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V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 100年前の革命児 体験を一変 後編

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V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 100年前の革命児 体験を一変 後編

部分的なプラットフォーム・シャシーも開発

現代のクルマでも一般的なモノコック構造には、多くの強みがある。だが、違うカタチのボディが作りにくいという数少ない弱点があった。

【画像】V型4気筒にモノコックボディ ランチア・ラムダ 同時代のクラシックと写真で比較 全119枚

そこでランチアが編み出したのが、中央部分を切り離し自由度を増すという手法。様々な形状のボディ支える部分的なプラットフォーム・シャシーに、ドライブトレインを受け止めるフロントとリアのモノコックが組み合わされた。

ラムダ初のハードトップ・サルーンが誕生したのは1926年2月。ウェイマン・ファブリック・ボディという商標を得た技術をベースにした、全長4973mmの大きなモデルだった。

それ以降は、顧客の要望へ応えられるよう選択肢が増やされた。1926年6月からのセブン・シーズではV型4気筒エンジンを拡大。2375ccとし、58ps/3250rpmを得ている。

またツアラーボディのトルピードとサルーンボディの両方で、ロングかショートの2種類のホイールベースが選択可能になった。1928年にはエイト・シリーズが登場。2568ccへ排気量が増え、吸排気系を改良することで66psを得た。

ちなみに、イタリアは1924年に左側通行から右側通行へ切り替えられている。それに伴い、ラムダも当初は右ハンドル車だったが、エイト・シリーズから左ハンドルへ変更されている。

インテリアも9年間で改良が繰り返された。シンプルなダッシュボードにメーターパネルが据えられるというスタイルは変わらないが、ナイン・シリーズでは最終モデルとして大きく手が加えられている。

ラムダの生産は1931年9月15日に終了。合計で1万2998台に達した。

100年前のクルマという予想を覆す走り

コリン・ワイズ氏がオーナーのランチア・ラムダ・エイト・シリーズは、ロングシャシーのトルピード・ツアラー。1929年式で、当時のクラシックカーとのデザインの違いを端的に示している。

全高が低く、全体のプロポーション的にはホイールベースが不自然に長く見える。運転席へ座ると、低い位置のフロアに3枚のペダルが並び、小ぶりなトランスミッショントンネルが助手席との間に走る。シフトレバーも短い。

エイト・シリーズのメーターパネルはダッシュボード中央に据えられ、メーターは5枚。イエーガー社製の大きな2枚はスピードとレブで、運転席からも見やすい。

シートポジションなど、人間工学的な不一致感はない。1速に入れてアクセルペダルを傾けると、乗り慣れた「クルマ」だという感覚に包まれる。2.6L V4エンジンは想像以上に滑らか。エンジンやエグゾーストが放つノイズもモダンだ。

シフトレバーの動きには若干の引っ掛かりがあるものの、ダブルクラッチを切ること以外、普通に変速できる。ギアが放つ唸りは3速以上で小さくなる。

走りも100年前のクルマという予想を覆す。安心感あるドライビングポジションに身を委ね、なんの問題もなく80km/hで巡航が可能。快適といっていい。ブレーキペダルは少し強く踏む必要があるとはいえ、制動力は充分でフィーリングも悪くない。

姿勢制御に優れ、ステアリングホイールには遊びが少ない。ロングホイールベースながら、回頭性も優秀。印象は、第二次大戦後間もない頃に作られたモデル以上だ。

マフィアが乗りそうな雰囲気のサルーン

続いてニック・ベンウェル氏がオーナーの1929年式エイト・シリーズ・サルーンへ乗り換える。こちらもロングホイールベースだが、プラットフォーム・シャシーを採用し、新車時に英国へ輸入された貴重な1台だ。

ウェイマン・ファブリック・ボディをまとうが、架装されたのはイタリアのランチアではなく、英国のアルバニー・キャリッジ社というコーチビルダー。リムジンのように贅沢なリアシート空間が与えられている。

スポーツサルーンというより、イタリア・マフィアが乗っていそうな雰囲気を漂わせる。ホイールベース3420mmのシャシーが、グレートブリテン島のうねった一般道を高速域で見事に受け流す。

グリップ力に優れ、サスペンションは落ち着いている。ステアリングホイールは軽く回せ、一貫性がある。ランチア・ラムダの能力の高さを、つぶさに感じ取れる。現代のモデルなら珍しくはないが、100年前のクラシックとして考えると驚かされる。

2台のエイト・シリーズとは対照的に、ウォルター・ヒール氏が所有する2.1Lエンジンのラムダ・フォー・シリーズはオリジナル状態ではない。英国へ輸入された後、1936年にモノコックが切られ、ホイールベースが3100mmから2490mmへ短縮されている。

当初のオーナーは、ヴィンテージ・スポーツカー・クラブのジュリアン・ジェーン氏。ヒルクライム・イベントなどのモータースポーツで活躍したと考えられる。

現代の自動車へ大きな影響を与えた存在

ウォルターは最近購入したばかりだという。今はブロックリー社のゴツいタイヤを履いているが、細身のビードエッジへの交換を予定している。ボディ色も変えたいそうだ。

長さは違っていても、基本的には初期のラムダではある。エイト・シリーズと比べると、内装は質素だが美しい。

アルミニウム製ダッシュボード中央のメーターパネルには、スピードと燃料、時計の3枚のメーターしか存在しない。その隣に、ヘッドライト用などの多くのスイッチが並ぶ。

AUTOCARが1923年に計測した、オリジナルのラムダの車重は1065kgだった。ウォルターのクルマの場合は、短縮されており800kg前後だと予想される。発進させてみると、想像以上に軽快に加速することもうなずける。

トランスミッションは3速から4速へアップグレードしてあり、後期のラムダよりクイックに次のギアを選べる。通常より軽いためか、トルクも太く感じる。ステアリングホイールの操舵には、適度な重さが伴う。

ホイールベースが短いゆえに、カーブへ意欲的に侵入できる。路面が荒れてくると足まわりは処理しきれない様子。とはいえ、セパレートシャシーで感取されるような不安感や気まぐれな印象は皆無。想像以上にコーナリングを楽しめた。

ランチア・ラムダは、現代の自動車へ大きな影響を与えた存在であることは間違いない。当時のドライバーへ、運転する大きな自信を喚起したはず。これが1世紀も前に生まれていたのだから、称賛せずにはいられない。

協力:フェニックス・イン社、フェニックス・グリーン・ガレージ社、WWヒール・ヒストリック・モーターカー・ワークショップ社

ランチア・ラムダ 3台のスペック

ランチア・ラムダ・フォー・シリーズ・トルピード・ツアラー(ティーポ214/1924~1925年/欧州仕様)のスペック

英国価格:675ポンド(新車時)/10万ポンド(約1600万円)以下(現在)
販売台数:850台
全長:−(ホイールベース:3100mm)
全幅:1661mm
全高:−
最高速度:109km/h
0-97km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1065kg
パワートレイン:V型4気筒2119cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:49ps/3000rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

ランチア・ラムダ・エイト・シリーズ・トルピード・ツアラー(ティーポ224/1928~1931年/欧州仕様)のスペック

英国価格:745ポンド(新車時)/10万ポンド(約1600万円)以下(現在)
販売台数:3901台(エイト・シリーズ)
全長:−(ホイールベース:3420mm)
全幅:1661mm
全高:−
最高速度:120km/h
0-97km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1270kg
パワートレイン:V型4気筒2568cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:66ps/3250rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

ランチア・ラムダ・エイト・シリーズ・ウェイマン・サルーン(ティーポ222/1928~1931年/欧州仕様)のスペック

英国価格:875ポンド(新車時)/10万ポンド(約1600万円)以下(現在)
全長:−(ホイールベース:3420mm)
全幅:1661mm
全高:−
最高速度:120km/h
0-97km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1450kg
パワートレイン:V型4気筒2568cc自然吸気OHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:66ps/3250rpm
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

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みんなのコメント

1件
  • クラシックカーは博物館に飾っておくものでなく、あくまで走って
    愉しむものと、ご存命中は休日早朝の第三京浜を濃紺の愛車ラムダで
    走っておられた小林彰太郎さん…

    早いもので、今年10月で没後10年になります…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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