現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則252】フォルクスワーゲン イオスは時代のニーズから生まれた優雅な4シータークーぺカブリオレ

ここから本文です

【ヒットの法則252】フォルクスワーゲン イオスは時代のニーズから生まれた優雅な4シータークーぺカブリオレ

掲載 更新 2
【ヒットの法則252】フォルクスワーゲン イオスは時代のニーズから生まれた優雅な4シータークーぺカブリオレ

2005年のフランクフルトモーターショーでデビューしたイオスが、2006年秋になってようやく日本上陸を果たした。日本へ導入されたモデルはいずれもパワフルなエンジンを搭載していたが、その走りや快適性はどうだったのか、複雑に折り畳まれる5分割式のハードトップの使い勝手も含めて、日本の公道を走っての試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年12月号より)

ギリシャ神話の「暁の女神Eos」に由来するネーミング
クーペからオープン状態への変身に要する時間はおよそ25秒、ユニット重量80kgに及ぶという複雑なルーフシステムを、何ともアクロバティックな動きで開閉させるという面倒な作業を行ってまで「硬い屋根」の採用にこだわったのは、特にヨーロッパ地域でのオープンモデルに対する要望が、従来のソフトトップ方式から急速にこうした形態へと傾きつつあるからだと言う。

【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?

そんなプロセスを経て、『オープン4シーター』としての姿を披露するフォルクスワーゲン発の最新モデルの名はイオス。ギリシャ神話の「暁の女神Eos」に由来するというネーミングのモデルは、ハードウエア的にはゴルフ/ジェッタとの血縁関係が非常に濃い一台だ。

1979年に初代ゴルフカブリオレが誕生して以降、もっと言えば1949年に誕生の初代ビートルカブリオレ以来、連綿と続いてきた「フォルクスワーゲンのオープン4シーター」というポジションを受け継ぐイオスは、しかしご覧のようにゴルフやジェッタとはハッキリと趣を変えた、あくまでも独立した車種としてのアピール力を強く感じさせるものだ。

ちなみに、リアシートの居住性を確保するためとは想像がつくものの、ドアと後輪との間に開いた「ちょっと大きな隙間」はスポーティというキーワードを少々薄める結果になっているようにも思う。

インテリアも、エクステリアのデザインに呼応したシンプルなデザインという印象が強いものだ。

ダッシュボードは、空調ベントの形状などが異なりはするものの、基本的なデザインはゴルフとモチーフを共にするもの。そしてその造形は、決して奇をてらうことのないエクステリアのデザインにも良くマッチしている。

『スポーツシート』の名を与えられたフロントの2脚は、確かに見た目はクッション部もシートバック側も起伏に富んだ形状をアピールするものの、実際に腰を降ろしてみればそのサポート感は特別にタイトというわけではない。そんなこんなもあって、まずは内外装を眺めた段階では、ぼくにはこれがスポーティなモデルというよりは、むしろ優雅な4シータークルーザー的なテイストが強いモデルだと感じられた。

ちなみに、2人が中央寄りに肩を並べて座ることになるリアシートは、センタートンネルによって足元空間が少々蹴られてしまう以外はレッグスペースもヘッドスペースも「予想(覚悟)していたよりはるかにまっとうな広さ」を実感。ただし、そんな居住空間からこのモデルを「フル4シーターオープン」と呼ぼうとなると、トランクスペースが4人の荷物のためにはどうも不足気味であるのが残念だ。特に、クローズ時に対して半減してしまうオープン時のトランク容量は、「せっかく座れても荷物が積めない……」とこのクルマの意外なウイークポイントと指摘されてしまうかも知れない。

強力な2種のエンジン、クローズ時の静粛性は絶品
日本に導入されたイオスには、すでにゴルフシリーズに搭載されて好評の2L直噴DOHCターボ、もしくは3.2L狭角V型6気筒という2タイプのエンジンが、いずれも2ペダル式の6速MT「DSG」との組み合わせで搭載される。欧州には自然吸気の1.6L、もしくは2Lといったよりベーシックなパワーユニットを搭載するモデルも設定されるが、それらは「オーソドックスなMTしか用意されない」ということから、2ペダル必須の日本市場には導入が見送られた模様だ。

2Lの4気筒モデルで走り始めると、同パワーユニットを積むゴルフGTI比では130kgも重いハンデをはね返し、加速の余力は十二分。刺激度ではゴルフGTIに及ばないものの、速さという点ではこれ以上を望む気にはならない。むしろ「これほどは要らないから自然吸気の2Lが欲しい」と、そんな要望が頭を持ち上げてくる。

しかし、それではより大きな余力を誇るV6モデルに魅力がないのかというと、そんなことはないから現金なもの。こちらのアドバンテージはシフトの頻度が減るのでよりスムーズな走りが可能となり、かつ時折耳に届くエンジンサウンドが『2.0T』よりも遥かに魅力的なものであるところが大きい。

ルーフクローズ時には何とか「フォルクスワーゲン車らしい」と思えるしっかり感を誇ったボディは、やはりルーフを開いた瞬間にワンランク緩くなる。

それまでは感じられなかったステアリングコラムの揺れ(いわゆるスカットルシェイク)を感じるし、クローズ時には微動だにしなかったルームミラーの映像も、小刻みに揺れ動くようになってしまう。

感心したのはクローズ時の静粛性の高さ。これは『2.0T』でも『V6』でも共通の美点だ。フロントのウインドウフレーム上部に格納された手動式のウインドディフレクターは、サンルーフを開いた際に発生するドラミングを抑制するアイテムで、オープン時にこれが飛び出すとかえってキャビン内への風の巻き込みが増えてしまうのは意外な発見。サイドウインドウを上げておけばリアシートを潰して設置するリアのディフレクターを用いなくても80km/h程度までは不快な風の巻き込みがほとんどないことも含め、空力性能の検証はオープン/クローズ時を問わず、真面目に行われている。

「太陽を載せた馬車を駆り、地上に夜明けをもたらす女神」というこのイオス。それは、良くも悪くも時代の要請の下に生み出された最新のオープンモデルという印象の一台だ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2006年12月号より)



フォルクスワーゲン イオス 2.0T 主要諸元
●全長×全幅×全高:4410×1790×1435mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●車両価格:438万円(2006年)

フォルクスワーゲン イオス V6 主要諸元
●全長×全幅×全高:4410×1790×1435mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3188cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●車両価格:498万円(2006年)

[ アルバム : フォルクスワーゲン イオス はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
VAGUE

みんなのコメント

2件
  • 大して古くさく見えないのが凄い
  • 滅多に見ないな。
    多分日本にはこの金額の購買層に天開きを求めてる人はかなり少数じゃないですかね?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

478.0576.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

34.8159.0万円

中古車を検索
イオスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

478.0576.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

34.8159.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村