗車+荷物相当の100kgに、そのクルマの積載可能重量の15%+して審査を行う。そのため、WLTCモードのほうが重量の重い状態で試験をすることになる。
また、JC08モードの「等価慣性重量(燃費試験時のシャシーダイナモメーターに設定する負荷)」において、ステップ状に設定された区分(重量)に合わせて、特定のグレードのみ軽量化し、軽い区分にギリギリ滑り込ませるような手法は、今後できなくなる。国土交通省としても、ステップレス化によって、燃費スペシャルグレードが生み出されることへの歯止めになると考えているとのことだ。
JC08モードとWLTCモードの計測方法の違いをまとめると以下のようになる。
1/試験車両の重量の増加
2/平均速度が上昇
3/最高速度が上昇
4/走行時間、距離が増加
5/アイドリング時間が減少
6/コールドスタートのみ
7/加減速の増加
8/燃費スペシャルグレードがなくなる
■JC08モード燃費がいいクルマほど悪化する!
結局、JC08モードからWLTCモードに変わると、燃費が悪化するのか? 国土交通省と資源エネルギー庁が共同で行っているワーキンググループが発表した資料によると、ハイブリッド車や軽自動車(アイドリングストップ機能付)などの、JC08モード燃費がいいクルマほど、WLTCモード燃費が悪化し、30km/L超のクルマでは、5km/L以上悪化という結果が出ている。
要因としては、WLTCモードが冷機状態から試験を開始するため、オイル粘度が増加し摩擦損失が増大するためと考えられる。
特にハイブリッド車は、低速時にEV走行するのでより暖気が遅れ、さらに触媒温度を上げるために、エンジン作動時間が増えることで悪化しやすくなる。
またアイドリングストップすることで燃費を稼いでいたクルマも、その時間が短縮されるため燃費が悪化するとのこと。アイドリングストップなどの機能を搭載しないクルマのほうが、相対的によくなることも考えられるそうだ。
JC08モード燃費と実燃費との乖離(かいり)は30~40%と言われているが、ではこの新しく導入されたWLTCモードは、より実燃費に近づくということなのだろうか?
その一番気になるところを、モータージャーナリストの清水和夫氏に解説してもらった。
■WLTCのほうが燃費がよくなることもある
TEXT/清水和夫
話題のWLTCだが、実は直接カタログ燃費への関連性はないと考えられる。なぜならば、自動車メーカーがどのようなエンジンを作っているかによって違ってくるからだ。
低負荷の試験よりも、高負荷のモード試験を得意とするエンジンもあるので、WLTCのほうが燃費がよくなることもある。対して、小排気量の軽自動車は厳しくなる。
エンジンの特性によって大きく変わるので、カタログ燃費が実燃費に近づくとは、一概に言えないのだ。
特にプラグインハイブリッド車に関しては、「電気で走る部分の燃費をどう解釈するのか?」という点が日米欧で違うので、結局WLTCを導入したから何が変わるのかといえば、本質的にはあまり変わらないということになる。
むしろ重要なのは、RDE(リアル・ドライビング・エミッション=実路走行排気)で、実際の道で測る燃費値の情報公開がこれから始まる。
こちらも試験方法が決まっていて、どのように走るというのが公表されている。これは台上試験ではなく、公道を実際に走らせるので、こちらのほうが実燃費に近いだろうといわれている。
この燃費はカタログ値とは異なり、JNCAPのように情報公開していくという話になっている。WLTCモードでエミッションの認証を取る時に、ついでに測定された数値がカタログ燃費だが、認証試験での数値ではないのでRDEの燃費値はカタログに載せることはできない。
WLTCになると、あたかも実燃費に近づくのではないかといわれているが、それ以外のずれた走りをすれば、やはり今までと同じくカタログ値とは合わなくなる。
その先にある、RDEのほうが重要になってくるのだ。
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