■「プリウス」という名前の賞味期限切れも近い?
2015年12月のデビューから約3年。トヨタ・プリウスがビッグマイナーチェンジを実施した。空力重視のシルエットは相変わらずだが、前後灯火類の意匠を一新することで、大きくイメージチェンジしたのは、ご存知の通りだ。
機能面での変更・進化点は車載用DCM(通信装置)を全車に標準装備したコネクテッドカーになったことが一番のポイントだ。衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンス」も全車に標準装備したことも見逃せない。逆にいうと、デビューから3年が経っていながらパワートレイン系の進化については触れられていない。まったく進化していないということはないだろうが、数値に現れるような変更点はないということだ。実際、量販グレードの燃費はJC08モードで37.2km/L(4WDは34.0km/L)と変わっていない。むしろ、この時期のマイナーチェンジなのにWLTCモードに非対応であることが疑問に思えるほどだ。
それゆえに、マイナーチェンジを発表するリリースにおいても主なポイントとして紹介されているのは、
1.先進的で洗練された内外装デザイン
2.コネクティッドサービス
3.安全機能を強化
4.便利・快適機能を拡充
の4点となっている。自動車業界のトレンドである「CASE」でいえばC(コネクテッド)とA(自動運転)の要素を標準装備したわけだ。
■さらに注目すべきは月販目標台数
プリウスといえば販売ランキングのトップを争うモデルであったが、このマイナーチェンジを機に目標が6600台と、かなり下方修正された。現行プリウスのデビュー時には月販目標1万2000台であったことを考えると、トヨタが考えるプリウスの市場はほぼ半分になったといえる。プリウスPHVやプリウスαとの合計になるが、直近で月販8762台を売っていることを考えると6600台というのはかなりリアルな数字だ。
こうした目標の下方修正を「プリウスがカッコ悪くなって人気を失った」とみる向きもあるだろう。そうだとすれば、デザインによってブランド力を落としてしまったケーススタディのテーマとなるだろう。しかし、せっかく“内外装デザインを洗練した”わけだからマイナーチェンジ後において目標を下げる必要はないともいえる。
思えば、初代プリウスのデビューから21年が経った。ハイブリッド専用車としてのインパクトは薄れている。今回のマイナーチェンジにおいてテクノロジー面では、コネクテッドとADAS(先進運転支援システム)の進化をアピールしていることからも感じ取れるように、ハイブリッド・パワートレインは当たり前になってしまった。もはやハイブリッドであることがセールスポイントにはならない時代であることを、プリウスの月販目標値は示しているのかもしれない。その名前が役割を終えたというのは言い過ぎかもしれないが、ハイブリッドや省燃費だけでは商品性として勝負できない時代になったことを、プリウスのマイナーチェンジからは感じてしまう。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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