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【国産旧車再発見】勝つために生まれた特別なスカイライン、日本初のモンスターマシン『日産プリンス・スカイライン2000GT-B』

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【国産旧車再発見】勝つために生まれた特別なスカイライン、日本初のモンスターマシン『日産プリンス・スカイライン2000GT-B』

日本グランプリに必勝をかけて開発された6気筒モデル。"スカG"という愛称は特別なスカイラインである証だ。たとえ1周だがポルシェの前を走ったことが伝説となり、メーカーであるプリンスが日産に吸収合併された後も、スカGを求める声が絶えなかった。その実力はいかほどだろうか。

ストレッチによりスポーツ性を訴えるスタイルに変貌したスカG

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これまで何度も語られてきた"スカG"こと、『プリンス・スカイライン2000GT』について、今から新しい事実を紹介するのは難しい。ご存知のように1963年に開催された第1回日本グランプリに、紳士協定を守って市販車同然のまま出場して惨敗したプリンス自動車。1960年代当時、プリンスはトヨタや日産を凌ぐ技術力を自他ともに認める国内屈指の自動車メーカーだった。そのプリンスが他メーカーに負けるわけにはいかない日本グランプリという檜舞台で完敗してしまったのだから、忸怩たる思いは想像に難くない。それゆえ、翌年に開催される第2回グランプリで負けるわけにはいかない。圧倒的な戦闘力が求められた。

そこで開発されたのが2代目スカイライン1500に、国内初のSOHCだったグロリア用直列6気筒エンジンを移植したスカイラインGT。型式S54A-1と呼ばれるスカイラインGTは市販を目指したものではなく、純粋なホモロゲーションモデルだった。当時のツーリングカー規定は100台が生産されれば認められるレギュレーション。スカイライン1500のフロントを200mm延長して、長い直列6気筒エンジンを収める突貫工事が行われた。

【写真19枚】勝つために生まれた特別なスカイライン『日産プリンス・スカイライン2000GT-B』の詳細を写真で見る

実際に製造されたS54A-1のエンジンルームは一目瞭然で、フロントフェンダーの内側には鉄板を溶接して延長した痕跡がありありと残っている。Aピラーの根元からボディを分断して長いエンジンを収めるだけのスペースを確保したのだ。さらにモノコックのフレーム部はジャッキアップポイントを切り継いで伸ばされている。ここまで変更されているため、ステアリングシャフトもスカライン1500のものではなく、グロリア用と思われる長いものが採用されていた。

これらは日産自動車内に発足した『名車再生サークル』がレストアする際に判明したことだ。実にスカラインGTに関する資料は少なく、現存する個体からしか情報が得られない。では、生産された当時にこれらの事実をまとめなかったのはなぜか。それはおそらくスカイラインGTと呼ばれるS54A-1が100台も作られていないと思われるからだ。

ホモロゲーションを取得するため、当時100台を作った証明など必要なかったのだろう。メーカーによる自己申告で事足りたのだと推測される。そうでなければ、1964年5月に市販されたとされるS54A-1を見かける機会があまり少なすぎるのだ。よしんば作られたとして、1965年2月にスカイライン2000GTが市販されているのだから、その中にS54A-1が混ざっていてもおかしくない。

全長の短い4気筒ファミリーセダンにグロリア用直列6気筒SOHCを移植した日本初のモンスターマシン

歴史の推理ほど楽しいものはないが、市販が開始されたスカイライン2000GTのその後を追おう。ウエーバーキャブを3連装した2000GTに次いで同年9月にシングルキャブ仕様のGT-Aを追加。同時に従来の2000GTはGT-Bへ呼称を変える。ちなみに、ここまでのGTシリーズは2型と呼ばれる。そして1966年8月にプリンスが日産に吸収合併されたことを受け、車名が日産プリンス・スカイラインへと変更された。その直後にマイナーチェンジされ、縦型のデザインだったグリルが横型に変更。シリーズ全体が3型となるのだ。

シリーズが変遷する中で基本的な仕様は大きく変わらなかったが、3型となった時にGT-Bだけはリアフェンダーが外に張り出すよう拡大された。おそらく現存する多くのS54スカイラインは、この3型GT-B。筆者が初めて運転したのもこの3型だった。幸運なことにS20型DOHCエンジンを搭載するハコスカGT-Rを運転したことがあり、その直後にノーマルのL20型を搭載するハコスカGTと、この3型GT-Bを乗り比べる機会に恵まれた。

頭の中ではGT-Rが最強のスカイラインであり、それ以前のプリンス時代のGT-Bを単なるSOHCの古いクルマだろうと考えていた。ところが、実際に運転すると従来までの考えが誤りだったことを痛感した。GT-Bは何しろエンジンの存在感が段違いに強い。確かに高回転まで回す喜びではDOHCのGT-Rに分があるのだが、そこまでのブ厚いトルクと軽い車体を猛然と引っ張る感覚は明らかにGT-Bが上。サーキットでタイムを競うならGT-Rだろうが、街乗りや峠道で楽しいのはGT-Bだ。

低速からトルクが立ち上がり、回転数を3000r.p.m.以上に保っていればどこから踏んでもピックアップに優れる。そして音。GT-Rも同じ3連キャブだが、S20のソレックスよりウエーバーには荒々しさとピックアップの鋭さを感じる。初めて運転した瞬間に、GT-RよりGT-Bが欲しいと直感したくらいだ。

のちにシングルキャブのGT-Aも運転したのだが、こちらは肩透かしに終わった。キャブだけではなく圧縮比やカムプロフィールが異なるため、非常にマイルドな印象なのだ。足まわりもソフトで、ロールが安定してから向きを変える感覚。GT-Bのようにリアが回り込みながら向きを変えるのとは対照的だった。

特別なスカイラインという言葉は、まさにGT-Bのためにあると断言したい。同じことを今回のGT-Bオーナーも感じている。Hさんは長らくベレットGTRのオーナーだった。ベレGのライバルであるスカGも気になる存在だったのだろう、数年前にGT-Bを買い足すことになる。ところがその数ヵ月後、同じGT-Bながら2オーナーで新車当時の塗装が残る現車に巡り合った。何しろボディを大きく補修したことがない貴重な個体。迷わず買い換えたものの、保管場所がなくなり旧車を1台にしなければならなくなった。ベレットとGT-Bどちらを残すか迫られ、長く愛着のあったベレットではなくGT-Bを選んでいる。

それだけ生産当時の面影を色濃く残すGT-Bは貴重であり、特別な存在だ。今回の取材中、通りかかる通行人の方から数多く声をかけられた。大体が60代以上とお見受けしたが、どなたも「これGT-A、それともB?」と聞いてくる。生産終了から50年以上経たモデルであるのに、多くの人の記憶に残っている。やはりGT-Bは特別なスカイラインなのだと改めて思い知らされた瞬間だった。

【specification】日産プリンス・スカイライン2000GT-B
●全長×全幅×前高=4235×1510×1405mm
●ホイールベース=2590mm
●トレッド(F:R)=1265:1255mm
●車両重量=1095kg
●エンジン形式=水冷直列6気筒SOHC
●総排気量=1988cc
●圧縮比=9.3:1
●最高出力=125ps/5600rpm
●最大トルク=17.0kgm/4400rpm
●変速機=5速MT
●懸架装置(F:R)=ウイッシュボーン:リジッド
●制動装置(F:R)=ディスク:リーディングトレーリング
●タイヤ(F&R)=5.60-13-6PR
●新車当時価格=94万円

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