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【ヒットの法則465】500アバルトは強心臓で痛快なイタリアンダイナマイトだった

掲載 更新 4
【ヒットの法則465】500アバルトは強心臓で痛快なイタリアンダイナマイトだった

2008年、世界的に販売好調なフィアット500(チンクエチェント)に待望のアバルト仕様が加わった。前評判は高く、試乗前から期待は高まるばかりだったが、Motor Magazine誌はイタリアはトリノ郊外にあるフィアット社のテストトラック「バロッコ」で試乗する機会を得た。その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)

500の1.4Lモデルが搭載する100psの4バルブDOHCにターボを装着
2007年3月のジュネーブショーで、復活を宣言したアバルト。第一弾のモデルとして、グランデプント アバルトが昨秋に投入されたが、ここまで9カ月で3000台あまりが販売されたという。この数字自体、大成功といえるレベルなのだが、さらにフィアット社を喜ばせたのが、顧客の年齢層だった。60%以上が30歳以下の若者で、さらに30%以上がフィアット社製品を初めて買った人たちだったというのだ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

レトロ趣味のベテランユーザーに受けたのではなく、若者や新規顧客にアバルトのスピリットが支持されたのだから、これほど嬉しいことはないだろう。アバルトの価値は、時が経過しても何ら損なわれることがなかったというわけだ。この辺りの事情は、伝統のブランドも「昔の名前で出ています」というようなイメージでしかとらえられず、また、実際に伝統的なスポーツカーなどに乗っているのはオジサンばかりという日本とはまったく違う。イタリアが羨ましい限りだ。

さてそのアバルト。第二弾モデルとなるのが待ちに待った500(チンクエチェント)アバルトだ。その存在は昨年7月のフィアット500デビュー時から公言されていたが、あれから1年、ついに登場となった。

試乗会が行われたのはグランデプント アバルトと同じ、イタリアはトリノ郊外にあるフィアット社のテストトラック「バロッコ」だ。会場に着くと、10数台の500アバルトが並んでいたが、何かちょっと変な雰囲気。近づいてみると実車と同じような絵が描かれたボディカバーに被われていた。この辺りのセンスは、さすがイタリアだ。

さてその中身だが、エンジンは通常の1.4Lモデルが搭載する100psの4バルブDOHCにターボを装着、135psまでパワーアップしている。トルクも131Nm/4250rpmから、206Nm/3000rpmへと大幅に向上。それに伴い、もちろんサスペンションやブレーキが強化され、また電動パワーステアリングはスポーツセッティングとなっている。

そして注目されるデバイスはTTC(トルク トランスファー コントロール)で、これは安定した姿勢で速くコーナリングするために、左右輪のトルクを電子制御で配分するものだ。さらに最適なシフト選択を促すGSI(ギア シフト インジケーター)が、このクラスとしては初めて採用されている。

インテリアではバケットタイプの本革シート、ステアリングホイール、シフトノブなどに赤いステッチが施されているのが目に付く。これにより上質でスポーティなイメージをうまく演出している。メーターは通常モデルと同様に、スピードとタコが同心円上に刻まれたものだが、その左下にはGSIが設置されている。

高速領域での安定感には目を見張るものがあった
バロッコのテストトラックには、低中速コーナーを基本として、一部高速周回路を通る500アバルト用の試乗コースが設定されていた。走り出すとまず中速コーナーが続くが、サスペンションがよく粘ることに驚く。ロールは少なく安定した姿勢で、しなやかにコーナーをクリアする。そして乗り心地が非常によい。

このあたりのフィーリングはグランデプント アバルトと似ている。街中でも何ら問題なく、快適に走ることができるはずだ。日本車の高性能モデルには、とても街中で走る気にならないハードなものもあるが、アバルトはそういう志向ではない。

エンジンはよく回る。レッドゾーンの6000rpmまで一気に吹け上がる、というほどではないが、小気味よく回転が伸びていく。135psの1.4Lエンジンとしては合格点だ。そして、アクセルペダルを踏み込んだまま高速周回路に入っていく。スピードは140km/h、150km/hと伸びていくが実に安定している。

ステアリングホイールから伝わる路面のグリップ感がしっかりとしており、不安感がまったくない。コースレイアウトの関係で160km/hまでしか試すことはできなかったが、これは凄い。大したものだ。

最後に、TTCはオン、オフを選ぶことができるので、その効果のほどを実感できるはずだったのだが、これについては詳しい作動原理なども含め、改めて報告する機会を作りたいと思う。限られた試乗時間の中で、オン、オフを同じ条件で十分に試すことができなかったからだ。

さて、500アバルトのイタリアでの販売価格は1万8500ユーロ。年内に欧州全体で5000台の販売を目指すそうだが、手応えは十分だそうだ。日本へは2009年の春に導入、価格は300万円少々というレベルになるようだ。ノーマルのフィアット500も人気で、納車にかなり時間がかかるような状況にある日本。イメージリーダーとして素晴らしい仕上がりを見せるアバルトの登場で、フィアット500全体の人気がさらに上がってくるだろう。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2008年9月号より)



500(チンクエチェント) アバルト 主要諸元
●全長×全幅×全高:3657×1627×1485mm
●ホイールベース:2300mm
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:135ps/5500rpm
●最大トルク:206Nm/3000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:5速MT
●最高速:205km/h
●0→100km/h加速:7.9※欧州仕様

[ アルバム : 500(チンクエチェント) アバルト はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

4件
  • ちょっとミッションがね…
  • 素の500は、ほんわかした乗り心地でキャラに合っていると思うが、アバルトはシャシの性能が低すぎて怖い車になっている。
    この怖さをダイナマイトといえば聞こえは良いが、アバルトはダメ車だと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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