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カクカクしたボディが懐かしい! ボルボが手掛ける「クラシックガレージ」とは

掲載 更新 4
カクカクしたボディが懐かしい! ボルボが手掛ける「クラシックガレージ」とは

■内外装も、走りも蘇ったクラシック・ボルボ

「ナンバープレートを新しくすると書体が変わるんですよ。そうならないように、そのままにしています。こっちのクルマは、ナンバーを止めるボルトを見てください。ほら、京都の印がついているでしょ」と、にこやかにクルマを説明するのは、ボルボのKLASSISK GARAGE(クラシックガレージ)の担当者、阿部昭男さんだ。

1970年式ボルボ「アマゾン」に試乗 半世紀前のクルマに乗り続けられる理由とは

 ボルボのクラシックガレージというプロジェクトは、2016年8月にスタートした。

 表記は英語ではなくボルボらしくスウェーデン語を使用する。プロジェクトは、すでに新車販売が終了している古いボルボ車の修理/メンテナンスと、レストアした車両の再販売だ。

 スタート直後から入庫数は順調に伸びており、2016年は38台、2017年は81台、2019年は69台の修理/メンテナンスを実施。さらにレストアした車両の大多数となる19台を販売してきたという。

 プロジェクトメンバーは、わずか3名ということもあり、昨年からは、中古車をレストアして再商品化する作業に注力するために一般修理の入庫を制限している状況。プロジェクトとしては、非常に順調に推移しているといえるだろう。

 ちなみに、レストアで商品化された車両は、「240GLワゴン(1991年)」や「850T5-R(1995年)」、「960SXエステート(1993年)」、「780クーペ(1990年)」、「740GL(1990年)」、「P1800ES(1973年)」といったように、ステーションワゴンからセダン、クーペまで幅広い。1990年代の車両を中心に、さらに古いクルマが少数混じるというもの。さらに現在は、「アマゾン122S(1969年)」も商品化の作業中だという。

 今回試乗したのは、1998年製ボルボ「S90クラシック」。それまで「960セダン」と呼ばれていたモデルで、「S90」という名前になった最初の1台だ。

 ワンオーナーの個体は、まだ走行距離3万9000km。22年前のモデルとは思えないほどにシャシがしっかりしている。200ps/266Nmを発生する3リッターの直6自然吸気エンジンは、よく整備されているためかきっちりと回り、後輪駆動らしく濁りのない路面情報をハンドルに伝えてくる。当時の車両価格は580万円だった。

 ボルボらしいスクエアなボディは、いま見ても新鮮だ。このモデルも237万円で中古車としてこれから販売されるという。

 では、なぜ、ボルボの日本法人が、こうしたプロジェクトを実施しているのだろうか。

■信頼性と耐久性の高さの象徴がブランドの価値を高める

 そのきっかけは、ボルボ・カー・ジャパンのかつての社長であった木村隆之氏(2020年3月退任)の愛車P1800のレストアだった。その作業を任されたのが、自身も古いアマゾンに乗っていたという阿部さんだったのだ。そして、きれいになったP1800とともに、いろいろな旧車系のイベントに参加。そこでオーナーの声を耳にする。

「修理する場所があまりないんですね。あと、新車ディーラーにも行きづらいと」と阿部さん。

 たとえ新車でディーラーから買ったとしても、あまりにクルマが古くなると、だんだん行きづらくなるというのだ。ましてや中古車で手に入れたオーナーなら、なおさらなこと。また、メルセデス・ベンツ日本が、同様に古いクルマを対象として「ヤング・クラシックリフレッシュプログラム」を開始したのも後押しになったという。

「メルセデス・ベンツさんができるなら、うちでもやってみたいという部分もありました」と阿部さん。

 また、ボルボが、こうした古いクルマの修理/リフレッシュを手がけるには、有利なところもあった。それはボルボが古いクルマの部品の多くを、今も生産し続けているからだ。

「古いものになると1950年代からあります。逆に、1990年代後半の方が少ないくらいですよ。それにボルボは小規模なメーカーですから、いろいろな車種に、共通する部品を使っているんですよ」

 さらにボルボのクラシック・ビジネスの追い風となるのが、そのブランドの立ち位置だ。プレミアムに近いけれど、そこまでではない。リフレッシュしたクルマでも、新車当時の価格までが上限。つまり手の届く価格になる。これがプロジェクトの好調さの理由のひとつでもあろう。

 レストアで商品化された車両の価格は、「240セダン」や「940エステート」なら200万円台前半、人気の高い「240ワゴン」が300万円台といったところだ。

 個人的には、240あたりのクルマであれば、作りがシンプルで故障しても修理費はそれほど高額にならないだろう。ヒストリックカー入門にぴったりなのではないだろうか。

 とはいえ、どんなクルマもあるわけではないとか。

「1980年代のクルマは、ほとんど国内市場にはありませんね。でも、1990年代ならありますし、リフレッシュすれば常用で使うことができます。また、古い部品がすべてあるわけでもないんですよ」

 しかし、国産車の新車と、それほど変わらない価格で手に入るというのは嬉しいところ。また、「ドイツ車と違うスカンジナビアデザインを楽しんでほしい」と阿部さんが言うように、古くても最新モデルに通じるボルボのテイストは存在する。それを楽しめるのであれば、古いクルマでも胸を張って乗ることができるだろう。

 クラシック・ボルボという存在は、ボルボの信頼性と耐久性の高さの象徴でもある。こういったクラシックビジネスは、それほど儲かるものではないだろう。しかし、古いクルマを大切にする、その姿勢こそが、ブランドの価値を高める。古いボルボに乗って、ブランドというものの価値をあらためて感じることができた取材だった。

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みんなのコメント

4件
  • 素晴らしい!
    これぞ輸入車の真骨頂と思う。
    日本メーカーでこれをやろうとしてるのはマツダくらいか?まず登録13年後の腹立たしい自動車税課税を撤廃すべき。自動車文化が育たない。
  • 自分達の造ったもの、売ったものに対して何年たっても誇りを持っている気がしますね。

    だから全てでは無いにしろ、ちゃんと部品を供給してくれるし、純正が止まった部品でも探せば大体純正納品メーカーがOEM品として絶やす事なく売っている。

    こう言うのをホントの意味で自動車文化って言うんじゃないでしょうかね、日本の自動車メーカーさん?部品メーカーさん?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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