三菱自の戦略とリスク
日本経済新聞が2024年12月18日に、ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議を開始したと報じてから、1か月以上が経過した。そして、2025年1月24日付の読売新聞朝刊では、三菱自動車(以下、三菱自)が経営統合への合流を見送る方針であることが伝えられた。
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三菱自は株式上場を維持しつつ、ホンダや日産との協業関係を強化し、
・車両の相互供給
・技術提携
などの可能性を模索していくと見られる。
本稿では、三菱自が強みを持つ東南アジア市場での優位性が合流見送りの背景にあると仮定し、独自路線を選択することの課題とリスクについて検証する。
東南アジア市場の現状と将来性
東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要5か国(タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム)は、経済成長が著しい地域のひとつとして知られる。若年層の人口比率が高く、都市化が急速に進展していることに加え、中間層の増加が続いており、自動車需要の大幅な拡大が期待されている。特にタイは
「アジアのデトロイト」
とも呼ばれるほど自動車産業が盛んで、政府による支援政策も充実している。一方、インドネシアはASEAN最大の人口を背景に、乗用車や二輪車で大きな市場を形成している。さらに、ASEAN各国政府が進める電気自動車(EV)促進政策により、今後のEV市場の成長にも期待が集まっている。しかし、
・各国で異なる規制
・輸入関税の障壁
・インフラ整備の遅れ
といった課題も存在する。これらの要因が市場拡大を鈍化させる可能性があるほか、グローバル経済の動向や為替変動の影響も、ASEAN市場の競争環境を一層複雑なものにしている。
ASEANにおけるポジション
ASEAN市場は長年にわたり日系自動車メーカーの牙城であり、
「8割」
近いシェアを維持してきた。3社のグローバル販売台数に占めるASEAN販売比率を比較すると、ホンダと日産が1割程度であるのに対し、三菱自動車は約3割を占めており、ASEANが三菱自にとって主要マーケットであることは明白だ。
三菱自が2023年3月に発表した中期経営計画「Challenge 2025」では、ASEANおよびオセアニア地域を成長の原動力と位置づけ、経営資源を集中させる方針を示している。この計画に基づき、より多くの新商品を投入し、台数シェアと収益の拡大を目指している。
また、三菱自は日本でも2024年2月から販売を開始したピックアップトラック「トライトン」やMPV「エクスパンダー」などで、ASEAN市場において圧倒的なブランド力を持っている。一方、ホンダや日産も一定の販売シェアを維持しているものの、三菱自を経営統合に取り込むことでASEAN市場での販売力を強化したいという思惑があったと考えられる。
しかし、三菱自にとって経営統合による明確なメリットは乏しく、合流に値しないと判断した可能性が高い。さらに、今後ASEAN市場では
「中国EVメーカー」
の台頭が予想されており、競争が一段と激化する見通しだ。そのなかで三菱自は、ASEAN市場での優位なポジションを堅持し、自社の存在感を一層強化したいという意向が見え隠れしている。
経営統合参加のメリット・デメリット
2024年のグローバル販売台数を見ると、三菱自の販売台数は約78万台である。一方で、ホンダと日産はともに300万台を超えており、三菱自がこの3社の中で存在感を十分に発揮できない状況が浮き彫りになっている。こうしたなか、三菱自が経営統合に参加することで得られるメリットとデメリットを考察する。
メリットとしては、スケールメリットの活用が挙げられる。既存の生産工場や部品調達ネットワークを利用することでコスト削減が可能となり、経営効率を高めることができる。また、EVやソフトウェア定義型自動車(SDV)、自動運転といった先端技術の共同開発が進むことで、開発効率の向上が期待できる。さらに、経営統合によって新しい市場やセグメントへの進出が容易になることで、市場シェアの拡大も見込まれる。既存の生産工場を補完する形で現地生産能力が強化され、商品供給の迅速化も可能になるだろう。
一方で、デメリットも多い。経営統合によるブランド価値の低下が懸念される。複数ブランドが併存することで統一性が失われ、従来のブランドイメージが弱まる可能性がある。また、統合に伴う意思決定プロセスの複雑化により、迅速な経営判断が難しくなり、競争環境への即応性が損なわれるリスクも否定できない。
さらに、提携関係が競合他社との競争を不利にする場合も考えられる。具体的には、日系メーカー同士が市場シェアを奪い合う間に、
「中国メーカーなどの新興勢力に市場を浸食される恐れ」
がある。異なる企業文化を統合する難しさも課題であり、文化的な対立が統合効果を抑制する可能性もある。
これらの要素を総合すると、三菱自が経営統合への合流を見送った背景には、ブランド価値の希薄化や競争力低下への懸念があり、意思決定の複雑化や企業文化の違いといった課題が大きく影響したと考えられる。
独自路線を進む上での課題とリスク
三菱自が最終的に独自路線を選択した場合、いくつかの課題とリスクが浮上する可能性がある。まず、技術革新の遅れだ。EVやSDV、自動運転といった分野で独自開発を進める場合、技術的な進展が他社に遅れを取るリスクがある。業界全体での技術競争が激化する中、単独でこれらの分野に対応するのは厳しいと考えられる。
次に、開発費負担の増大が挙げられる。独自開発には巨額の研究開発費が必要となり、それが短期的には利益率を圧迫する可能性が高い。経営統合の場合、3社で開発費を分担するスキームが検討される見通しであったが、独自路線を選ぶ場合、その負担を全て自社で背負うことになる。こうした資金的な重圧が経営に影響を与える可能性が否めない。
さらに、市場適応の遅れも懸念材料だ。現地ニーズに素早く対応するためには、現地企業やパートナーとの緊密な連携が重要になる。しかし、独自路線ではこうした連携が不足し、情報量や対応力の面で競合他社に劣る可能性がある。市場の変化に即応する力が乏しければ、競争力を失うリスクも高まるだろう。
最後に、地政学的リスクへの対応が課題となる。ASEAN地域は比較的安定しているものの、一部の国では政情不安や規制変更が突発的に発生することがある。経営統合であればリスクを分散する仕組みを構築できるが、独自路線ではリスク分散が難しく、予期せぬ影響を受ける可能性がある。
以上のように、独自路線には複数の課題が潜在しており、それらへの対応が経営戦略の大きな鍵を握ることになる。
三菱自、競争優位を守る戦略の行方
ASEAN市場は成長ポテンシャルが極めて大きい一方で、中国メーカーの積極的な進出により競争が激化する見込みだ。
三菱自がこの地域での優位性を維持するには、柔軟な戦略と独自の強みを活かした取り組みが欠かせない。競合他社との競争と協業のバランスを慎重に見極めながら、市場に最適化したアプローチを展開することで、持続的な成長を実現する必要がある。
三菱自は1月末をめどに経営統合への合流可否を最終判断する予定だ。この動きは同社の今後の戦略に大きく影響を及ぼす可能性があり、その決定を注視する必要がある。
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単なる日産不振ですよ