シャレードでサファリラリーを暴れまわっていたダイハツ
ダイハツにはコペンというスポーツカーはあれど、モータースポーツ・シーンにおいてそのブランドを聞くことはほとんどない。市場的には軽自動車を中心としたブランドというイメージもあり、モータースポーツとは無縁のブランドと捉えられているかもしれない。
じつは凄いダイハツの「軽自動車以外」のクルマ! 歴代「オリジナル」の「普通車」が名車だらけだった
しかし、かつてのダイハツはモータースポーツにおいても存在感を示すブランドだった。
国内はもとより海外でも、知られる存在だったのだ。とくにダイハツ車が活躍したのがサファリラリーだ。世界三大ラリーのひとつとして独立したイベントとして捉えられていた、かつてのサファリラリーに、ダイハツはリッターカーの「シャレード」で参戦。
初代シャレードでのクラス優勝(1982年)の勢いをかって、1984年にはフルモデルチェンジした2代目シャレードに総排気量926ccのグループBホモロゲーションマシン「シャレード926ターボ」を追加。200台の限定ながら即完売という伝説を作っている。
ちなみに、926ccにした意味は、当時のレギュレーションにおける過給係数1.4を考慮して、係数をかけても1300cc以下のクラスとするため。クラス優勝を、本気で獲りにいっていた。
3代目シャレードにおいてもサファリラリーへのチャレンジは続き、1993年にはクラス優勝はもちろん、総合でも5位入賞(シャレードより速かったのは、当時のトヨタ・ワークスのセリカGT-FOURだけ)するほどだった。
モータースポーツ活動を支えたDCCSとDRS
また、1990年代には国内ラリーやダートトライアルといった競技においてもダイハツ車は活躍した。実質的に軽自動車クラスだった全日本ラリーAクラスではミラ・ターボが、ヴィヴィオやアルトワークスといったライバルとしのぎを削った。二輪駆動部門では何度も年間チャンピオンに輝いている。その背景には、クロスミッションを搭載したモータースポーツベース車を積極的に用意するという体制が功を奏していた。
2000年代には、過給係数1.7をかけて1600cc以下のクラスに入るよう、あえて排気量を936ccにダウンしたモータースポーツベース車「ブーンX4」を登場させるなど、勝つために有利なベース車両を用意するというのがダイハツ流のワークス活動を支えていたともいえる。
そんなダイハツのワークス系モータースポーツ車両にお約束として貼られていたステッカーがDCCSとDRSのふたつ。DCCSは「ダイハツ・カー・クラブ・スポーツ」の略称で、DRSは「ダイハツ・レーシング・サービス」に由来する。DCCSはチーム運営などを行なう組織で、DRSはワークスマシンを作り上げるチューナーという位置づけだったが、いずれにしても当時のリーダーは寺尾慶弘氏が務めていた。
寺尾氏は、JAFのモータースポーツ部会においても重責を担ってきたレジェンドのひとりであり、2015年にはJAFモータースポーツ名誉委員の称号を与えられている。筆者は、かつて池袋にあったDRSの本拠を訪れ、寺尾氏にインタビューした経験もあるが、ワークス活動をしつつ、モータースポーツのすそ野を広げるべく、ビギナーへ暖かい眼差しを送っていたことが印象的だ。
DCCSとして入門ラリーを積極的に開催したほか、ダイハツ工業のスポンサードにより「ダイハツチャレンジカップ」を開催するなど、多くのダイハツ車ユーザーにモータースポーツの楽しさを伝えていた。一見すると強面の寺尾氏が、開会の挨拶で放ついつものジョークに多くのエントラントがリラックスしていた様子が、いまも思い浮かぶ。
このように国内外でラリーを中心に活躍していたダイハツのワークス活動が休止になったのは2009年1月のこと。世界的にリーマン・ショックの影響で経済の先行きが見えない中で、ダイハツとしてもモータースポーツ活動を続ける余裕がなくなったというわけだ。
もっとも、リーマン・ショックによってモータースポーツ活動を縮小したのはダイハツに限った話ではなく、トヨタとホンダはF1から撤退。スバルとスズキはWRCから撤退するなど他メーカーも同様の対応をとっていた。ダイハツだけがモータースポーツ活動をやめたわけではなかったのだ。
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