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最新のEV、「リーフ」の高性能の秘密を探る

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最新のEV、「リーフ」の高性能の秘密を探る

新型リーフ テクノロジー詳細解説と魅力探訪 Vol.4

新型リーフは、JC08モードで400kmの航続距離を可能とし、出力は従来型の80kW(108ps)から110kW(150ps)へアップ。最大トルクは254Nmから320Nmに向上している。これは航続距離と動力性能をともに大幅に高めたことになる。また、加速では0-100km/h加速で15%短縮、60km/h-100km/hの中間加速では30%も速くなっている。こうした性能向上はどのようにして成し遂げられたのか? 開発を担当したエンジニアにリーフのテクノロジーの進化を聞いた。

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■モーターと進化したインバーター

新型リーフが採用している駆動用のモーターは、永久磁石同期式の「EM57」型で、このモーターは前型リーフから変更されていない 。それにもかかわらず、どのようにして出力をアップできたのだろうか。それは、モーターの出力をコントロールするインバーターの改良によるところが大きいという。

「モーターに、より大きな電流を流すことでトルクを向上させています。ただ、大きな電流を流すとインバーターを制御する半導体(IGBT:絶縁ゲートバイポーラトランジスター)での発熱が大きくなります。ですからその半導体の発熱を下げるために最新の半導体を採用しています。さらに放熱構造を見直し、より冷却できるようにして、より多くの電流を流せるようにした結果、トルクを高めることができました。さらに出力については、低回転側と高回転側を制御できるような、2つの制御を切り替える方式のインバーターを採用して達成しています」(パワートレーンプロジェクト部電動パワートレーンプロジェクトグループ 阿部哲郎主担)

このインバーターの低速用と高速用の制御切り替えは、いかに自然に違和感なく切り替えることができるようするかが重要だったという。またIGBTの冷却は、これまで放熱用のアルミ板を介して冷却水に放熱していたが、新型ではIGBTのモジュールと一体の放熱フィンにより、直接的な冷却が可能となり、冷却性能を高めることができたのだ。

つまり新型リーフはインバーターを大幅に改良することで、出力、トルクの向上を達成しているということができる。また、低速用、高速用のインバーター制御を切り替えることで、高速側の伸びをよくすることができ、誰が乗っても不満のない加速性能が実現しているのだ。

さらに出力の向上と比例し、減速時の回生力も初代リーフの47kWから70kWに向上し、それだけ充電能力が高まり、回生ブレーキも使用しやすくなっている。

また阿部主担は、モーターでの加速について、日産は遅れのない超ハイレスポンスの加速と、加速時車体のガクガクする振動を抑える ことができるのが特長で、この点は他のモーター駆動車より優れているという。特に中間加速でアクセルを踏み込んだときの加速レスポンスの良さはダントツで、こうした加速時のチューニングは、トルク・出力の向上に伴って改めてチューニングをしているという。

電気駆動ならではの走りは、加速性能だけではない。リーフにはもともと「インテリジェント・ライドコントロール」と呼ぶ制御も盛り込まれている。路面の凸凹を車体に伝えないように、タイヤの回転の変動を検知してトルクを微小にコントロールし、ピッチングの動きを抑え、乗り心地を向上させるというものだ。

もちろんこうした制御はエンジンでも可能なのだが、電気信号でレスポンスよく正確にトルクを制御できる点はモーターの強みの一つである。さらにリーフは「インテリジェント・トレースコントロール」も採用している。これはモーターのトルク制御とESPを併用した、モーター駆動のメリットを活かした技術だ。

こうした微小で精緻なトルク制御をレスポンスよく実行できるのも、モーター駆動EVのメリットであり、特長でもあるわけで、リーフのアドバンテージになっているのだ。

■利便性の高いe-pedal

日産はノートe-POWERで、初めてアクセルを戻すだけで回生ブレーキによる減速ができるe-power driveを導入したが、新型リーフはその機能拡張版ともいえる「e-Pedal」 を採用している。

リーフが採用したe-pedalの回生ブレーキ力はノート e-POWERの最大0.15Gに対して最大0.2Gの減速ができるようにブレーキ力が高められている。またこの回生ブレーキの機能と合わせてアクセル・オフで停止すると自動的に電動油圧ブレーキが掛かり、停止状態を保持するオート・ブレーキホールド機能が加わるなど進化しているのだ。

このアクセル・オフで減速し、完全に停止することができる減速回生ブレーキを採用しているのは電動車の中でもリーフだけで、これがワンペダルで走れると謳っている所以だ。この「e-Pedal」の機能について、シャシー開発部シャシー制御システム開発グループの宮下直樹主担は次のように語っている。

「我々が考えている主なシーンは、大きく分けて3つあります。まずは、市街地や渋滞時でのストップ&ゴーでの圧倒的な利便性、それから坂道をリーフが判定し、坂の途中でもピタッと止まり、下がることなく簡単に発進できることです。また雪道など滑りやすい路面でも回生ブレーキと油圧ブレーキを協調させ、きちんと止まることができます。そしてもうひとつが、アクセルのコントロールでカーブの旋回姿勢をコントロールし、安心して運転しやすいようにすることです」

実はe-pedalのそもそもの発端は、このアクセル・コントロールによるコーナーの曲がりやすさや、操縦性の良さの追求から開発はスタートしているのだという。

結果的には、雪道でもアクセルペダルのオフ操作だけで安定して止まることができることに繋がっているのだ。またクルマが止まる直前も、上手なドライバーが操作しているのと同様に、滑らかに停止させるようにブレーキ力の細かな制御も行なっている。

アクセル・オフで回生ブレーキを効かせることができる機能を持つ電動車は他でも採用しているが、その回生ブレーキ力は、ほぼ0.2G付近になっており、どのクルマも信号で停まるようなシーンに合わせている。しかし、完全に停止するのはリーフだけだ。一方でハイブリッド車は回生ブレーキを積極的に使用せず、従来のエンジン車と同様に油圧ブレーキで停止するというクルマもある。

0.2Gというブレーキ力は、従来のクルマでは、赤信号で止まるときのエンジン・ブレーキ力より少し強めというレベルだが、日本ではこのブレーキ力で通常の運転であれば95%をカバーできるという。だからほとんどのシーンでアクセルペダル・オフだけの操作で減速し、止まることができるわけだ。

リーフが採用している回生ブレーキは最大で0.2Gの減速度を引き出し、0.07G以上だとブレーキペダルを踏んでいなくてもブレーキランプが自動点灯する。そして停止すると今度は自動的に油圧ブレーキがかかるようになっている。

リーフはFF駆動であるため、通常の回生ブレーキは前輪にだけ効いているが、4輪でブレーキを効かせることが有利なシーンもある。滑りやすい路面やカーブといったシーンだ。こうしたタイヤがスリップしやすいような路面では油圧ブレーキが役割を担って、4輪でのブレーキが作動するようになっている。だから雪道などではコントロールが難しい2輪の回生ブレーキよりも強く安定した4輪のブレーキ力を併用しているのだ。そのため、雪道でも恐る恐るブレーキペダルを踏むのに比べ、e-Pedalだと安心して減速することができるのだ。

そして、坂道での完全停止もリーフならではの精密な制御が行なわれているのだ。坂道の強さを推定しながら回生ブレーキ力をコントロールし、停止した瞬間にモーターにトルクを与えて坂道と釣り合うようにしている。この坂道での停止や、その状態からのスムーズな発進はリーフ独自のもので、こういった利便性もe-pedalの技術である。

■バッテリーの進化

リーフの電池パックは、初代リーフからの薄型ラミネート・リチウムイオンバッテリー・セルを積層した密閉構造の自然空冷方式を採用している。ラミネート型セルは放熱性に優れているので強制空冷や水冷といった冷却を必要としないのが特長だ。

初代リーフは、4枚のセルを1個のケースに格納したモジュールとし、合計48モジュールで構成されていた。新型リーフは電池パックの大きさは初代リーフと同じだが、セルのモジュールが異なり、8枚のセルをステンレス製のケースに入れて1モジュールとし、合計24モジュール(192セル)で構成されている。電池パックの重さは304kgで、総電圧は350Vだ。

容量が大きくなってもセルを格納するケースが減少したことで、重量は従来とほとんど変わらないという。正確には新しいバッテリーセルの厚みは1mm厚くなっている。その厚みを相殺するためにモジュールのケース数を減らし、上下方向に厚くなったケース内に従来の2倍の8枚のセルを格納することでセルの厚みのアップを吸収している。

そして容量は初代リーフの24kWhと比べると40kWhと1.6倍までエネルギー密度を高めて、航続距離400km(JC08モード)を実現している。

その背景には、リチウムイオン・バッテリーそのものの進化があった。EV・HEVバッテリー開発部バッテリーシステム開発グループの東野龍也主担は、「最初のバッテリーは正極にマンガン・ニッケル系を使用していましたが、高い信頼性、安全性を考慮しながら、さらなる容量、耐久性向上を追求してニッケル、マンガン、コバルトを使用した三元系正極にしました。もうひとつは、パッケージをこれまでのサイズ、形状と同じにしています。つまり容量容積を変えないで電池の容量を上げる工夫をしています」と語る。

実はこの3元系の正極を採用したバッテリーセルは、初代リーフのバッテリー容量が24kWhから30kWhにアップした段階で新採用されている。さらに、電極内部の粒子形状の安定化、電解液の改良、低抵抗化などにより進化させている。

特にセルの内部抵抗が低下できたことで、大電流を流しやすくなり、急速充電時でもバッテリーの発熱を抑えることができるようになっているのだ。また充電の速度も従来より早くなっている。

そして、バッテリーパックのサイズや構造を変えないことは、生産性を高め、車両のプラットフォームも大きく変更する必要がないなど、コスト面でのメリットも引き出されている。

電気自動車にとって重要なバッテリーの耐久性については、初代リーフでは5年間または走行距離10万kmのいずれか早い方の容量保証だったが、2015年のマイナーチェンジで30kWh容量となった時点で、8年間または走行距離16万kmに延長され、今回の40kWhの容量となった新型リーフも、8年間16万kmの保証としている。

このように新型リーフの電動パワートレーン、バッテリーは一段と進化し、EVならではの新しい機能として「e-Pedal」を採用したことで、より魅力的で誰もが扱いやすいクルマへと熟成されていることが理解できる。

>特集:新型リーフ テクノロジー詳細解説と魅力探訪

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