現在、ボルボは「XC40」、「XC60」、「XC90」の計3つのSUVモデルを、サイズと価格によってセグメント分けしている。なかでも、ミドルサイズのXC60は、2017年10月の日本販売開始以来、多くのユーザーから支持を受け、着実に販売を伸ばしているそうだ。
XC60シリーズのなかでも、今回紹介する「T6 AWD Rデザイン」は、パフォーマンス志向のユーザーを意識したモデルである。なお、XC60の設定グレードは多彩だ。燃費志向のユーザー向けに、ガソリンエンジンの「T5」や、ディーゼルエンジンの「D4」を用意する一方、最新テクノロジーを好むユーザー向けに、PHV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルの「T8ツインエンジン」もカタログに載せる。
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これらのグレードは、すべて直列4気筒エンジン(T8にはさらに、電気モーターもくわわる)であるものの、異なるチューニングだ。6気筒や8気筒などマルチシリンダーエンジンを手がけない現在のボルボらしい。
今回テストしたグレード「T6」が搭載するエンジンは最高出力320ps、最大トルク400Nmを発揮する。T6の下に位置する「T5」は最高出力254ps、最大トルク350Nmだから、だいぶ差がある。実際に乗るとT6は明確に速い。クルマに速さを求めるユーザーのために開発されたモデルと知れる。
全長4690mm、全高1660mmのボディを、2.0リッターエンジンが軽快に走らせるのだからたいしたものだ。エンジンのレスポンスはとりわけ低回転域でめざましい。スーパーチャージャーの働きにより、1500rpmもあれば100km/hまであっというまに達する。
とりわけ、T6で味わうべき点は、中間加速の鋭さだ。センターコンソールのシフトレバー近くにあるドライブモードセレクターで、「ダイナミック」を選択すると、アクセルペダルの踏み込みに対するエンジンレスポンスのよさと加速の鋭さには、ホントびっくりする。ごくわずか踏んだだけで、2t近いボディが軽量スポーツカーのようなダッシュ力を見せるのだ。
私は、「コンフォート」でも充分速いと感じたので不満はなかったが、ダイナミックはより速く、そして面白い。ダイナミックを選び、ワインディングロードを駆け抜けるのは、XC60 T6 AWD Rデザインならではの魅力かもしれない。ようするに2つのキャラクターを使い分けられるのだ。
サスペンションはRデザインのために用意されたスポーティな設定である。たとえば、フロントのコイルスプリングと、リアのコンポジット素材のリーフスプリングは、チューニングを強化(バネレートはノーマルサス比で約30パーセント硬めにしている)している。
くわえて、専用モノチューブ・ダンパーを装備し、前後ともに1mm直径がふとくなった強化型アンチロールバーを備えている。さらに、電動パワーステアリングもスポーツチューンド(ギア比)に変更されるなど、エンジンのハイパワー化に対応し、操縦性もグレードアップされているのだ。
乗り心地は「すこし硬いかな」といった印象だ。しかし路面の凹凸を拾いすぎはしない。操縦性を重視したスポーツサスペンションであるが、快適性が犠牲になっていないのは、うまい設定である。
走行中の動きは、重量級ボディのおかげもあり、足まわりがバタバタせず、しっとり感があって好ましい。ロードノイズをはじめ騒音は(ノイズキャンセラーの働きもあって)低く抑えられている。700万円を超えるSUVにふさわしい重厚感がちゃんと備わっているのだ。
インテリアでまず圧倒されるのは、壁のようにアップライトでそびえ立つダッシュボードの存在感だ。さらにボルボのデザイナーは、ダッシュボードにウッドパネルとクロームによる視覚的アクセントを設け、上質な雰囲気を醸し出すのに成功している。シートを含むインテリアの素晴らしい造型感覚と色彩感覚は、いまも他社の追随を許していない。
とりわけXC60シリーズのシートは完成度が高い。さまざまなクッションが複雑に組み合わされた構造で、座り心地がよく、ホールド性といった機能面もよく出来ている。なお、Rデザインのシートは、さらにサポートがしっかりしているスポーツタイプだ。
革巻きステアリングホイールは径が太すぎず、また、握りかげんも適度にソフトだ。乗員が直接触れる部分に、とても気をつかっているのがよくわかる。そういえば、ボルボ・カーの米国ホームページには印象的な言葉が記されている。
「Choose The Volvo That Suits Your Life」
日本語に訳すと「あなたの生活にぴったり合うボルボを選んで」だ。よく考えれば一般的な表現かもしれないが、XC60に乗っていて私の頭にはこの一節が強くよみがえった。
なぜか? それは、”ぴったり合う”という表現がこのクルマの評価にふさわしいと思えたからだ。あらゆる部分が人間の感性にマッチする。先述のハンドルの握り具合が好例だ。なるほど、XC60が大ヒットする理由が、乗れば乗るほどしっくりきたのであった。
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