現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則241】BMW 335iクーペとポルシェ911ターボにはツインターボだけではない共通点があった

ここから本文です

【ヒットの法則241】BMW 335iクーペとポルシェ911ターボにはツインターボだけではない共通点があった

掲載 更新 2
【ヒットの法則241】BMW 335iクーペとポルシェ911ターボにはツインターボだけではない共通点があった

2006年、BMW 335iクーペに搭載されて登場した3L直6ツインターボエンジンは大きな話題を呼んだ。「なぜBMWはツインターボを復活させたのか」、それを検証するためにMotor Magazine誌は、水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載するポルシェ911ターボとともに、BMW 335iクーペのテストを行っている。今回はその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年11月号より)

335iクーペはまるで大排気量エンジンのようなフィーリング
7月にオーストリアのインスブルックで試乗したばかりのBMW 335iクーペが、9月に早くも日本へ上陸した。そこで、最新6気筒ツインターボエンジンの僚友であるポルシェ911ターボとともに、日本の道を走ってみた。

【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?

あいにくの雨模様の中、911ターボはタイヤを新しく履き替えるために少し遅れて来ることになったので、335iクーペで一足先に出発することにした。スタッフも一緒に乗ることになり、大人3人とそれぞれの1泊分の荷物を積んで東京を後にした。

都内はクルマも信号も多く、ゴー&ストップの繰り返しだ。キビキビ運転しないと流れに乗れないこともある。こんなときでも335iクーペは乗員の重さを感じることなく軽快に走る。ちょうど大排気量エンジンの感覚だ。アクセルペダルの踏み込みに対して遅れることなく加速が始まり、深く踏まなくても太いトルクが出ているようで、軽々と加速していく。

首都高速へと乗る。ランプウエイの登りでもスイスイだし、合流では短い加速レーンでも十分な加速ができる。急カーブが多い都市高速だが、アクセルペダルを踏んで加速しながらでも、オンザレールで安定したまま走れる。

日本の道では、周囲の状況で加速途中で急に一定速で走るとか、急にスピードダウンしなくてはならないケースがある。こんなときは、踏み込んでいるアクセルペダルを戻してくるわけだが、そのときにターボの影響を受けず、アクセルペダルの動きにエンジンの回転がすぐ従ってくれるのが良かった。ちょっと昔のターボエンジンのように、アクセルペダルを戻し始めているのに加速状態がわずかでも持続してしまうような反応だと、繊細なドライビングはできない。その意味でも、335iクーペはターボエンジンというよりも大排気量エンジンの感触である。

高速道路に乗っても、その軽快感は変わらない。延々と登り勾配が続く場面でも、その勾配を感じさせない走りである。これならば、長距離のドライブでもストレスを感じないだろう。

高速道路での走行時に感心したのは、ATのシフトプログラムだ。右足の動きを相当研究したようで、あたかもドライバーの心理を読んでいるかのごとくであった。アクセルペダルの開度だけを検知しているのではなく、アクセルペダルを踏み込む速さもチェックしている。踏み込みが深くても、ゆっくり踏み込んでいった場合にはキックダウンせず、それまでのギアをキープしながら加速する。低回転域からトルクが太いので、それを生かした加速ができる。アクセルペダルの踏み込み量が小さくてもスパッと速く踏んだ場合には、すぐに1段キックダウンして鋭い加速を開始する。もちろん、素早く「深く」踏み込んだ場合には、2段キックダウンして加速する。

一番奥にあるキックダウンスイッチまで踏み込んだら、そのスピードで使える一番低いギアに即座に落ちて加速するのはこれまでどおりだ。このときには、シートバックに背中を強く押し付けられる加速が続くが、日本の高速道路では合法的には使えない領域にすぐに入ってしまうので注意しなくてはならない。激しい雨の中での走行だったが、ハイドロプレーンは起きにくく、リアはしっかりとグリップしているので、ハンドルはいつも正確だった。

オーストリアで試乗したATモデルにはパドルシフトが装備されていたが、残念ながら日本仕様には設定されていない。しかし右足の動きひとつで自在に6速ATをコントロールできるし、この新しいATはシフト時間が短いので、パドルシフトがなくても思い通りのドライビングが愉しめる。

ただ、これだけのパフォーマンスを発揮できるクルマとしては、エクステリアデザインがちょっとエレガントに過ぎる感じを受けた。ルックスとのギャップが、やや大きいモデルである。

911ターボの高性能は幅広い人々に理解してもらえる
昼食後に911ターボが追いついて来たので、そちらへと乗り換える。ボクが初めて乗った911ターボは、ドッカンターボの930型だったが、それから6世代目に当たる997型の911ターボはまったく性格が異なっている。ターボラグは極めて少なく低回転域からトルクが盛り上がり、上の回転になるほどパワフルになる。

それは、620Nmという図太いトルクを1950rpmから5000rpmまでという広い範囲で発揮させていることからもわかる。ちなみにノンターボの911カレラが370Nm、カレラSが400Nm、GT3が405Nmであるから、比べてみるとターボの凄さが実感できるだろう。

加速中の安定感もいい。これは4WDのお蔭だ。2日間の取材中はほとんど雨模様で、走りはウエット路面だらけ。しかし、加速時などでリアが滑り出しそうになっても、PTMの制御によってフロントタイヤに駆動力が伝わり、安定性を損なわないで鋭い走りを持続できる。もちろん、ウエット路面の高速道路における安定感も同様である。これは、かなり安心感が高い。

4WDになっている分だけフロント部が重くなっていることも、耐ハイロプレーン性能には有利だ。また、ウエット路面になるとハンドルが軽くなるし、水が深くなると保舵力がさらに軽くなるので、そろそろ危ないという感触がちゃんとつかめるのがいい。しかし、フロントにエンジンがある335iクーペほどの安心感はなかった。

試乗車には「スポーツクロノパッケージターボ(オプション)」が装着されていたので、センターコンソールにあるSPORTスイッチを押してアクセルペダルを床まで踏み込むと、10秒間だけオーバーブースト状態となる。

通常モードでの最大トルクを60Nmも上回る680Nm、それを2100rpmから4000rpmで発揮できる。もちろん限られたドライ路面のコンディションにおいてでのみ試したが、周囲の景色が飛んでいく様子とシートバックに感じるGで、680Nmをはっきりと感じることができた。

ATは、PSMを解除するかSPORTスイッチを押すとレブリミットでも自動シフトアップしない。だがアクセルペダルをキックダウンスイッチまで踏み込むとシフトアップするなど、そのプログラムは335iクーペに負けないほど凝っている。

静止状態から100km/hまでの加速タイムが、6速MTの3.9秒より速い3.7秒という5速ATの素速さは本物であり、クラッチワークやシフトのテクニックを必要としないから、誰もが体験できる。911ターボはATでも速く、スポーツドライビングが楽しめるのだ。MT仕様は、もはや趣味の世界に入ってしまったのだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2006年11月号より)



BMW 335i クーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4590×1780×1380mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1620kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:306ps/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300~5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:701万円(2006年)

ポルシェ 911ターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4450×1852×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1620kg
●エンジン:対6DOHCツインターボ
●排気量:3600cc
●最高出力:480ps/6000rpm
●最大トルク:620Nm/1950~5000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:1879万円(2006年)

[ アルバム : BMW 335iクーペとポルシェ911ターボ はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

【中古車選びお悩み相談】認定中古車って何?メリットとデメリットは?
【中古車選びお悩み相談】認定中古車って何?メリットとデメリットは?
グーネット
アレイシ・エスパルガロ、MotoGP現役引退を地元カタルーニャGPで発表。スズキやアプリリアで活躍、昨年は2勝
アレイシ・エスパルガロ、MotoGP現役引退を地元カタルーニャGPで発表。スズキやアプリリアで活躍、昨年は2勝
AUTOSPORT web
ヒョンデ「アイオニック5N」×「攻殻機動隊」 草薙素子が新型EVで疾走!【動画あり】
ヒョンデ「アイオニック5N」×「攻殻機動隊」 草薙素子が新型EVで疾走!【動画あり】
グーネット
SUBARUサンバーを快走仕様!「誰もやらないスピーカー修復」3
SUBARUサンバーを快走仕様!「誰もやらないスピーカー修復」3
グーネット
フェラーリF1の精密なレプリカステアリングが発売。コントローラーとしてゲームプレイにも使用可能
フェラーリF1の精密なレプリカステアリングが発売。コントローラーとしてゲームプレイにも使用可能
AUTOSPORT web
母国初優勝目指すルクレール、FP2最速。ベテランふたりが続く……角田裕毅はソフトタイヤ使わず11番手|F1モナコGP
母国初優勝目指すルクレール、FP2最速。ベテランふたりが続く……角田裕毅はソフトタイヤ使わず11番手|F1モナコGP
motorsport.com 日本版
[故障車]の紙貼っとけば違反にならない!? ウソかマコトか!? [駐車や停車]にまつわる噂話の真相を探る
[故障車]の紙貼っとけば違反にならない!? ウソかマコトか!? [駐車や停車]にまつわる噂話の真相を探る
ベストカーWeb
F1モナコGP FP2速報|ルクレールが母国グランプリ初日最速。ハミルトン&アロンソのベテラン勢が続く……角田裕毅は11番手
F1モナコGP FP2速報|ルクレールが母国グランプリ初日最速。ハミルトン&アロンソのベテラン勢が続く……角田裕毅は11番手
motorsport.com 日本版
読者の値引き実例 私もX氏
読者の値引き実例 私もX氏
グーネット
マツダ「スクラムトラック」一部商品改良 電波式キーレスエントリーなど快適装備を充実
マツダ「スクラムトラック」一部商品改良 電波式キーレスエントリーなど快適装備を充実
グーネット
アレイシ・エスパルガロ、カタルーニャGP前に特別記者会見を開催へ。来年はテストライダー就任や引退の噂も/MotoGP
アレイシ・エスパルガロ、カタルーニャGP前に特別記者会見を開催へ。来年はテストライダー就任や引退の噂も/MotoGP
AUTOSPORT web
ついに新型が先行公開! コンパクトミニバンの「鉄板」フリード完全包囲網
ついに新型が先行公開! コンパクトミニバンの「鉄板」フリード完全包囲網
ベストカーWeb
なんちゃってセレブが「いばらき×立命館DAY 2024」へ! 交通安全応援プロジェクト「OKISHU」の活動を様子をお見せするわよ
なんちゃってセレブが「いばらき×立命館DAY 2024」へ! 交通安全応援プロジェクト「OKISHU」の活動を様子をお見せするわよ
Auto Messe Web
日産「クリッパートラック」発売 NT100クリッパーが一部仕様と車名を変更
日産「クリッパートラック」発売 NT100クリッパーが一部仕様と車名を変更
グーネット
スズキ「ハスラー タフワイルド」を新設定!「ハスラー」も一部仕様変更を実施
スズキ「ハスラー タフワイルド」を新設定!「ハスラー」も一部仕様変更を実施
グーネット
「東京アウトドアショー2024」まで1か月!アウトドアの“今”が集まるイベントの最新情報
「東京アウトドアショー2024」まで1か月!アウトドアの“今”が集まるイベントの最新情報
グーネット
これが引退決めたライダー!? エスパルガロ、コースレコード更新最速タイム|MotoGPカタルニアGPプラクティス
これが引退決めたライダー!? エスパルガロ、コースレコード更新最速タイム|MotoGPカタルニアGPプラクティス
motorsport.com 日本版
フェルシュホーがキャリア初ポールポジションを獲得。宮田莉朋は満足にアタックできず……あわや大クラッシュのシーンも|FIA F2モナコ予選
フェルシュホーがキャリア初ポールポジションを獲得。宮田莉朋は満足にアタックできず……あわや大クラッシュのシーンも|FIA F2モナコ予選
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

2件
  • 永遠に911ターボの背を追いかけるGT-Rって哀れ。
  • こもだ氏にとって3リッターの排気量は大排気量ではないのか…
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1620.04118.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

268.013900.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1620.04118.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

268.013900.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村