この記事をまとめると
■ポルシェは2010年にジュネーブショーで公開したコンセプトカーを2014年に市販
完全な電気自動車なのになぜ? ポルシェ・タイカンに「ターボ」というグレードが存在する謎
■612馬力の4.6リッターV8をミッドシップに搭載し、前後に3個のモーターを持つ
■ポルシェは10年以上も前にPHEVのスーパースーパーカーを実現していた
10年周期で誕生する特別なポルシェのスーパースポーツ
2010年のジュネーブショー。ここでポルシェは一切の予告を行うことなく、1台のコンセプトカーを出品した。それは現在ではもはや珍しいものではないのかもしれないが、当時はまだ競合各社にとっては未来のスーパーカーの姿ともいえる、PHEVのメカニズムを搭載した「918スパイダー」。
この段階でポルシェは、そのプロダクション化に関しては今後の判断であるというコメントを貫くに留まっていたが、彼らがその歴史の中で、1963年の「904カレラGTS」に始まり1973年の「911カレラRS」、1986年の「959」、1996年の「911GT1」、そして2003年には「カレラGT」と、ほぼ10年という周期で特別なスーパースポーツを誕生させていたという史実を考えれば、この918スパイダーのプロダクション化というものもまた、水面下においては既定路線だったとも想像できる。
実際にポルシェが918スパイダーの生産と受注の開始を宣言したのは、翌2011年5月になってからのことだった。この間、ポルシェはさらに20台以上のプロトタイプを製作。その中には1970年代以降のポルシェ製レンシュポルト(レーシングカー)に採用されたマルティニカラーで彩られたモデルも存在し、918スパイダーのプロモーションに絶対的な効果を生み出した。ポルシェの宣伝戦略はじつに巧みで、そしてまた趣味性に富んでいたのだ。限定台数は918台。その生産は2013年9月18日から開始された。
918スパイダーのデザインは、基本的にはコンセプトカーの時から大きく変化はしていない。基本構造体はもちろん軽量で高剛性なカーボン製のモノコックで、ボディパネルにも同様にカーボン素材が使用されるが、前後のエプロンなど一部パーツに強化プラスチックが使用されている。フロントピラーの傾斜は、コンセプトカーのそれと比較すると若干弱くなったほか、オンロードでの日常的な使用を意識した改良が施されているのが、生産型918スパイダーでの変更点としてよいだろう。
時代を先どるPHEVでシステム最高出力は脅威の887馬力
リヤのスポイラーとディフューザーはアクティブ式で、これによって918スパイダーは全速度域で理想的な空力特性を得る。二分割式のルーフは着脱が可能で、フロントフェンダーにはあの「917K」のモチーフが採り込まれていることもポルシェのファンには一目瞭然といえるのではないだろうか。
ミッドに搭載されるエンジンは、「RSスパイダー」用のそれを始祖とする、4593cc仕様のV型8気筒DOHC。コンセプトカーのそれからは1リッター近く排気量を拡大した計算になるこのエンジンは、それ単体でも612馬力の最高出力を発揮する高性能なもの。高出力化と同時に軽量化も開発時の重要なテーマであり、エンジンの構成部品にはチタン製コネクティングロッドなどが採用されているほか、ドライサンプの潤滑システムに採用される4個のバキュームポンプもプラスチック製となる。
エグゾーストシステムが上方排気となるのも918スパイダーの特徴だが、これはボディ下部を流れてきたエアとの干渉を嫌ったことが直接の理由であることは間違いのないところ。組み合わせられるミッションが7速PDKとされたことも、カレラGTでの6速MTからの大きな進化といえる。
918スパイダーには、さらにこのほかに3個のエレクトリックモーターが搭載されている。このうち2個はフロントアクスルの左右各々に、残りの1個はPDKを介してリヤアクスルを駆動する構造だ。結果的に918スパイダーが発揮可能な最高出力は、システム全体で887馬力。二次電池は液冷方式のリチウムイオンバッテリーで、キャビンの後方にそれは搭載されている。
ちなみにコンセプトカーの発表時点でポルシェが掲げていたゼロエミッション走行の目標値は、最高速が150km、最大航続距離は25km。
最高速は345km/h、0-100km/h加速は2.8秒という驚異的な運動性能を実現しながら、その一方で3L/100kmという燃費性能(NEDC値)を得た918スパイダーは、まさに新世代のスーパーカーそのものだったのである。
忘れないでほしいのは、それが今から10年ほども前のストーリーであったということにほかならない。
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すごい車だなと思った