■トヨタとスバルが注力する「カーボンニュートラル燃料」とは
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。
カーボンニュートラルとは何か。
それは二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を「実質的にゼロ」にすることを意味します。
その実現のひとつとして「クルマの動力源を内燃機関から電気に」という声が高まっています。
ただ、すべてのクルマを電気自動車にすれば解決……にはなりません。
そう、電動化はカーボンニュートラルの手段のひとつにすぎません。
【画像】トヨタとスバルのガチンコ勝負! 開幕戦の裏側はどうだった?(41枚)
そのためトヨタは「正解が解らないないからこそ、選択肢が必要」と一貫してマルチソリューションを唱えており、現在もさまざまなトライをおこなっています。
そのひとつが2021年からスーパー耐久に水素エンジンを「カローラスポーツ」に搭載しての参戦。
そして2022年からは、スバルと共にバイオマス由来の合成燃料(カーボンニュートラル燃料)を使った「GR86」と「SUBARU BRZ」で参戦しています。
そもそも、カーボンニュートラル燃料とは何なのでしょうか。
なかには「CO2を出さない燃料」だと思っている人もいるようですが、それは大きな勘違いです。
成分は化石燃料に近く、燃焼させるとCO2が発生します。
しかし、燃料生成する際に大気中のCO2から分離した炭素を使うためCO2の排出量を実質ゼロ(=カーボンニュートラル)とみなすことができる……というわけです。
つまり、製造過程で光合成/工業合成などでCO2を回収することで、大気中のCO2量を増やさないような燃料の総称になります。
そんなカーボンニュートラル燃料ですが、実はさまざまな種類が存在します。
ひとつが生物由来の有機性資源を発酵させて作るバイオ燃料です。
有名なのはサトウキビやトウモロコシなどに含まれる糖分を微生物により発酵→蒸留してできるバイオエタノールです(第1世代バイオ燃料)。
ちなみにブラジルでは1970年代の石油ショック以降バイオエタノールの推進をおこなっており、自動車メーカーもガソリン/バイオエタノールどちらの燃料を入れても走行可能なクルマを発売しています(フレックス燃料車)。
ただ、サトウキビやトウモロコシは食用でもあるため、燃料消費が増えた場合に食料価格の高騰という問題もあります。
そこで、生まれたのが木材やワラ、藻といった非食用の原料(セルロース系原料)を用いた第2世代バイオ燃料です。
食料との競合が発生しないもののセルロースは簡単に分解ができないため、製造工程は複雑になります(=コスト高)。
そして、現在開発されている次世代バイオ燃料が酸素を含まない炭化水素系燃料です。
原料(セルロース系バイオマス、微細藻類、都市ごみ/排ガス、廃食油/植物油)により燃料に変換するプロセスはさまざまですが、適切に精製することで化石燃料とほぼ同じ燃焼特性を実現可能となっています。
■カーボンニュートラル燃料を使うメリットは?
そして、もうひとつが水素と二酸化炭素を合成して製造される「合成燃料」です。
ガソリンの主成分は炭素(C)と水素(H)の化合物である炭化水素(CH)の集合体なので、それを化学的に作り出すという物になるため「人工的な原油」ともいわれています。
合成燃料=e-Fuelと思われがちですが、e-fuelには定義があります。
それは「再エネ由来の水素」と「産業の排出源もしくは空気から直接回収された二酸化炭素」を原料として合成・製造した燃料であることです。
ちなみにe-Fuelの「e」はEcoではなくElectroを意味し、「再生可能資源からの電気エネルギーを化学的に蓄えている」という用語になります。
ではカーボンニュートラル燃料を使うと何がいいのか。
それはこれまで100年以上に渡って進化を遂げてきた内燃機関も大幅なCO2の削減が可能になることです。
さらにいうと、すでに世の中を走っているクルマにも活用できることも大きな強みのひとつですが、問題・課題がないわけではありません。
ひとつは「製造コスト」です。
安価で大量の低炭素水素が必要となるため、再生可能エネルギー電力コストの高い日本がどこまで対応できるかは、大きなハードルです。
もうひとつは「エネルギー利用効率」です。
再生エネルギーを直接充電できる電気自動車に対して、燃料にするためにさまざまなプロセスが必要になるので、効率としては低い……ということです。
ただし、充電/給電の手間、航続距離、インフラといった悩みを持つ電気自動車に対して、カーボンニュートラル実現のための「選択肢」のひとつとしては、非常に強力な武器であると筆者(山本シンヤ)は考えています。
■スーパー耐久に参戦する「GR86」と「SUBARU BRZ」はカーボンニュートラル燃料を使って参戦!
TOYOTA GAZOO RacingとSUBARUがスーパー耐久シリーズを活用しながら開発をおこなっているカーボンニュートラル燃料は炭化水素系のバイオ燃料と、合成燃料を混ぜたもので「P1レーシング・フューエルズ製」です。
WRCでは2022シーズンから使用されていますが、スーパー耐久シリーズで使われているものはJIS規格を狙って製造しており、市場でもそのまま使えるカーボンニュートラル燃料を目指しているところがポイントです。
スーパー耐久の現場で、ガソリンとカーボンニュートラル燃料を使ったときのエンジンの性能差を28号車「ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」と61号車「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」の両ドライバー達に聞いてみましたが、どちらも「いわれなければ違いは分からない」とのことでした。
ただ、エンジニアリング的には“まったく同じ”ではなく、量産に向けた耐久・信頼を確保するためにはさらなる進化が必要だといいます。
その中身についてはまだ多くは語れないようでしたが、少しだけヒントを。
それによると炭化水素系バイオ燃料の成分は、ガソリンに限りなく近いものの完全に同じではなく余計な成分も入っています。
それがエンジンに何らかの影響を及ぼしている可能性があるそうです。
そのため、現時点では「燃料を改善すべきか? それともエンジン側で対応すべきか?」といった議論の真っ最中で、まだシークレットだといいます。
とはいうものの、ここは内燃機関の将来に関わる大事なところなので、今後の動向にも注目していきたいです。
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みんなのコメント
たぶん、脱CO2厨どもが、燃料の出自を問わず走行時にCO2を出すものはダメ、と言い出すだろうと予想される。
すべては私利私欲のための政治的思惑だからね。
BEVだろうが、FCVだろうが、e-fuelだろうが同じこと。コストを引き受ける必要がある。
BEVなら、「電費が安い」という声もあるだろうが、車本体が高い電池代で足が出ている。
(しかも、そのうちにBEV用の電気代は何らかの方法で上がる。ガソリン税の代わりが必要だからね)
まぁカーボンニュートラルの必要経費になってしまうのだろうな