賛否両論はあれど、今のホンダに足りないものはなんだろうか?
どれにも似ていない個性と、時代を突き抜けた発想力、そしてなんといっても走りの楽しさが昔のホンダ車にはあった。
買い占め?? 読み違い??? シビックタイプRはなぜあっという間に買えなくなったのか?
そうしたものは今のホンダ車には感じられるだろうか?
そこで、かつてボクらクルマ好きが熱狂した、時代を突き抜けたホンダスポーツはどんなクルマだったのか?
そして今、そのクルマたちはいくらで買えるのか? またこの先、ホンダに出してほしいクルマを挙げてみた。
文/萩原文博、写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 ホンダ
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■これからのホンダは楽しくなっていきそうだ!
1973年12月に発売したCVCCエンジンを搭載したシビックがホンダの将来を変えた
1970年、アメリカで1963年から施行されてきた大気清浄法を大幅に修正したいわゆるマスキー法が可決。規制内容が厳しく、どの自動車メーカーでも不可能に近い数字であるとされていたが、ホンダは他に先駆けてCVCCエンジンでクリアした(1973年12月シビックに搭載して発売)
2021年、ホンダ最後F1シーズンが2021年3月28日バーレーンGPで幕を開けた。最後の年そして20歳の日本人ドライバー、角田裕毅選手の参戦ということだけでも注目が高かったが、予選P1から決勝のレースのゴールまで目が離せない展開となった。
絶対王者であるメルセデス&ルイス・ハミルトンに対し、レッドブル・ホンダのマックス・フェスルタッペンは決勝では惜しくも2位となったが、その差はわずか0.7秒。さらに予選ではポールポジションを獲得するなど、ホンダ最後のシーズンの期待値が一気に高まったからだ。
アラフィフの筆者だけではないかもしれないが、ホンダ=F1だ。1985年のウィリアムズ・ホンダからF1を見始めて、自分が免許証を取得した1988年はアラン・プロストとアイルトン・セナが16戦15勝という驚異的な結果を残した年だった。
そして自分にとってテレビで見た忘れられないシーンの一つが、本田宗一郎社長に声を掛けられたアイルトン・セナが感動のあまり泣いてしまうという場面だ。
1993年から自動車業界に携わるようになった筆者はスカイラインの父と呼ばれた櫻井眞一郎氏をはじめ、多くの自動車業界のレジェンドにお会いでき、幸運にもインタビューをすることができた。しかし、残念ながら1991年に亡くなられた本田宗一郎氏にはお会いすることができなかった。
しかし、本田宗一郎氏の残した名言やスピリットは茂木にあるホンダコレクションホールの展示物からヒシヒシと伝わってくる。その展示物から最も強く感じたのが「挑戦」という印象だ。
名言の一つである「成功は99%の失敗に支えられた1%だ。」という言葉のとおり、「マスキー法」をクリアしたCVCCエンジンをはじめ、ホンダはこれまでの常識を覆す「突き抜けた商品」を世に送り出した。
それは「需要がそこにあるのではない。我々が需要を作り出すのだ。」という考えから発生した名言の一つと言える。
そこで、ここではホンダが突き抜けていた時代の象徴的なモデルと現在の中古車相場を紹介するとともに、将来ホンダに作ってもらいたいクルマを考えてみた。
■バモスホンダ/こんなにイカしたクルマはなかなかない
ドアのないユニークなスタイルで乗り降りが容易。移動を伴う様々な現場で活躍した
バモスホンダの中古車情報はこちら!
まずは、1970年11月に販売開始したバモスホンダだ。バモスというと1999年に登場したエンジンを後席床下に搭載したMRの軽ワゴンを思い浮かべるが、もっと突き抜けたクルマが約50年前に販売されていた。
バモスホンダは、ドアのないユニークなスタイルを採用し、保護用のガードパイプを設置。さらに強固なロールバーやシートベルトを全席に装備するなど安全性を考慮した設計となっている。
さらにシャープな起動力やタフなエンジンと足回りにより、働くクルマとして最適な設計だ。2人乗りと4人乗りが設定され、4人乗りにはフル幌モデルも用意。シートはキャンバス製の防水シートでリアを折り畳めば荷物スペースにもなる。
エンジンは360ccの直列2気筒OHCで最高出力は30psを発生した。現在バモスホンダの中古車は2台流通していて、価格帯は約170万~約190万円となっている。2人乗りと4人乗りが各1台ずつ流通しているが、このバモスホンダで街を走れば目立つこと間違いなしだ。
■初代シティ/シティターボIIブルドッグのような過激さが今欲しい!
1982年9月にシティターボ(100ps/15.0kgmの1.2L、直4ターボ)が発売。続いて写真のインタークーラーターボを備える1.2L、直4ターボのシティターボII(110ps/16.3kgm)が1983年11月に発売
CMで放映されたシティターボIIのCMにはロボットのブルドッグが…
初代シティターボIIの中古車情報はこちら!
続いては1981年に登場した初代シティ。背の高いトールボーイスタイルという外観デザインを採用し、コンパクトなボディながら広い室内空間を確保したモデルだ。この外観デザインだけでも突き抜けているが、さらに突き抜けているのは、シティと同時に開発されたトライクバイクの「モトコンポ」の存在。
シティ搭載用のトライクバイクとして開発したモトコンポによる6輪ライフの提案を試みたところがこれまでの常識を越えている。シティは従来のクルマの概念にとらわれず、居住性や燃費、動力性能などクルマの機能を最大に追求。
その一方で人のためのスペースは最大に、 メカニズムは最小にするM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想に基づいて設計された都会的な感覚をもつ若者をターゲットとしたニューコンセプトカーだった。
シティターボIIのエンジンは、アクセルを踏み込んだ瞬間の強力な加速応答性を可能としている
ビジネスモデルのプロやピニンファリナが手がけたカブリオレなどもあるシティだが、やはり最も突き抜けたモデルといえば、1983年10月に“ブルドッグ”の愛称で登場したシティターボIIだ。
最高出力110psを発生するエンジンは専用に燃焼室形状を変更し、アンチノック性能を向上させたニューコンバックスエンジンを搭載。
さらに小型、高効率のインタークーラー、小型・高回転のターボチャージャー、そして過給圧を制御するウエストゲートコントロール機構を備えた電子制御燃料噴射装置のPGM F-1を採用している。
高出力エンジンに対応したチューニングを施したサスペンションなどにより軽快なフットワークを実現している。
現在シティターボIIの中古車は3台流通していて価格帯は約169万~約225万円と新車時価格の123万円を上回っている。ちなみにターボIは1台しか流通しておらず、価格は約135万円でターボII以上にレアな存在となっているのだ。
■2代目CR-X/リッター100馬力を達成したテンロクスポーツ
1989年9月に追加された2代目CR-X SiRは1.6Lで160ps、車重1000kgという今ではとても考えられないスペックを誇っていた
2代目CR-Xの中古車情報はこちら!
1987年に登場したCR-Xも突き抜けたモデルだ。先代のバラードCR-Xのほうがスゴイという意見もあると思うが、2代目CR-Xはシビック同様に新開発の4輪ダブルウィッシュボーンサスを全車に採用しているのがポイントだ。
さらに走りの効率を追求するため、テールラインの整流効果向上をはじめ、細部まで徹底したフラッシュサーフェス化によりCD値0.30という優れた空力特性を発揮している。
そして極めつけは1989年9月に追加されたリッター当たり100馬力という驚異的なハイパワーを実現した最高出力160psを発生する1.6L、直4VTECエンジンを搭載するSiRの存在だ。
SiRには新開発のビスカス・カップリングLSDを搭載するなど、当時のテンロクモデルとしては最高のスペックを誇っていた。
現在CR-Xの中古車は約13台流通していて、価格帯は約98万~約350万円。平均価格は約183万円となっている。そのうちVTECエンジンを搭載したSiRは約4台で価格はすべて200万円以上となっている。
■ホンダ ビート/このクルマなくしてはS660は生まれなかった
リアフェンダー部分にエアインテークが配置され、ミッドシップスポーツらしさを感じさせた
ホンダ ビートの中古車情報はこちら!
本田宗一郎氏が亡くなられた1991年に登場した軽オープンカーのビートも突き抜け感はスゴイ。先日S660の生産終了がアナウンスされたが、このビートがなければS660は誕生しなかったといっても過言ではない。
ビートは軽乗用車として初めてエンジンを運転席後方にレイアウトするMR(ミッドシップエンジン・リアドライブ)方式の2シーターオープンカー。
ミッドシップオープンカーとして注目されることが多いビートだが、実は軽自動車初となるSRSエアバッグ装着車を設定するなど安全装備も充実したクルマだったのだ。
フロントウインドウの傾斜角とラウンド角の最適設定によって、不快な風の巻き込みを抑えている。幌はマニュアル式のソフトトップを採用
搭載するエンジンはF1のテクノロジーからフィードバックされた技術を採用。吸気効率を飛躍的に向上する「多連スロットル」やシャープなスロットルレスポンスと安定したアイドリングを両立する「燃料噴射制御マップ切り替え方式」を採用したMTREC直列3気筒エンジンを搭載している。
現在ビートの中古車は約132台流通していて、平均価格は約72.3万円。中古車の価格帯は約34万~約200万円と幅広くなっている。
かつて軽自動車ABCと呼ばれたマツダ AZ-1は約19台、スズキ カプチーノが約90台の中古車が流通しているが、ビートは最も多く残っており、ユーザーから支持されていることもわかる。
■初代インテグラ タイプR/超高回転型VTECエンジンを積んだFFスポーツ
3ドアクーペと4ドアハードトップを設定した、インテグラ タイプR(写真は3ドアクーペ)
初代インテグラ タイプRの中古車情報はこちら!
これまでは本田宗一郎氏が存命していた時に発売されたモデルだったが、1995年8月に登場したインテグラ タイプRの突き抜け感は本田宗一郎氏のスピリットを強く感じるモデルだ。
究極のFFスポーツモデルを目指して、当時世界最高峰のリッター当たり111psを実現した最高出力200psを発生する1.8L、直4DOHC VTECエンジンを搭載。
ボディ剛性の高さ、ハードセッティングのサスペンションなど公道を走れるレーシングカーさながらのポテンシャルだ。
現在、初代インテグラ タイプRの中古車の流通台数は約42台で、価格帯は約128万~約890万円と300万円を超える中古車が8台も流通するなどプレミアム価格となっており、だんだんと手が届かない存在になりつつある。200万円以下の中古車が流通している今が購入のラストチャンスと言えるかもしれない。
■今後、こんなクルマを出してほしい!
シティコミューター的なキャラクターのホンダeだが、モーターをリアに搭載し、後輪を駆動するRRであることから、ホンダeをベースにしたEVスポーツの登場なども期待したい
ここまでは、時代を突き抜けていた過去のクルマを紹介してきたが、最後は今後ホンダに出してもらいたい期待のクルマを考えてみた。
まずは軽スポーツカーのS660の生産終了を受けて、ホンダeのユニットを流用したS660の後継車となるEVミドシップスポーツカーを出してもらいたい。
軽自動車の規格で作るのが難しいというのであれば、S2000の後継車としてもいいだろう。航続走行距離は無視して、サーキット走行を視野にいれたEVスポーツカーはいかにもホンダらしい意欲作だ。
また、高出力・低燃費で定評のあるe:HEVをさらに進化させて、N-BOXやN-ONEといった軽自動車に展開できれば、N-BOXの販売台数No.1をさらに盤石なものとできるかもしれない。
そして、2022年前半にデビュー予定の次期型シビックタイプR。現行型同様の直4、2Lターボを搭載し、後輪は独立した2モーターを組み合わせたハイブリッドになると予想される。
やはり、ホンダといえば9000回転まで回る超高回転型のVTECエンジン。最後の悪あがきではないが、純ガソリン車の新車販売が禁止される2030~2035年の前に、ホンダの底力を感じさせる超高回転型VTECを積んだ、手に届くスポーツカー(NSX級ではない)を出してほしい。
その後、EVの高性能パワーユニット(呼び方はe-VTECじゃないが)を積んだ、テスラや世界のEVスポーツを圧倒するスポーツカーも望まれる。
F1で培ったハイブリッド技術、そしてマスキー法をはじめ、数々の困難を乗り越えた環境性能の高さ。それを両立した新世代のスポーツカーをぜひホンダには作ってもらいたいと思う。
みなさんはホンダにどんなクルマを出してほしいですか?
もうホンダから9000回転まで回る純エンジン車はもう出てこないのだろうか。純ガソリン車の新車販売が禁止される前に出してほしい
2022年前半にデビューが噂される新型シビックタイプR(CGイラストはベストカーが製作したもの)
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自動車メディアの古臭さと閉塞感が良く表れてる。